遺言・相続・遺産分割

  1. 遺言にはどのような種類がありますか?
  2. なぜ遺言を作成するのですか?
  3. 自分に適した遺言はどうやって探すのですか?

最近何かと話題になる遺言について、その種類や作成方法、遺言作成のメリットをオールワン法律会計事務所の弁護士が分かりやすく解説します。

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遺言とは

人が生きている時には、その所有する財産を他人に売ったり、場合によってはタダであげたりすることができます。
そうであれば、元気な時に自分が亡くなった後、その所有する財産の処分等について意思を表示しておけば、その人が死んだ後もその意思表示は尊重されることになります。

遺言とは、人が死んだ後、相続財産の処分などについて法律上の効果を生じさせる目的で作成しておく文書のことです。

遺言に相続財産の処分(誰に何を残すのか等)などの遺言者の意思表示が書かれていると、その意思表示は最大限尊重されることになります。

一方、遺言にこのような効力が生じるのは、遺言者が亡くなった後のため、その時になって本当に遺言者に意思を表示する気持ちがあったのか、確認することはできません。

そこで、遺言書の作成には厳格なルールが法律で定められています。
こうしたルールに従わないで書かれた遺言書は、場合によっては無効になることもあります。

遺言を作成するメリット

相続人間の遺産分割協議を省略することができる

遺言書には、遺言作成者が誰に何を遺すのか、いわば遺産分割の結論が記載されています。
しっかりした遺言書を書いておけば、相続人が改めて遺産分割協議を行う必要がありません。

また、「相続」が「争族」になるのは相続人間の協議で遺産分割を行うからです。遺言書を作成しておけば「争族」を防ぐこともできます。

法定相続分と異なる形で相続人に財産を残すことができる

遺言書がない場合、相続人は協議で遺産分割を行いますが、その目安は法定相続分となります。
夫の相続財産の大半が自宅という場合、妻が自宅を相続できるとは限りません。
親と同居していた子が自宅を相続できるかについても同様です。

そうした場合、遺言書を作成しておけば自宅を必要としている家族に残せる可能性があります。

確かに親の財産について子には遺留分という権利が認められていますが、遺留分は法定相続分の半分です。
この遺留分にさえ配慮しておけば、残りの財産を誰に残すのかは遺言作成者が決めることができます。

相続財産を探すのが容易になる

被相続人が生前、相続人と別に暮らしていると、相続開始後、相続人が相続財産の所在やその内容を把握するために大変な手間と時間が必要となります。

相続税の申告が必要な場合、相続財産探しに時間を取られるとスムーズな相続税の申告に支障が出る可能性があります。
また、遺産分割がいったん終わった後に新たに相続財産が発見されると、改めて遺産分割協議が必要になったりします。

そうしたときに相続財産について書かれた遺言書が残されていると、相続人が相続財産を探し出す手間や時間を大幅に減らすことができます。

法定相続人以外の人に財産を残すことができる

遺言書がない場合、被相続人の財産を相続できるのは法定相続人に限られます。
一方で、遺言書を作成しておけば、法定相続人以外の人に相続財産を遺すことができます。
(法定相続人以外に財産を相続させることを「遺贈(いぞう)」といいます)

遺言書を作っておけば、かわいい孫、介護で世話になった息子の嫁に財産を遺すことができます。

遺言作成者の「思い」を遺すことができます

財産が残されても亡くなった人の「思い」が残されていない、分からないと相続人はどのように財産を分けたらいいのか「迷い」が生じます。
いったん遺産分割で「迷い」が生じると、その「迷い」はいつの間にか「欲」に代わります。
「相続」が「争族」に代わる瞬間です。

いっぽう、遺言書には、なぜこうした遺産分割をすることにしたのか、家族に今後どうあって欲しいのかといった遺言作成者の「思い」を書くことができます。
この遺言作成者が遺言に付け加える言葉のことを「付言(ふげん)」といいます。
こうした遺言作成者の「思い」を遺言書に書くことで円満な相続を実現することができます。

「付言」の一例

遺言者である私山田太郎は、妻花子、長男一郎、次男次郎の理解もあり平穏に暮らしてきました。しかし、高齢になり、私亡きあとの相続を真剣に考えた結果、家族の今後を考えて遺言を残すことにしました。
遺言の内容は、一郎に、次郎より多くの相続財産を相続させるものとなっています。
これは、一郎が、嫁の京子さんと一緒に、お母さんと同居して、山田家を守っていくには、相応の出費もあるため、そのことを考えてのことです。私は、一郎と同じように次郎を大切に思っています。どうか、お父さんの心情を理解して、これからも、お母さんとお兄さんを助けてあげて下さい。そして、今後も家族で助け合って、皆が充実した人生を送ることを私は心から願っています。

 

自筆証書遺言の作成

自筆証書遺言の方式

自筆証書遺言は、相続財産の全部又は一部の目録を除いて、遺言全文、日付、氏名を自書し、押印することで作成します(民法968条)

遺言書文例

第1条遺言者は、遺言者の有する次の財産を妻A(昭和〇年〇月〇日生)【※1】に相続させる【※2】。

1 不動産【※3】

①土地【※4】
所  在  〇〇市〇〇町〇丁目
地  番  〇番〇号
地  目  宅地
地  積  〇〇.〇〇㎡

②建物【※5】
所  在  〇〇市〇〇町〇丁目〇番地〇
家屋番号  〇〇番
種  類  居宅
構  造  木造かわらぶき2階建
床 面 積  1階 ○○.〇〇㎡
2階 〇〇.〇〇㎡

2 預貯金

①預金債権【※6】
〇〇銀行〇〇支店扱い 普通預金
口座番号 〇〇〇〇〇〇

②貯金債権【※7】
ア 通常貯金
記号 〇〇〇〇
番号 〇〇〇〇
イ 通常貯蓄貯金
記号 〇〇〇〇
番号 〇〇〇〇

第2条

遺言者は、前記 妻Aが遺言者と同時に又は遺言者より以前に死亡したときは、前条により前記 妻Aに相続させるとした財産は、全て遺言者の長男B(昭和〇〇年〇月〇日)に相続させる【※8】。

第3条

遺言者は、遺言者の有する次の財産を前記 長男Bに相続させる。

1 区分建物【※9】
(一棟の建物の表示)
所   在  〇〇市〇〇町〇丁目〇番地○○
建物の名称  〇〇
(専有部分の建物の表示)
家屋番号  〇〇番〇
建物の名称  〇〇号
種   類  居宅
構   造  鉄骨鉄筋コンクリート造1階建
床面積  〇階部分 〇〇.〇〇㎡

令和〇年〇月〇日【※10】
遺言者 山 田 太 郎 ○印

(付言事項)

【※1】
相続させようとする者や受遺者の表示については、氏名、遺言者との続柄、生年月日、住所等で特定します。
推定相続人ついては通常、住所の記載までは必要なく、血縁の薄い受遺者等について住所まで記載します。

【※2】
民法改正により2019年1月13日以降、財産目録は自書が不要となりました。
財産目録については、パソコンで作成したものや、不動産の登記事項証明書、預貯金の通帳のコピーを添付することが認められます。
なお、パソコン等で作成した財産目録には、毎ページごとに(両面であれば両面に)遺言者の署名と押印が必要となります。

【※3】
「相続させる」遺言については、当該遺産を当該相続人に単独で相続させる遺産分割の方法が指定されたものと解すべきで、何らの行為も要せず、被相続人の死亡の時に当該遺産が遺産分割の協議、審判を経ることなく当該相続人に相続により承継されます(最判平成3年4月19日)。
したがって、不動産の場合、当該相続人が単独で相続の登記申請をすることができます。
一方、「遺贈する」遺言については、一般承継である「相続させる」とは異なり、特定承継であるとされています。
したがって、不動産の場合、登記義務者である他の相続人と共同して登記申請をする必要があります。

【※4】
不動産(土地)の特定は、所在、地番、地目、地積の記載により行います。

【※5】
不動産(建物)の特定は、所在、家屋番号、種類、構造、床面積の記載により行います。

【※6】
預金債権の特定は、銀行名、支店名、口座の種類、口座番号により行います。

【※7】
貯金債権の特定は、通帳貯金、通常貯蓄貯金ごとに記号、番号により行います。

【※8】
遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは効力が生じません(民法994条1項)。
相続させる遺言についても、相続開始以前に相続させようとする者が死亡したときは当該相続させようとする者に関する部分の遺言は効力を失います。
そこで年の近い夫婦で遺言をする場合など、相続させようとする者が遺言者と同時又は先に死亡する事態に備えて予備的文言を付け加えます。

【※9】
上記の事例は敷地権の登記がない区分建物の文例です。
この場合、(一棟の建物の表示)として所在、建物の名称、(専有部分の建物の表示)として家屋番号、建物の名称、種類、構造、床面積により特定します。
なお、敷地権の登記がある場合、上記事項に加えて、(敷地権の目的たる土地の表示)として土地の符号、所在及び地番、地目、地積、(敷地の表示)として土地の符号、敷地権の種類、敷地権の割合により特定します。

【※10】
日付の自書が要求されるのは、①遺言作成時の遺言者の遺言能力の有無を判断し、②内容の抵触する複数の遺言の前後を確定するためです。
なお、前の遺言と後の遺言の内容が抵触する場合、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます(民法1031条)。

自筆証書遺言作成のワンポイントアドバイス

名前以外で受遺者を特定できるようにする

仮に遺言に「〇〇は山田花子に相続させる」と書いても、相続人以外の同姓同名の山田花子さんがいると受遺者を特定することができなくなります。
そこで受遺者を記載するときは、名前のほかに生年月日は遺言作成者との関係(配偶者、長男など)など、受遺者を特定できる情報を合わせて書くようにします。

特定遺贈を基本に遺言を作成する

遺言の書き方には「相続財産の2分の1を長男山田太郎に相続させる」と書く方法(相続分の指定、又は包括遺贈といいます)と、「〇〇の不動産を長男山田太郎に相続させる」と書く方法(特定遺贈といいます)があります。
この点、相続分の指定や包括遺贈といった書き方では改めて相続人や受遺者の遺産分割協議が必要となります。
そこで遺言では、原則として特別遺贈によって相続財産を分割するようにしておきます。

金融資産は相続分の指定又は包括遺贈で遺言を作成する

預貯金債権等の金融資産については、将来発生する相続の時点の残高が分かりません。
一方で預貯金債権は分割が容易であるといった特徴があります。
そこで預貯金債権等については、「〇〇銀行△△支店普通預金口座番号・・・・にかかる預金債権については、長男山田太郎及び次男山田次郎に各2分の1を相続させる」というように、相続分の指定又は包括遺贈によって分割するようにします。

葬儀費用や債務の負担者を指定しておく

相続債務は、債権者との関係では相続人が法定相続分で負担することになります。
しかし、銀行ローンが残る収益物件を特定の相続人に相続させる場合、収益物件は特定の相続人、そのローンは相続人全員で負担では全ての相続人の納得を得ることは難しくなります。
そこで、収益物件を相続させる相続人には、ワンセットで銀行ローンを相続するような遺言を書いておくことで円満な相続を実現できます。

遺言執行者を指定する

遺言執行者とは、遺言作成者に代わり、相続人・受遺者全員の代表の立場で相続手続を執行できる者のことです。
遺言執行者の指定がない場合、相続人の一部が相続手続に非協力的であったり、外国に居住していたりすると相続手続が滞ることがあります。
遺言執行者の指定があると相続手続をスムーズに行うことができます。

なお、遺言執行者になるには特定の資格は不要です。
弁護士以外でも相続人や受遺者の一人を遺言執行者に指定することができます。

補充遺言を作成する

遺言により相続財産を相続又は遺贈することにした人が遺言作成者より先に亡くなることがあります。
相続では、子が親より先に亡くなると、子の子(孫)が子に代わって相続財産を相続する「代襲相続」といった制度がありますが、遺言にはこの代襲相続がありません。
そこで相続人又は受遺者が遺言作成者より先に亡くなった場合に備えて補充遺言を忘れずに書いておくようにします。

具体的には「〇〇は妻の山田花子に相続させる。山田花子が遺言者と同時又は遺言者より前に亡くなった場合は、〇〇は長男山田太郎に相続させる。」といた補充文言を加えるようにします。

付言事項を活用する

遺言を作成する方は、法定相続分とは異なる基準の遺産分割を希望してる方が大半です。
遺言により法定相続分と異なる指定をすると、法定相続分より多くの財産を相続できる相続人がいる一方、法定相続分与より少ない財産しか相続できない相続人も出てきます。
この法定相続分より少ない相続できない相続人が、例えば自分は生前被相続人からずい分と援助を受けていたので相続財産が少なくてもよい、などと納得してくれればいいのですが、納得してくれないと「相続」が「争族」に発展したりします。

そこで遺言には、なぜそのような遺産分割の指定をすることにしたのかといった遺言作成の理由は、相続分が少なくなる相続人に対するメッセージを付言事項という形で加えるようにします。

遺留分に配慮した内容の遺言にする

遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に認められた最低限の相続財産を確保する権利のことです。
直系尊属だけが相続人の場合の遺留分は3分の1、それ以外は2分の1となります。
遺留分を有する相続人がいる場合、遺言では各相続人に少なくも遺留分を上回る財産を残すようにします。

遺言によって特定の相続人の遺留分が侵害されると、当該相続人から他の相続人に対して遺留分侵害額請求訴訟(民法改正前の「遺留分減殺請求訴訟」)が提起されるなど、まさに「相続」が「争族」となってしまうことがあるためです。
したがって、遺言を作成する際には相続人の遺留分に配慮するようにします。

固定資産税が非課税となっている不動産・未登記の建物に注意する

遺言を作成する際、保有する不動産の確認のため固定資産税の納付通知や、建物を建築した際の登記事項証明書を参考にすることがあります。
しかし、固定資産税非課税の不動産は固定資産税の納付通知には記載されません。
同様に未登記の建物は登記事項証明書に記載されません。

しかし未登記の建物や固定資産税がかからない不動産も相続財産となります。
そこで遺言を作成する際にはこれら不動産についても書き漏らしがないよう注意します。

遺言の作り直す場合は前の遺言を全て撤回する

民法1022条は、遺言の撤回について、「遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。」と規定しています。
また、民法1023条1項は、前の遺言と後の遺言との抵触した場合について、「前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。」と規定しています。

よく後の日付の遺言が、先の日付の遺言に優先するという人がいますが、正確には後の日付の遺言が優先するのは前の遺言と抵触する部分だけです。
しかし実際には、日付が異なる遺言を比べてみても、後の日付の遺言の内容が先の日付の遺言と抵触しているのか、抵触しているとしてどの部分が抵触しているのか、判然としないことが少なくありません。
そこで遺言を書き直す場合は、まず先の日付の遺言を全て撤回をした上で、新しい遺言を作成するようにします。

自筆証書遺言の保管制度

遺言保管所における自筆証書遺言の保管

従来、自筆証書遺言は作成者自身が自宅や銀行の貸金庫等で保管することになっていました。

しかし、自宅で自筆証書遺言を保管しようとすると、紛失、破損、さらには関係者による遺言の隠匿や破棄といった問題が生じることがあります。
他方、貸金庫に遺言を保管すると紛失等を防ぐことはできますが、相続開始時に相続人全員が貸金庫の開扉を請求することが必要となり、相続人間に紛争があると容易に遺言の内容を確認することができません。

さらには、封筒に封緘された自筆証書遺言の場合、相続人が勝手に遺言を開封することは許されず、検認手続が必要となります。
したがって封緘された遺言は、検認手続が終わるまで相続人がその内容を確認することができないといった問題がありました。

遺言書保管制度

2020年7月10日からスタートした遺言書保管制度では、遺言書保管所(法務局)で自筆証書遺言を保管することで、自筆証書遺言の保管に関する様々な問題が解決されることになりました。

手続の流れは次のとおりです。

1 自筆証書遺言を作成する。
2 遺言の保管を申請すると、遺言書保管所は遺言の原本と画像データを保管する。
3 保管を依頼したあとも遺言者は遺言を閲覧したり、保管を撤回できます。
4 相続開始後、相続人等は遺言が預けられているのか確認を申請できます。
5 遺言が預けられている場合、遺言書の内容の証明書を申請・取得できます。閲覧も可能です。
6 遺言書保管所で保管された自筆証書遺言については検認手続が不要となります。

遺言書保管所に置け得る手数料

申請・請求の種別 申請・請求者 手数料
遺言書保管の申請 遺言者 1件につき3900円
遺言書の閲覧請求(モニター) 遺言者・関係相続人等 1回につき1400円
遺言書の閲覧請求(原本) 遺言者・関係相続人等 1回につき1700円
遺言書情報証明書の交付請求 関係相続人等 1通につき1400円
遺言書保管事実証明書の交付請求 関係相続人等 1通につき800円
申請書等・撤回書等の閲覧請求 遺言者・関係相続人等 1回につき1700円

 

その他の相続に関する解説は

公正証書遺言の作成

メリット  正確な遺言を作成できる

公正証書遺言は、第三者で法務大臣が任命した公証人が作成します。

公証人とは、原則として、判事や検事などを長く務めた法律実務の経験豊かな者で、公募に応じた者の中から、法務大臣が任命することになっています(公証人法13条)。
法律の専門家である公証人が遺言作成に関与することで正確な遺言書が作成できます。

メリット  遺言書の紛失、隠匿、偽造、変造を防ぐことができる

公正証書遺言は、その原本を公証人役場で保管します。
そのため、遺言書を紛失したり、隠匿されたり、偽造、変造されることを防ぐことができます。

 メリット 家庭裁判所の検認手続が不要

公正証書遺言の場合、相続開始後の家庭裁判所の検認手続が不要となります(民法1004条2項)。
自筆証書遺言等では検認手続を経てから遺言が執行されるため、遺言執行に着手するまでに一定程度時間を要します。

他方、公正証書遺言は検認手続が不要で、遺言書の正本(公正証書遺言作成時に公証人から交付してもらえる)で遺言執行ができるためスムーズな遺言執行が期待できます。
(なお、2020年7月10日より施行される「法務局における遺言書の保管等に関する法律」によれば、遺言書保管官の外形審査を経て遺言書保管所で保管・管理する自筆証書遺言についても家庭裁判所の検認手続は不要となります。)

公正証書遺言の方式(民法969条)

  1. 証人2人が立ち会います。
  2. 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授します。
  3. 公証人が遺言者の口授を筆記し、遺言者・証人に読み聞かせ又は閲覧させます。
  4. 遺言者・証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名して押印します。ただし、遺言者が筆記できないときは、公証人がその事由を付記して署名に代えることができます。
  5. 公証人が、その証書が以上の方式に従って作成されたものであることを付記してこれに署名して押印します。

公正証書遺言の作成手続

公正証書遺言を作成するために公証人から準備するように指示される一般的な書類は次のものです。

  1. 遺言者の実印と印鑑登録証明書(本人確認のためです)
  2. 証人の住民票の写し
  3. 相続人の戸籍謄本、受遺者の住民票の写し
  4. 遺言執行者の住民票の写し
  5. 遺言の対象である財産に関する資料(不動産の全部事項証明書、預貯金通帳など)

準備する書類はケースによって異なるので、詳しくは作成を依頼する公証人、公証人役場に確認してください。

公正証書遺言の作成手数料

遺言の目的である財産の価額に対応する形で、その手数料が定められています。

目的の価額 手数料
100万円以下 5000円
100万円超200万円以下 7000円
200万円超500万円以下 1万1000円
500万円超1000万円以下 1万7000円
1000万円超3000万円以下 2万3000円
3000万円超5000万円以下 2万9000円
5000万円超1億円以下 4万3000円
1億円超3億円以下 4万3000円に超過額5000万円ごとに1万3000円を加算
3億円超10億円以下 9万5000円に超過額5000万円ごとに1万1000円を加算
10億円超 24万9000円に超過額5000万円ごとに8000円を加算

注意点

  1. 財産の相続又は遺贈を受ける人ごとにその財産の価額を算出して、その価額に対応する手数料額を求め、これらの手数料額を合算して、当該遺言書全体の手数料を算出します。
  2. 全体の財産が1億円以下のときは、算出された手数料額に、1万1000円が加算されます。
  3. 公証人が遺言者の自宅や入院先を訪問して公正証書を作成する場合、手数料が50%加算されるほか、公証人の日当、交通費が必要となります。

 

秘密証書遺言の作成

秘密証書遺言の方式(民法970条)

  1. 遺言者が、遺言書に署名して押印します。
  2. 遺言者が、遺言書を封書に封入し、遺言書に用いた印章を使って封印します。
  3. 遺言者が、公証人1人、証人2人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書であることと、住所、氏名を申述します。
  4. 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言書の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、押印します。

秘密証書遺言のメリット

 自書不要

秘密証書遺言の作成には特別な方式が求められていません。
遺言者の署名と押印があれば遺言自体は代書、パソコンでの作成したもので大丈夫です。

 遺言作成者の労力が少ない

遺言作成者が公証人及び証人の前で行うことが求められているのは、

  1. 当該遺言が自己の遺言であること、氏名及び住所を申し述べること、
  2. 公証人が作成した封紙に署名、押印すること、だけです。

公正証書遺言のように遺言の趣旨を全て公証人に口授したり(※1)、自筆証書遺言のように遺言全文を自書する必要がありません(※2)。

したがって、遺言の全内容を公証人に説明できない場合や、遺言全文を自書できない場合も秘密証書遺言であれば作成できる可能性があります。

※1
公証人によっては、遺言作成の際、予め作成した遺言書の下書きを読み上げ、遺言者には確認を求めるだけで公正証書遺言を作成してくれる場合もあります。

※2
民法の改正により、自筆証書遺言の財産目録は自書が不要となりました(民法968条2項)。

遺言書の検認手続

遺言書の検認手続

公正証書遺言及び遺言書保管制度を利用した自筆証書遺言以外のすべての遺言は、家庭裁判所で検認手続を受ける必要があります。
封緘された自筆証書遺言を相続人が勝手に開封してしまうと5万円以下の過料が課されることがあります。
また、遺言書によって被相続人名義の預貯金を引出したり、不動産の相続登記をする際には検認を受けたことを証明する検認済証明書を添付する必要があります。

検認手続の流れ

公正証書及び遺言書保管制度を利用した自筆証書遺言以外の遺言書を保管又は発見した人は、遺言者の死亡後、遅滞なく被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に検認を申請します。

申請の際には、被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本と、相続人の戸籍謄本を添付します。
また、手数料として遺言書1通について800円と郵券(郵便切手)を予納します。
郵券の金額は裁判所によって異なるため予め家庭裁判所に問い合わせる必要があります。

検認の申請を受けた家庭裁判所は、相続人に対して、遺言が存在することと検認の日時を連絡し、出席を希望する相続人は期日に出席するように促します。

検認期日では、裁判官が封緘された遺言書を開封し、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付・署名等について確認、記録します。
これらの手続は、その後の遺言書の偽造・変造を防止するためで、遺言書の有効・無効を判断するものではありません。

検認手続が終了すると裁判所書記官が作成する検認証明書が付いた遺言書が返却されます。
検認証明書には「この遺言書は令和〇年〇月〇日に検認されたことを証明する。」と記載され、遺言書にホッチキスで留められ割印が押されます。
検認証明書の手数料は1通につき150円です。

この検認証明書が遺言書に付されることによって、様々な相続手続が行えるようになります。

遺贈

遺贈とは、遺言者が遺言によってする財産の無償譲渡です。
遺贈によって財産を譲り受ける者を受遺者といいます。

法定相続人に対しては財産を「相続させる」ことになるため、遺贈によって財産を譲渡する相手は原則として法定相続人以外の者となります。

特定遺贈

特定遺贈とは、受遺者に与えられる目的物や財産的利益が特定されているものです。
例えば、甲にはA不動産を、Bには乙動産を、それぞれ遺贈するといった趣旨のものです。

遺言で特定遺贈がなされていると、遺言の効力発生(遺言者の死亡)と同時に受遺者がその財産を取得することになります。
特定遺贈において、A不動産の持分3分の2を甲に、持分3分の1を乙に遺贈するという内容の遺贈が行われた場合、A不動産にかかる甲と乙の関係は遺産共有ではなく、通常の共有(民法249条以下)となります。
したがって、共有関係を解消するには遺産分割協議ではなく、共有物分割手続(民法256条以下)に拠ることになります。

また場所を指定せずに不動産の一部が遺贈された場合(例 A土地100坪中、50坪を甲に遺贈する。)、A土地について、抽象的な分数的割合で遺贈したものではないことから、特定遺贈にあたるとされています。
ただし、場所の指定がないため、相続開始と同時に土地の所有権が甲に移転することはありません。
この場合、選択権を行使して土地を特定することによって所有権が甲に移転します。
選択権は一次的には相続人が有し、催告をしても選択しない場合は選択権が受遺者に移転します。
(東京高判昭和23年3月26日)

包括遺贈

包括遺贈とは、遺産の全部又は一定割合で指定された部分を受遺者に譲渡する遺贈のことです。

全部包括遺贈

遺産を全て特定の受遺者に遺贈する場合を全部包括遺贈といいます。
全部包括遺贈の場合は遺産分割協議を要せず、受遺者が全ての遺産を取得します。

割合的包括遺贈

割合的包括遺贈とは、A不動産の3分の2を甲に、3分の1を乙にそれぞれ遺贈するといったように、分数的割合をもって財産を遺贈する場合のことです。
こうした包括遺贈では、受遺者が全て相続人である場合、遺言の解釈として相続分の指定(民法902条)と解する余地があります。

包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有することになります(民法990条)。
したがって、遺産分割の規定が受遺者にも適用され、相続人は包括受遺者を含めて遺産分割協議を行う必要があります。

「相続させる」と「遺贈する」

遺言で、特定の財産を相続開始時に特定の相続人に取得させる場合、「相続させる」と書く場合と、「遺贈する」と書く場合があります。
「相続させる」も「遺贈する」も、特定の財産を特定の相続人に取得させる遺言作成者の意思表示であることは変わりませんが、効果に大きな違いがあります。

対象者

「相続させる」
法定相続人に対して財産を取得させる場合に限ります。
「遺贈する」
法定相続人以外に財産を取得させる場合に使います。

登記手続

「相続させる」
当該相続人が単独で不動産の所有権移転登記手続ができます。
「遺贈する」
受遺者は不動産の所有権移転登記手続を共同相続人と共同申請する必要があります(遺言執行者がいる場合は、遺言執行者との共同申請となります。)。

農地法3条の許可

「相続させる」
農地の取得について農地法3条の農業委員会又は知事の許可は不要です。
「遺贈する」
農地の取得について農地法3条の農業委員会又は知事の許可が必要です。

賃貸人の承諾

「相続させる」
借地権・借家権の相続につき、賃貸人の承諾は不要です。
「遺贈する」
賃貸人の承諾が必要となります。

第三者対抗要件の有無

「相続させる」
特段の事情がない限り被相続人の死亡時に直ちに遺産が当該相続人に承継され、第三者に対し、登記なく対抗できるとされています。
(最判平成14年6月10日)
「遺贈する」
不動産の遺贈では、物権変動を第三者に対抗するために登記が必要です。

放棄

「相続させる」
対象不動産の取得を望まない場合は相続放棄(民法915条)するしかありません。
「遺贈する」
対象不動産の取得を望まない場合は遺贈を放棄(民法986条1項)すれば足ります。
(包括遺贈の場合は、相続放棄をすることになります。)

代襲相続

「相続させる」
遺言者が当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り、その効果を生ずることはない」とされています。=否定
(最判平成23年2月22日)
「遺贈する」
代襲相続しません(民法994条1項)。

遺留分と遺言

遺留分とは

兄弟姉妹以外の相続人には遺留分が認められています(民法1042条)。
遺留分とは,一定の相続人のために,相続に際して法律上取得することが保障されている遺産の一定の割合のことをいいます。

仮に全財産を他の相続人に相続又は遺贈するとの遺言を作成しても、遺留分を侵害された相続人から遺留分侵害額の請求(民法1046条)が行われると、受贈者は遺留分進学額に相当する金銭を支払う必要があります。

遺留分の放棄

民法1049条1項は、「相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。」として、遺留分権者が家庭裁判所の許可を受けて相続開始前に遺留分を放棄できると規定しています。

遺留分権者からの遺留分放棄の申立があった場合、家庭裁判所が許可する基準は次のとおりといわれています。

〇放棄が本人の自由意思に基づくこと

親が強制した場合や、放棄をする本人が一方的に不利になる場合は認められません。

〇放棄の理由に合理性・必要性があること

特定の事業を特定の相続人が承継するためには、その他の相続人が遺留分を放棄する必要がある等、放棄の理由に合理性・必要性が必要です。

〇代償性があること

放棄をする本人に特別受益がある、放棄と引き換えに財産の生前贈与を受ける等の代償性が認められることが必要です。

【申立に必要な資料等】

遺留分放棄の申立には、

〇申立書
〇被相続人の戸籍謄本(全部事項証明書)
〇申立人の戸籍謄本(全部事項証明書)

が必要となります(裁判所の指示で追加資料の提出を求められる場合があります)。

遺留分放棄の注意点

遺留分放棄の申立書には、「申立の理由」のほか、被相続人の「財産目録」を記載する必要があるため、財産を明らかにしないまま相続人に遺留分放棄をさせることはできません。

また、遺留分の放棄は相続分の放棄と異なるため、被相続人は遺留分を放棄した相続人の相続分を0とする遺言書を作成する必要があります。

遺留分を侵害する遺言の作成

遺留分を侵害する遺言を作成することはできます。

そもそも、遺留分侵害額請求権は「権利」であって「義務」ではないため、遺留分を侵害された相続人が遺留分侵害額請求権を行使するか否かは当該相続人の意思にかかっています。
また、遺留分侵害額請求権が行使された場合も、侵害された遺留分に相当する金銭を支払えばよく、遺言全体が無効になることはありません。
したがって、子どもが複数いる親が、「全財産を長男に相続させる。」といった遺言を作成することはできます。

遺留分を侵害する遺言を作成する場合は、次の点に注意が必要となります。
遺言によって遺留分を侵害された相続人がいる場合、当該相続人が遺留分侵害額請求を行使すると、遺留分を侵害した相続人は侵害された遺留分に相当する金銭の支払が必要となります。
そうした場合、遺留分を侵害した相続人の金銭がないと、遺留分侵害額請求に対応することができません。

そこで、遺留分侵害額請求を受ける可能性のある相続人は、他の相続人に支払う代償財産、すなわち預貯金や現金といった流動資産を準備しておく必要があります。

相続財産から上記流動資産を準備することができない場合は、生命保険の活用を検討します。
具体的には遺言作成者の契約する生命保険の保険金受取人を、遺留分侵害額請求を受ける可能性のある相続人にしておきます。
受取人が予め指定された生命保険金は、遺留分算定の基礎財産に含まれず、受取人の固有財産となるため、他の相続人に支払う代償財産となります。

遺言書にはさまざまな決まりがあります。
せっかく書いた遺言が無効となったせいで相続人が遺産分割に時間をとられてしまう事態が生じないよう、遺言作成は慎重に行う必要があります。
確実な遺言書を書きたいという方、遺言書をどう書いてよいか迷っておられる方は、オールワン法律会計事務所の弁護士にご相談ください。専門家である弁護士が、あなたに最適な遺言書の書き方をご提案いたします。

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