遺言・相続・遺産分割

  1. 相続したあと、税務調査はくるの?
  2. 税務調査の対象となりやすい相続の内容は?

オールワン法律会計事務所の弁護士・税理士が相続税の税務調査について法務・税務の両面から分かりやすく解説します。

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税務調査の対象となりやすい相続税の申告内容

相続税の実地調査は、申告書を提出後、1年後から2年後にかけて着手されることが多いといわれています。それでは、実地調査の対象に選定されやすい申告内容とはどのようなものでしょうか。
国税出身の税理士さんから聞いた具体的な例を紹介したいと思います。

被相続人の生前の収入に比べて申告財産額(特に金融資産)が少ない

税務署は被相続人の生前の収入を把握しているため、その収入から推算できる相続財産額より申告財産額が少ないと調査対象に選定されやすくなるようです。

相続人の収入に比べて相続人名義の預貯金残高や有価証券残高が多い

相続人の名義預金(名義は相続人だが、実体は被相続人の預金)が疑われるケースです。

被相続人と相続人名義の預貯金の入出金額が一致する

相続人の名義預金や相続財産の隠匿が疑われるケースです。そのほかにも、
被相続人が過去に相続した財産が、今回の申告に反映されていない
被相続人に生前不動産所得があるのに申告書に不動産の記載がない
不動産の評価に鑑定評価が用いられている
海外送金調書が提出されているのに、海外資産の申告がなされていない
確定申告書に添付された「財産債務調書」と申告書の記載に不一致がある
被相続人が大口資産家である
以上のようなケースでは税務署による相続税の実地調査が実施される可能性が高くなります。さらには、申告書にどのような書類を添付するかによっても実地調査に選定されるか否かに大きな違いがでてきます。

事前通知のない税務調査

事前通知がなされない税務調査とは

税務調査は事前通知がなされることが原則ですが、事前通知をすると税務調査の目的が達成できない場合、事前通知を行わないで調査が実施されることがあります。

事前通知がなされない税務調査の類型

国税通則法第7章の7(国税の調査)関係通達の制定について(法令解釈通達)第4章第2節5-9「違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれ」がある場合として、次のような事例が掲載されています。

(1)
事前通知をすることにより、納税義務者において、法第128条第2号又は同条第3号(※)に掲げる行為を行うことを助長することが合理的に推認される場合。

(2)
事前通知をすることにより、納税義務者において、調査の実施を困難にすることを意図し逃亡することが合理的に推認される場合。

(3)
事前通知をすることにより、納税義務者において、調査に必要な帳簿書類その他の物件を破棄し、移動し、隠匿し、改ざんし、変造し、又は偽造することが合理的に推認される場合。

(4)
事前通知をすることにより、納税義務者において、過去の違法又は不当な行為の発見を困難にする目的で、質問検査等を行う時点において適正な記帳又は書類の適正な記載と保存を行っている状態を作出することが合理的に推認される場合。

(5)
事前通知をすることにより、納税義務者において、その使用人その他の従業者若しくは取引先又はその他の第三者に対し、上記(1)から(4)までに掲げる行為を行うよう、又は調査への協力を控えるよう要請する(強要し、買収し又は共謀することを含む。)ことが合理的に推認される場合。


国税通則法128条
次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
1 第23条第3項(更正の請求)に規定する更正請求書に偽りの記載をして税務署長に提出した者
2 第74条の2、第74条の3(第2項を除く。)若しくは第74条の4から第74条の6まで(当該職員の質問検査権)の規定による当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは偽りの答弁をし、又はこれらの規定による検査、採取、移動の禁止若しくは封かんの実施を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
3 第74条の2から第74条の6までの規定による物件の提示又は提出の要求に対し、正当な理由がなくこれに応じず、又は偽りの記載若しくは記録をした帳簿書類その他の物件(その写しを含む。)を提示し、若しくは提出した者

上記事例への該当性判断については、税務職員の主観的判断ではなく、事前通知を行わなかったことの適法性が適切に判断されたといい得るよう、その情報について課税庁としての知見、判断能力をもって客観的に評価した場合に、それらの事情があると合理的に推認できるかどうかを客観的に判断すべきであるといわれている。

相続税実地調査における調査官の質問の意図

実地調査における調査官の質問の意図

調査官による実地調査は、大きく分けて①聴取調査、②現況調査、③現地調査があります。

このうち、②現況調査とは、実地調査の際に被相続人の預金通帳の保管場所や金庫等の現況を確かめる調査です。
③現地調査とは、相続財産の不動産について利用状況を実際に現地で確認する調査です。

そして、①聴取調査とは、調査官が直接相続人(納税義務者)から被相続人の生前の生活実態等を聞き取る調査です。
この聴取調査において調査官の発する典型的な質問と、その意図は次のとおりです。

被相続人の職業・職歴に関する質問

被相続人の職業から推定できる所得と、その所得に見合った申告がなされているかの確認です。

被相続人の趣味に関する質問

趣味に関する財産(ゴルフ会員権や書画骨董など)が申告されているかの確認です。

被相続人が過去に不動産を売却したことの有無に関する質問

売却代金に関する譲渡所得税の申告の有無や、相続開始時の売却代金の現状の確認です。

被相続人の転居の有無に関する質問

過去の住所地周辺での所有不動産の有無、金融機関の口座の有無の確認です。

被相続人の家族の状況に関する質問

名義預金の有無及びその帰属の確認です。

配偶者の預貯金に関する質問

専業主婦の配偶者が多額の預貯金を有する場合は名義預金の可能性が高いため出捐者等の確認です。

相続開始前後の出金の有無と金額に関する質問

医療費や葬儀費用に充てるため相続開始前後に相続人が被相続人の預貯金を引出すことがあるため、その残額についての申告状況の確認です。

毎月の家計費に関する質問

被相続人の口座からの出金と比べて毎月の家計費が相当程度低い場合、その差額部分が他の家族に流れていることがないかの確認です。

国税局査察部による強制調査

強制調査とは

強制調査とは、国税通則法第11章「犯則事件の調査及び処分」に基づき、国税犯則取締法に基づいて国税局査察部が行う、不正な手段を使って故意に税を免れた犯則嫌疑者の責任を追及し、正当な税を課すほか、刑罰を科すことで適正・公平な課税の実現と申告納税制度を維持するための税務調査のことです。
すなわち、大口・悪質な脱税者を対象に、犯則事件の調査を目的として、国税局の国税査察官によって行われる強制調査のことです。

一方で任意調査とは、一般の納税者を対象に、申告漏れの調査を目的として、税務署職員(大口案件・複雑案件については、国税庁資料調査課が担当することもあります)よって行われる調査のことです。
1億円前後が目安となるようです。

相続税の調査実績

相続税の実地調査は、平成 28 年に発生した相続を中心に、国税局及び税務署で収集した資料情報等から申告額が過少であると想定される事案や、申告義務があるにもかかわらず無申告と想定される事案等について実施しました。
実地調査の件数は 12,463 件(平成 29 事務年度 12,576 件)、このうち申告漏れ等の非違があった件数は 10,684 件(平成 29 事務年度 10,521 件)で、非違割合は 85.7%(平成 29 事務年度 83.7%)となっています。

(令和元年12月 国税庁 「平 成 30 事 務 年 度 における相 続 税 の調 査 等 の状 況」より)

項目 平成29事務年度 平成30事務年度
実地調査件数 12,576件 12,463件
申告漏れ等の非違件数 10,521件 10,684件
非違割合(②/①) 83.7% 85.7%
重加算税賦課件数 1,504件 1,762件
重加算税賦課割合(④/②) 14.3% 16.5%
申告漏れ課税価格 3,523億円 3,538億円
⑥のうち重加算税賦課対象 576億円 589億円
追徴税額 本税 676億円 610億円
加算税 107億円 98億円
合計 783億円 708億円
調査1件あたり 申告漏れ課税価格 2,801万円 2,838万円
追徴税額 623万円 568万円

 

使途不明出金に対する税務調査

被相続人の口座から使途不明の出金がある場合

相続開始後、相続人の通帳を調べてみると、口座から度々ラウンドナンバー(丸い数字=100万円、200万円といった切りのいい数字のこと)での出金履歴がある。

一方、銀行預金は被相続人が自分で管理していたので、相続人はそのお金が何に使われたのか、どこになるのか分からない・・・

この被相続人の口座から出金された使途不明金について、出金回数が多数、使途不明金が多額にのぼると税務調査でその資金使途について税務職員から厳しい追及を受けることがあります。

また、被相続人と同居していた子、同居していなかった子がいる場合、使途不明金を同居の子が消費・隠匿したのではないかと相続人間で疑心暗鬼が生じ、遺産分割の際にトラブルの原因になったりします。

税務調査で使途不明金はどのような扱いを受けるのか

税務調査では、不明金の使途を相続人が明らかにできない場合、当該金員が相続時に存在していたことを前提とした修正申告の慫慂(しょうよう=促すこと)を税務署員から受けることがあります。

それでは、こうした使途不明金が存在する場合、相続人は修正申告に応じる必要があるのでしょうか?

仮に相続人が修正申告に応じない場合、それでも使途不明金が相続時に存在したと税務署が主張するのであれば、税務署は納税額の修正や決定を行う更正処分を行います。

更正処分が行われた場合、それに不服がある相続人は、国政不服審判所への審査請求、審査請求の結果そこで出された裁決に不服がある場合は裁判所への提訴を行うことができます。

訴訟となった場合、使途不明金が相続時に存在することについて立証責任を負うのは国です。

この点、相続開始3年前に存在した被相続人の現金について、「収支計算を正確に行えば、相続開始時において残るはずのもの」で、相続開始までに「他の資産に変化したと考えるのが自然である」と国が主張した裁判で、裁判所は、国の主張・立証は不十分として国の主張を退けた裁判例があります。
(名古屋高判平成15年12月25日)

したがって、実際に使途不明金について修正申告の慫慂がなされた場合は、どのような理由に基づいて慫慂がなされたのかを個別に判断する必要があります。

なお、修正申告は、納税義務者が自主的に納税額を変更するため、その後に不服申し立てを行うことはできません。

 

名義預金

名義預金とは

相続税の調査においては、

被相続人の過去の収入から推定される金額と比べて金融資産の申告額が少ない場合、
被相続人より家族名義の預金残高が多い場合、
被相続人と相続人の預貯金の入出金額が合致している場合、

などのケースでは金融資産に対する調査は徹底的に行われるといわれています。

特に名義預金(口座の名義人と出捐者が異なる預貯金のこと 例)父が子の名義でお金を預けるケース)は要注意です。

名義預金は被相続人が意図的に作ったもののほか、ペイオフ対策として家族名義にしていた預金などが名義預金として認定されることがあります。

ペイオフとは、預金保険制度に加盟している金融機関が破綻した場合の、預金者保護の方法のひとつである預金者への保険金の直接支払のことです。

2002年4月、ペイオフによる保護の対象が1金融機関につき1預金者あたり元本1,000万円までとその利息の預金債権となりました。

ペイオフが1金融機関について原則1,000万円に限定されたため、これ以降、1,000万円を超える預金を家族名義に変更した上で自らが管理する人が増えました。

贈与税の時効

国税の時効について国税通則法70条1項1号は、更正又は決定については、その更正又は決定に係る国税の法定申告期限から5年を経過した日以後においてはすることができない、と規定しています。

国税通則法24条(更正)
「条税務署長は、納税申告書の提出があつた場合において、その納税申告書に記載された課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従つていなかつたとき、その他当該課税標準等又は税額等がその調査したところと異なるときは、その調査により、当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正する。」

国税通則法25条(決定)
「税務署長は、納税申告書を提出する義務があると認められる者が当該申告書を提出しなかつた場合には、その調査により、当該申告書に係る課税標準等及び税額等を決定する。ただし、決定により納付すべき税額及び還付金の額に相当する税額が生じないときは、この限りでない。」

ただし、贈与税については、相続税法36条1項において
「税務署長は、贈与税について、国税通則法第70条の規定にかかわらず、次の各号に掲げる更正若しくは決定又は賦課決定を当該各号に定める期限又は日から6年を経過する日まで、することができる。」

と規定され、さらに同条4項1号において、
「偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れ、若しくはその全部若しくは一部の税額の還付を受けた贈与税」については、贈与税の申告期限から7年、贈与税に係る更正決定を行うことができるとされています。

相続税法28条1項によれば、贈与税の申告書の提出期限は、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までとされているため、贈与を受けた翌年の3月15日から6年又は7年(偽りその他の不正の行為があった場合)が経過すると、贈与税は時効となります。

名義預金の時効

贈与税が時効となるのは、その前提として贈与者と受贈者の間に贈与契約が成立しいていることが前提となります。
いわゆる名義預金(贈与者が、受贈者名義の口座で自らが管理を継続する預金)については、税務署から贈与契約が成立していないと判断されることが大半です。

したがって名義預金については、そもそも贈与が成立していないため、贈与税の時効とは関係がありません。
(何時までたっても贈与者の預金のままです)

名義預金と生前贈与

名義預金については、当事者間で贈与が成立しているといった主張がなされることが多いようです。

相続税法上、贈与については特段の規定が設けられていないため、贈与の成否については民法における贈与の規定を参照することになります。

民法549条(贈与)
贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

したがって、民法上、贈与契約が成立するためには、贈与者と受贈者の意思の合致が必要となります。

しかし、意思の合致といっても、意思それ自体は外から見てわかりません。
そこで贈与がなされたという時期にどのようなことが贈与者、受贈者間で行われていたのか、具体的な事情を検討することになります。

預金にいては、口座開設時の印鑑やその保管場所、利子の帰属、通帳類の保管場所、預金の引き出し等を誰が行っていたのか、贈与契約書の作成の有無、贈与額が暦年で110万円を超える場合の贈与税の申告状況等をもとに、贈与契約成立の有無が判断されます。

相続税の実地調査においては、贈与税の申告がない場合、贈与契約の成立を認めない調査官が多いようです。

税務署による事前調査

なお、税務調査では、最低でも家族名義等を含めた過去3年分の通帳の復元及び家族名義等を含めた3年の一定日における残高証明書等を入手した上で実地調査が行われていると考えられます。

生命保険

相続と生命保険金

契約者・被保険者が被相続人、受取人が相続人となる生命保険契約において保険事故が発生すると、受取人は固有の財産としての生命保険金を受領します。

上記保険金は、みなし相続財産として相続税の課税対象になる一方、一定の範囲で非課税財産として取り扱われることになります(相続税法12条)。

一方で、契約者が被相続人、被保険者が被相続人以外の生命保険契約の場合、相続が発生しても保険金が支払われないため、相続人が生命保険契約の存在に気付かず、生命保険契約が相続財産から漏れてしまうことがあります。

(この場合、生命保険契約の解約返戻金相当額が相続税の課税対象となります。)

支払調書

生命保険会社は、生命保険金等を支払った場合、支払事由ごとに決めらられた法定調書(支払調書及び合計票)を提出することが義務付けられています。
したがって、税務署は上記支払調書によって生命保険契約の存在を把握することができます。

(生命保険契約等の一時金の支払調書)
生命保険契約等から一時期の支払があったときに、支払った日の属する年の翌年1月31日までに、納税地の所轄税務署長に提出されます。
支払調書の提出が求められるのは、1回の支払金額が100万円を超えるものです。

(生命保険契約等の年金の支払調書)
生命保険契約等から年金の支払があったときに、支払った日の属する年の翌年1月31日までに、納税地の所轄税務署長に提出されます。
支払調書の提出が求められるのは、同一人に対する年中年金の支出金額が20万円を超えるものです。

(生命保険金・共済金受取人別支払調書)
その月中に生命保険金や共済金を支払ったときに、支払った日の属する月の翌月15日までに、納税地の所轄税務署長に提出されます。
支払調書の提出が求められるのは、保険金額が100万円を超えるものです。

法定調書

2015年(平成27年)の改正以前は、保険契約者が死亡し、生命保険契約が相続人等に引き継がれても、保険金の支払事由が生じていないため調書が提出されず、上記生命保険契約者の変更を税務署が把握することは困難でした。

そこで法改正が行われ、生命保険契約又は損害保険契約の契約者が死亡したことに伴い、これらの契約の契約者変更が行われた場合は、その変更の効力が生じた日の属する年の翌年1月31日までに、一定の事項を記載した調書を、その調書を作成した営業所との所在地の税務署長に提出しなければならないとされました。
この法改正によって、保険契約者が死亡し、当該保険契約を相続人が引き継いだ場合、こうした事実を税務署が把握できることになりました。

相続には、さまざまな種類があり、手続を行う期限があります。期日が過ぎて最適な相続方法の手続をとることができなかったということがないように、相続が始まったら遺された相続財産をできるだけ早く調査し、間違わない相続の種類を選びましょう。被相続人が遺した正確な相続財産が分からない場合や、自分にとって最適な相続がどれか分からないなど、お悩みであれば、弁護士法人オールワン法律会計事務所の弁護士へご相談ください。

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