遺言・相続・遺産分割

  1. 遺産分割はどのような基準に基づき行う必要がありますか?
  2. 遺産分割協議はどのように進めればいいですか?
  3. 遺産分割協議で注意することはありますか?

遺言がある場合とない場合で遺産分割の基準は異なります。遺産分割の基準や進め方についてオールワン法律会計事務所の弁護士が分かりやすく解説します。

相続についての
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遺産分割の基準

法定相続分(民法900

民法で予め決められている画一的な割合による遺産分割基準です。

例) 配偶者と子2人が相続人→配偶者 1/2 子 各1/4

ただし、法定相続分はあくまで遺産分割の目安であり、相続人間で合意できれば法定相続分とは異なる割合での分割も可能です。

指定相続分(民法902964

被相続人が遺言で指定した割合による遺産分割基準です。

例) 妻に3分の1、長男に3分の2の割合で相続させる

遺言は、遺言作成者(被相続人)の遺産分割対する希望が書かれた書面であり、遺言が残されていると、遺言の内容が優先します。

具体的相続分(民法9039042調停分割・審判分割

法定相続分・指定相続分を事案ごとに下記の方法で修正して算出する割合

1 個々の相続人の具体的相続分

みなし相続財産の範囲(相続財産の価額+特別受益の総額-寄与分の総額) ×  ②法定相続分(又は指定相続分) ー ③特別受益の価額 + ④寄与分の価額

2 具体的相続分の割合

(各相続人の具体的相続分の価額)÷(各相続人の具体的相続分の価額の総額)

 

ただし、相続開始後10年を経過した後にする遺産分割については、具体的相続分ではなく法定相続分(又は指定相続分)によることになります(民法904条の3本文)。

 

例外的に、①10年経過前に相続人が遺産分割を家庭裁判所に請求したとき、②10年の期間満了前6か月以内の間に遺産分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にある場合で、その事由が消滅した時から6か月を経過する前に当該相続人から家庭裁判所に遺産分割の請求をしたとき、については、具体的相続分による遺産分割が可能となります(民法904条の3但書)。

相続人全員が具体的相続分による遺産分割に同意した時も同様です。

遺産分割の方法

現物分割

相続財産を、そのままの形で個々に相続分に応じて遺産分割する方法です。
自宅は妻に、事業用の土地は長男に、株は長女にというように現物をそのまま分割します。

メリット
原則的な方法で簡単です。
デメリット
自宅が相続財産大半を占める場合などでは、自宅を相続する相続人と、何も相続できない相続人が生じるなど、公平な遺産分割ができないことがあります。

代償分割

相続財産を一部の相続人が相続分を超えて取得した場合に、他の相続人に対して、相続分を超えて取得した部分に見合う代償金を支払う方法です。

メリット
相続財産を分割することなく相続できます。
代償金の支払いで各相続人の相続分を調整するため、公平な遺産分割を実現できます。
デメリット
代償金を支払うことができないと代償分割はできません。

換価分割

不動産などの分割しにくい相続財産を売却し、金銭に換えてから分割する方法です。

メリット
金銭を分割することになるため、公平な遺産分割を実現できます。
デメリット
不動産に居住している相続人がいる場合や、被相続人と相続人の二世帯住宅が対象となる場合は、売却に反対する相続人が出てくる可能性があります。
また、郊外の戸建住宅のように不人気な不動産の場合、容易に買い手が見つけられないケースもあります。

共有分割

一つの相続財産を、2人以上の相続人の共有持分にする遺産分割方法です。
例えば、甲土地をAが1/3、Bが1/3、Cが1/3と持分で共有する方法です。

メリット
不動産の場合、登記手続きだけで遺産分割ができ、公平な遺産分割を実現できます。
デメリット
不動産の管理(賃貸など)処分(売却)には共有権者の合意が必要となります。共有権者間で意見が対立すると不動産の管理・処分が困難となります。
相続人の代で相続が発生すると、おじ・おばと、甥・姪が共有者となるなど、共有不動産に関する権利関係が複雑になります。

特別受益

特別受益とは

相続開始後の遺産分割協議において、一方の相続人は被相続人からその生前に贈与等の援助を受けているが、他方の相続人はそうした援助を受けていない場合、現にある相続財産を二等分すると、結果として不公平な分割になってしまいます。
そこで、特定の相続人だけが被相続人から生前に援助を受けていた等の事情がある場合、その援助は相続財産の先渡しであると考えて遺産分割を調整するのが特別受益という制度です。

民法903条1項は、
「共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。」
として、特別受益があった場合の遺産分割の進め方を規定しています。

相続人が被相続人から援助を受ければ何でも特別受益に該当するわけではありません。
特別受益に該当するには、被相続人からの「遺贈」か、「婚姻、養子縁組、生計の資本としての贈与」であることが必要です。

もっとも、被相続人からのどのような援助が「生計の資本としての贈与」にあたるのかは客観的に明らかではなく、個別の事情を考慮して特別受益該当性が判断されることになります。

学費の特別受益該当性

現在ではほとんどの方が高校に進学するため、高校の学費が特別受益に該当することは原則としてありません。
しかし、私立大学、特に私立医科大学の学費については特別受益該当性が問題となることがあります。

過去には、相続人の一人が家業を手伝わずに4年制大学に進学し、他の相続人らが中学校在学中から家業を手伝っていた事例で、私立大学の学費と下宿での生活費が特別受益として認められた裁判例がありました。
(京都家裁平成2年5月1日)

他方、相続人の一人が医学部に進学したが、他の相続人もそれなりの高等教育を受けていた事例で、医学部の学費等は特別受益に該当しないとした裁判例もありました。
(京都地裁平成10年9月11日)

何が特別受益に該当するのかは、単に医学部の学費だからといった事情では決まらず、被相続人の収入や資産、家庭の事情等によって総合的に判断されます。

もっとも、一般的な私立大学の学費については、よほど特別な事情がないと特別受益に該当することはないと思われます。

特別受益の持戻し免除

特別受益に関する903条は、その第3項で次のように規定してます。
「被相続人が前2項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。」

したがって、特定の相続人に対する生前贈与が特別受益に該当する場合も、被相続人が遺言でその持戻しを免除する意思を表示すれば、被相続人の意思が優先され、当該生前贈与を特別受益として評価する必要はなくなります。
裁判例では、この持戻し免除の意思表示は必ずしも遺言で行う必要はなく、被相続人の生前の言動等から持戻し免除が認定されることがあります。

しかし、被相続人の言動から持戻し免除の意思が認定されるか否かは不確実であるため、持戻し免除を望む場合は遺言を作成しておくことが無難です。

寄与分

寄与分とは

寄与分とは、共同相続人中に、

  1. 被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付
  2. 被相続人の療養看護その他の方法

によって、被相続人の財産の維持又は増加に特別の寄与をした場合、

相続財産から寄与分を控除したものを相続財産とみなし、寄与分が認められた相続人は、その算定された相続分に寄与分を加えたものがその者の相続分になる、という制度です。
(民法904条の2)

民法の条文が枝番号になっていることからも分かるとおり、寄与分は最初から民法の規定にあったものではなく、1980年(昭和55年)の民法改正の際に創設された規定です。

寄与分の認定

実務で寄与分が問題とことが多いのは、相続人の中に被相続人の療養看護をした者がいる場合の寄与分の認定です。
寄与分は単に被相続人の療養看護を手伝うと認めらるものではなく、療養看護することによって被相続人の財産が維持、増加するなど、「特別の寄与」があった場合に認められます。

さらには、「直系血族及び同居の親族は、互いにたすけ合わなければならない。」とされており(民法729条)、特別な寄与が認められるためには、一般的な扶養義務を超えた貢献がある場合に限られます。

寄与分が認められるか否かは個々の事情で異なりますが、一つの基準としては、

などが参考にされています。

※1
交通費や光熱費を受取っていた場合も、その金額が介護報酬に比べて非常に低い金額であれば無償性は否定されないと考えられています。

※2
同居の相続人がフルタイムで働き、その配偶者もパートタイムで働くなどして、被相続人が日中1人といったケースでは専従性が否定されています。

他方、同居相続人が介護の合間にパート等で働くケースでは、専従性が認められる可能性があります。
最高裁判所の司法統計によると、寄与分を認めた審判例は申立件数の1割以下となっています。

特別寄与料

従来の法律では、寄与分が認められるのは「共同相続人」すなわち法定相続人に限られていました。
しかし、保険会社等の調査では、実際に被相続人の療養看護をしていたのは、被相続人の配偶者、子に続いて、「子の配偶者」でした。

しかし、被相続人の子の配偶者は、被相続人と養子縁組をしていない限り法定相続人にならないため、寄与分は認められませんでした。
そこで、2018年(平成30年)の相続法改正では、被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族※は、特別寄与者として、特別寄与料の請求ができるようになりました。
(民法1050条1項)

※6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族のこと。

ただし、特別寄与料の請求は、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知ってから6カ月、又は相続開始から1年を経過するとできなくなりますので注意が必要です。
(同条2項)

遺留分

遺留分

遺留分とは

相続財産のなかで、法律上その取得が一定の相続人に留保されていて、被相続人による自由な処分に対して制限が加えられている持分割合のことです。

遺留分が認められる趣旨

次のような理由により遺留分制度が設けられたといわれています。

遺贈・贈与を受けなかった親族に対する生活保障

遺産形成に貢献した親族の潜在的持分の清算

遺留分権者

兄弟姉妹以外の相続人です(配偶者、子、直系尊属)。

遺留分減殺請求から遺留分侵害額請求へ

従来、遺留分については遺留分減殺請求という手続が規定されていました。遺留分減殺請求は、形成権であり、行使されると減殺請求権に服する範囲で遺留分侵害行為の効力は消滅し、目的物上の権利は当然に遺留分権者に復帰する(物権的効力)とされていました。

法改正により、遺留分減殺請求は遺留分侵害額請求となりました。遺留分侵害額請求は、遺留分侵害額請求の意思表示により遺留分侵害額に相当する金銭給付を目的とする金銭債権が生じるというものです。

遺留分対象財産の算定

遺留分の算定の対象となる財産は、次のように算定します。

相続開始時における被相続人の積極財産の額

相続開始前10年以内の相続人に対する生前贈与の額 ※1

相続開始前1年以内の第三者に対する生前贈与の額 ※2

被相続人の消極財産(債務)の額

遺留分を算定するための財産の価額

※1

特別受益に該当する贈与に限ります。

※2

当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってした贈与は相続開始前1年よりも過去になされたものであっても算入されます。

※1 ※2

時期の基準時は贈与契約締結時です。

遺留分侵害額請求

遺留分侵害額請求の主体(民法1046Ⅰ)

遺留分権者、その承継人(相続人、包括受遺者、特定承継人等)です。

遺留分侵害額請求の相手方(民法1046Ⅰ)

受遺者(相続人を含む)、受贈者です。

請求方法

相手方に対する意思表示により行います(実務では請求日時を明らかにするために内容証明郵便等を利用することが一般的です)。

当事者間で協議ができない、協議したが合意できない場合、遺留分侵害額の請求調停を申し立てます。 ※

遺留分侵害額の請求調停が不成立の場合は審判ではなく訴訟を提起します。

※ 遺留分侵害額の請求調停の申立は相手方に対する意思表示とは認められません。

遺留分侵害額請求の代位行使

改正前遺留分減殺請求の事案で行使上の一身専属性を理由に否定されています。

遺留分侵害額請求における請求の順序・期間制限

1贈与と遺贈が併存している場合(民法1047Ⅰ①)

受遺者の遺贈に対して先に遺留分侵害額請求を行使するします。

2同時になされた複数の贈与と遺贈がある場合(民法1047Ⅰ②)

被相続人が遺言で別段の意思表示をしない限り、その目的物の価額の割合に応じて行使することになります。

3複数の贈与がある場合(上記2の場合を除く)(民法1047Ⅰ③)

後の贈与から順次、前の贈与について行使します(遺言者はこれと異なる意思表示はできません)

遺留分侵害額請求の期間制限

1 遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間

2 相続開始の時から10年を経過したとき

上記期間を経過すると遺留分侵害額請求はできなくなります。

相続分の譲渡

相続分の譲渡

相続分の譲渡とは、相続財産全体に対する共同相続人の割合的持分(包括的持分)、又は法律上の地位を移転することをいいます。
相続人が有する相続財産全体に対する割合的持分は財産的価値を有するため、相続人の意思によって譲渡ができます。

相続分の取戻権を規定する民法905条(「共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。」)は、相続分が譲渡できることを前提とする規定です。

相続分の譲渡がなされるケース

相続人が多数いる場合

祖父母の遺産が未分割である場合など、相続人が多数となることがあります。
そうした場合に全ての相続人が遺産分割協議に参加すると手続きが煩雑となります。
そこで共同相続人間で相続分を譲渡し、相続人を整理することで遺産分割協議がスムーズに行えます。

内縁の妻等がいる場合

内縁の妻や養子など、実質的に相続人として扱ってよい第三者がいる場合、当該第三者に相続分を譲渡することで第三者が遺産分割協議に参加することができます。

共同相続人への譲渡

共同相続人間で相続分を譲渡することで相続放棄や遺産分割と同様の効力が期待できます。
この場合、遺産分割協議と異なり、全ての共同相続人の同意がなくても、譲渡人と譲受人との合意により相続分の譲渡をすることができます。

相続分の譲渡と相続債務

相続分の譲渡の効力は相続債務にも及びます。
しかし、債権者と無関係に相続分を譲渡した相続人が免責されることは不適当です。

そこで、相続債務については、譲渡人も依然として債務者として扱われます。
この場合、譲渡人と譲受人が負う債務は、不真正連帯債務として取り扱われます。

相続分の譲渡の方法

法律上、相続分の譲渡には特別な様式は必要とされていません。
ただし、相続分を譲渡する場合、裁判所に次の書類を提出することが必要となります。

  1. 相続分譲渡届出書
  2. 相続分譲渡証書(必要事項の記入の他,譲渡人と譲受人の両方の記名・押印のあるもの)
  3. 即時抗告権放棄書(必要に応じて裁判所に提出)
  4. 印鑑登録証明書(相続分譲渡人のもの。コピー不可。)

譲受人の地位

遺産分割前の共同相続人は、相続財産を共有しており、相続分が確定するのは遺産分割後になります。
したがって、相続分の譲受人がいる場合、共同相続人の相続分を確定させるため、譲受人を遺産分割協議に関与させる必要があります。
(東京高決昭和28年9月4日)

共同相続人間で相続分の譲渡がある場合は、「積極財産と消極財産とを包括した遺産全体に対する譲渡人の割合的な持分が譲受人に移転し、譲受人は従前から有していた相続分と新たに取得した相続分とを合計した相続分を有する者として遺産分割に加わることに」なります。
(最判平成13年7月10日)

譲渡人の地位

譲渡人の地位については、「相続分を譲渡した相続人は、遺産分割前の遺産について共有持分を有しないことになり、遺産分割調停、審判における当事者適格も欠くことになると解されるから、遺産確認の訴えについての当事者適格を有しないというべき」とされています。
(東京高判平成19年11月28日)

遺産分割協議の途中で相続分の譲渡がなされた場合、譲渡人は排除の裁判によって遺産分割手続から離脱することになります(家事事件手続法258条・43条)。

相続分の取戻し

共同相続において、相続分を第三者に譲渡した共同相続人がいる場合、他の共同相続人は、相続分の価額と費用を償還して相続分を第三者から取り戻すことができます(民法905条1項 相続分の取戻権)。
第三者が遺産分割協議に加わることによって手続が混乱することを避けるため、共同相続人に相続分の取戻権が認められました。
こうした趣旨からは、他の共同相続人が譲受人の場合、相続分の取戻権は行使できないとされています。

相続分の取戻権は形成権とされており、譲受人の承諾なく相続分を譲り受けることができます。
また、取戻権は共同族人全員で行使する必要はなく、一人で行使することができます。
取戻権は1か月以内に行使する必要があり(民法905条2項)、この期間は除斥期間とされています。

遺産分割協議書

遺産分割協議と遺産分割協議書の作成

被相続人の遺言がなく、複数の相続人がいる場合、遺産を分割するための協議が必要となります(遺産分割協議)。
遺産分割協議において相続人間に合意が成立した場合、その合意を単に口頭に留めておき、遺産分割協議書を作成しないことも可能です。

しかし、口頭では後になって合意内容が分からなくなったり、協議が蒸し返されることもあります。
そこで、相続人間で遺産分割につき合意できた場合は、遺産分割協議書を作成します。

遺産分割協議書の作成方法

遺産分割協議書には共同相続人全員が署名・押印をします。
署名を記名(スタンプ印など)に代えることはできますが、できるだけ自書するようにします。
全員が署名・押印するのであれば、全員が一同に会して遺産分割協議書に署名・押印しても、予め作成された遺産分割協議書を相続人間で持ち回りで署名・押印してもかまいません。

遺産の中に不動産がある場合、遺産分割協議書は「相続を証する書面」となり、遺産分割協議書によって相続登記ができます。この場合は共同相続人全員が遺産分割協議書に実印を押印し、印鑑登録証明書を添付しておく必要があります。
また、遺産分割協議書における不動産の記載については、法務局等で不動産全部事項証明書を予め入手し、全部事項証明書の内容をそのまま記載します。

相続人が海外にいる場合

共同相続人全員が遺産分割協議書に実印を押印し、印鑑登録証明書を添付すると、当該遺産分割協議書は「相続を証する書面」となります。
他の必要書類と共に登記申請書に当該遺産分割協議書を添付することで、相続登記の申請をすることができます。

しかし、日本に住民登録をしていない海外在留者の場合、印鑑登録ができないため印鑑登録証明書を習得することができません。
そこで、印鑑登録証明に代わる署名証明を取得する必要があります。

署名証明とは、 日本に住民登録をしていない海外に在留している人に対して、日本の印鑑証明に代わるものとして日本での手続きのために発給されるもので、申請者の署名(及び拇印)が確かに領事の面前でなされたことを証明するものです。

証明の方法は次の2種類となります。

遺産分割協議書の場合、海外在留者が日本の大使館又は領事館に遺産分割協議書を持参し、領事の面前で署名・拇印をして、領事が発行した署名証明書を遺産分割協議書に合綴(がってつ)し、領事に割印を押印してもらいます。

申請は日本国籍を有する人に限られます。
また、領事の面前で署名(及び拇印)を行わなければならないので、申請する方ご本人が公館へ出向いて申請することが必要です。
代理申請や郵便申請はできません。

相続人が外国人の場合、来日していれば当該外国の在日大使館で署名証明を受けます。

外国人が来日していない場合は、手続を委任する司法書士の宣誓供述書と公証人による認証を組み合わせることになります。

詳しくは、法務局に確認するようにしてください。

遺産分割協議書作成上の注意点

  1. 被相続人の表記については、最後の本籍地(戸籍(除籍)謄本の本籍地)、最後の住所地(住民票(除票)の写し)、氏名、死亡した日を記載する。
  2. 相続人の住所の記載は、住民票や印鑑登録証明書の記載のとおりに記載する。
  3. 不動産は全部事項証明書の記載のとおりに記載する。
  4. 相続財産については特定できるように記載する。
  5. 財産を取得しない相続人も遺産分割協議書には署名・押印する。
  6. 現在判明していない財産が今後発見された場合にどのように分割するのかを決めておく。
  7. 任意に作成された遺産分割協議書では払戻しや名義変更に応じない金融機関があるため、予め払戻請求書等が必要なのか金融機関に確認しておく。
  8. 全ての相続人が遺産分割協議書を保有できるよう相続人の人数分遺産分割協議書を作成する。
  9. 遺産分割協議書が複数枚となる場合、用紙の間に相続人全員の契印を押印する。
  10. 公正証書で作成すれば後の争いを避けることができるため、公正証書での作成を検討する。

遺産分割調停・審判

遺産分割事件における調停と審判

遺産分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人はその分割を家庭裁判所に請求することができるとされています(民法907条2項)。
遺産分割事件については、審判の申立(家事事件手続法39条)だけではなく、家事調停の申立(同244条)もできます。

遺産分割事件は、家庭に関する訴訟事件と異なり調停前置主義(同257条)が適用されないため、審判、調停いずれの申立もできます。
ただし、審判事件として申立てられた遺産分割事件は、職権で調停に付することができるとされています(同274条1項)。

調停として申立てられた遺産分割事件において調停が成立した場合は、審判事件に移行することなく事件は終了し、その調停調書は確定判決と同一の効力を有することになります(同268条1項)。

申立の方式

遺産分割の調停又は審判は、各共同相続人が申し立てることができます(民法907条2項)。
相続人と同一の権利義務を有する包括受遺者(同990条)、相続分の譲受人、包括遺贈の場合の遺言執行者(同1012条1項)も申し立てることができます。
調停・審判とも申立は書面で行います(家事事件手続法255条1項、49条1項)。

親権を行う父又は母とその子が共同相続人である場合、遺産分割協議で利益が相反するため、親権を行う者はその子のために特別代理人の選任を家庭裁判所に請求する必要があります(民法826条1項)。
成年被後見人と後見人が共同相続人で、後見監督人が選任されていない場合も、特別代理人の選任を家庭裁判所に請求する必要があります。
被保佐人と保佐人、被補助人と補助人がそれぞれ共同相続人である場合も、保佐監督人や補助監督人が選任されていない場合は、臨時保佐人、臨時補助者の選任を家庭裁判所に請求する必要があります。

裁判所の管轄

審判事件として申立てる場合の裁判所の管轄(土地管轄、以下同じ)は、相続開始地である被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です(家事事件手続法191条1項、民法883条)。
調停事件として申立てる場合の裁判所の管轄は、相手方の住所地(相手方が複数いる場合でその全ての住所地が異なる場合はその全てが土地管轄となる。)又は当事者が合意で定めた家庭裁判所になります(家事事件手続法245条1項)。

調停の成立・不成立

調停において当事者間に合意が成立し、これを調停調書に記載した場合は調停が成立します(家事事件手続法268条1項)。
調停が成立すると確定した審判と同一の効力を有します。

金銭の支払、物の引渡等の具体的給付義務を定めた調停調書の記載は、執行力のある債務名義と同一の効力を有するため、執行分等の付与を要することなく直ちに強制執行ができます。
当事者間に合意の成立する見込みがない又は成立した合意が相当でない場合、調停委員会は調停が成立しないものとして事件を終了させることができます(同272条1項)。

調停が不成立で終了した場合は、調停の申立時に遺産分割の審判の申立があったものとみなされて、審判手続きに移行し、審判手続が開始することになります(同272条4項)。

調停に代わる審判

家庭裁判所は、調停が成立しない場合において相当と認めるときは、一切の事情を考慮して、職権で事件解決のための審判をすることができます(家事事件手続法284条1項)。
この調停に代わる審判が確定すると、通常の審判と同様の効力を有するとされています(同287条)。

審判手続

認容の審判とは、申立が適法で、かつ、遺産分割の処分をすべきものと認められる場合になされるもので、その内容は遺産分割条項となります。
他方、却下の審判とは、申立が不適法、又は分割の理由ないし必要がない場合になされます。

遺産分割の審判は、これを受ける者が告知を受け、即時抗告期間(即時抗告権者が告知を受けた日の翌日から起算して2週間)が経過すると確定し、効力が生じます(家事事件手続法86条、民法140条)。
遺産分割の審判に対する不服申し立ては即時抗告の方法で行い(家事事件手続法198条)、原審家庭裁判所に書面で行います。

抗告裁判所が即時抗告に理由があると認めた場合には、原則として家事審判事件について自ら審判に代わる裁判をすることになります。

相続登記

登記実務では、通常、登記申請は所有者となる者全員で登記申請をする必要があります。
一方、共同相続人が、法定相続分どおりに相続する共同相続登記の場合、共同相続人中の一人が、相続人全員のために相続登記の申請ができます。

法定相続分どおりに登記をするため、相続不動産の現状を変更するものではないためです。
(したがって共同相続登記を確認しても、遺産分割協議が済んだのか否か分かりません)。

換価のため便宜的に相続人の一人に相続登記を移転する場合

換価手続を簡便に行うため、相続人の一人に相続登記を移転して、当該相続人が不動産を売却することがあります。
こうした場合、他の相続人から、相続登記の移転を受けた相続人の贈与税課税の問題となります。

この問題については、国税庁の質疑応答事例では次のように紹介されています。

【照会要旨】
遺産分割の調停により換価分割をすることになりました。ところで、換価の都合上、共同相続人のうち1人の名義に相続登記をしたうえで換価し、その後において、換価代金を分配することとしました。この場合、贈与税の課税が問題になりますか。

【回答要旨】
共同相続人のうちの1人の名義で相続登記をしたことが、単に換価のための便宜のものであり、その代金が、分割に関する調停の内容に従って実際に分配される場合には、贈与税の課税が問題になることはありません。
(国税庁>法令等>質疑応答事例>相続税・贈与税>遺産の換価分割のための相続登記と贈与税)

上記回答要旨では、①相続人の一人に相続登記をすることが単に換価のための便宜的なもので、②代金が分割協議の結果に従って分配されれば、贈与税課税の問題は生じないとされています。
そこで、換価のための便宜的な相続登記であることを明らかにするため、遺産分割協議書には「相続人〇〇が単独で相続登記をした上で、売却し、その代金を各相続人が次の割合で取得する」等の文言をいれておけば安心です。

 

遺産分割で注意しておきたいこと

遺産分割協議書を作成する

遺産分割において、その結果を記載する遺産分割協議書は、必ず作成が求められているものではありません。
しかし、後になって相続人間で紛争が起こらないようにするため、遺産分割協議書は作成しておくことがおすすめです。

遺産分割協議書には財産を相続しない相続人も署名・押印する

遺産分割協議書には、財産を相続しない相続人を含む、全ての相続人が署名・押印します。
財産を相続しない相続人の署名・押印することで、当該相続人が財産を相続しないことについて合意していたことが明らかになるためです。

不動産が含まれる遺産分割協議書には実印を押印します

遺産分割協議書に使用する印章は実印である必要はなく、認印でもかまいません。
しかし、相続財産に不動産が含まれている場合は、不動産の相続登記に必要となるため、遺産分割協議書に押印するのか各相続人の実印(印鑑登録証明を受けた印章)を使用します。

財産を相続しない相続人は相続放棄の手続も行っておく

相続債務(被相続人が残した借金等)は分割協議の対象とならず、法定相続分に応じて相続人が負担することになります。

したがって、遺産分割協議の中で特定の相続人が相続債務を相続すると決めても、被相続人の債権者に対抗できず、債権者はすべての相続人に債務の返済を求めることができます。

そこで、財産を相続しないのであれば、念のために相続放棄についても検討する必要があります。

遺産分割のやり方が分からない、相続人間で遺産分割に関して意見が対立している……。
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