遺言・相続・遺産分割

  1. どのような場合に相続が開始しますか?
  2. 災害に遭遇した人の相続はどうなりますか?
  3. 行方不明者の相続はどうなりますか?
  4. 誰が相続人になりますか?
  5. 法定相続分はどのように決まっていますか?
  6. 遺留分とは何ですか?

相続は人の死亡によって開始しますが、災害に遭遇した人や行方不明者については特則があります。
相続人の範囲や各相続人の相続分については民法の規定があります。また遺留分が認められる相続人もいます。弁護士が相続人の範囲などをご紹介します。

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人生100年時代の相続の特徴

人生100年時代と言われるようになって久しくなります。
この「人生100年時代」という言葉は、2016年に刊行された共にロンドンビジネススクール教授のリンダ・グラットンとアンドリュー・スコットが書いた「ライフシフト 100年時代の人生戦略」が出自といわれています。

厚労省の統計によれば、2018年の平均余命は男性で81.3歳、女性で87.3歳。
世界有数の長寿国になっています。

ただ、長生きされる方が増えるに伴い、年金、介護等様々な問題も注目されるようになりました。
相続においても、長寿化の進展に伴い様々な問題が指摘されるようになりました。

被相続人が認知症であったケースの増加

被相続人が認知症であったケースの場合、認知症の程度にもよりますが、症状が進行すると単独で有効な法律行為が行えなくなります。
財産管理については法定後見制度、任意後見制度を活用することで、成年後見人等の代理人が本人に代わって行うことができます。

一方、生前贈与を始めとする相続税対策や、遺言を作成するといった行為は、本人の認知症が進行するとできなくなります。
(生前贈与特化型といわれる生命保険を活用すれば、生前贈与はある程度継続できますが。)

本人が亡くなると、相続に対する十分な準備が出来ていないため遺産分割協議が難航したり、相続税の負担が過重になる等の問題が生じることがあります。

相続人が認知症であるケースの増加

相続開始時に相続人が認知症を患い、症状が進行していると、遺産分割協議ができなくなります。
被相続人の遺言がない場合、家庭裁判所に本人に代わって遺産分割協議に参加する特別代理人の選任を申立てる必要があるため、遺産分割協議に時間を要することになります。

また、特別代理人は本人の利益を損なうことはできないので、法定相続分が確保できないと協議に同意できません。
その結果、柔軟な遺産分割協議ができなくなる可能性があります。

被相続人の財産管理を巡るトラブルの増加

同居の親族が被相続人の財産管理をしていたケースなどでは、その財産管理の内容等を巡って相続開始後にトラブルとなるケースがあります。
被相続人の財産を同居の親族が使い込んでいたのではないか、どこかに隠匿しているのではないか。

同居していなかった相続人から、遺産分割協議の場でこうした発言が飛び出すと、あとは争族、ドロ沼のような展開になります。
特に被相続人名義の銀行口座から出金された現金は、後になって使い道等を調べることができないため、出金の額や回数によっては他の相続人からその使途に疑念が持たれることがあります。

被相続人の介護を巡るトラブルの増加

特定の相続にだけが被相続人の介護をサポートしていたケースでは、介護をサポートしていた相続人の寄与分の有無及び範囲を巡ってトラブルとなることがあります。
介護をサポートしていた相続人は、寄与分に見合う追加相続分への期待があります。

しかし民法では、直系血族間の扶養義務を定めているため、寄与分が認められるのはこうした扶養義務を超えた「特別な寄与」が認められる必要があります。
親の面倒を見てきたとの思いがある相続人が寄与分が認められないと、やはり他の相続人とのトラブルに発展することが少なくありません。

子がない夫婦・法定相続人がいない被相続人の増加

少子化・高齢化の影響で、子がいない夫婦、法定相続人がいない被相続人が増加しています。
子がいない夫婦で例えば夫が亡くなった場合、夫の両親がすでに他界していると、法定相続人は妻と夫の兄弟姉妹となります。

夫の兄弟姉妹が法定相続分を主張すると、相続財産の内容によっては、妻は夫名義の自宅で暮らすことができない可能性が出てきます。
夫の兄弟姉妹が認知症の場合、特別代理人選任に手間と時間が必要となります。

兄弟姉妹が既に死亡していると代襲相続人である甥や姪と協議が必要となります。
被相続人に法定相続人がいない場合、相続財産は家庭裁判所が選任する相続財産管理人が管理することになります。

相続財産管理人が特別縁故者の有無を調査したり、相続債務を弁済した後、残った相続財産は国庫に帰属することになります。
したがって、法定相続人がいない人が払う相続税は100%となります。

相続の開始原因(人の死亡とは)

相続の開始原因は「人の死亡」ですが、人の死亡には、「自然の死亡」と「法的に擬制された死亡」があります。

自然の死亡

自然の死亡については、刑法などでは脳死をもって死亡とするのか等が問題となることがありますが、相続ではあまり問題となりません。

人が死亡したときは、同居の親族等の届出義務者が、死亡の事実を知った日から7日以内に診断書又は検案書を添付して届出を行うことになります。
(戸籍法86条1項)

なお、災害で行方不明になるなど、遺体が発見されないため診断書又は検案書が添付できない等やむを得ない場合は、診断書又は検案書に代えて「死亡の事実を証すべき書面」を提出します。
(戸籍法86条3項)
この場合、死亡現認書等が「死亡の事実を証すべき書面」となります。

認定死亡

水難や火災等により、死亡したことは確実であるが遺体が見つからない場合、取調官公署が死亡の認定を行い、その報告に基づいて戸籍に死亡の記載をする制度です。
認定死亡は自然死亡の一態様とされています。

なお、死亡届には「死亡の年月日時分及び場所」を記載する必要があります。
(戸籍法86条2項)
この「死亡の年月日時分」は戸籍に記載されます。
一方で、認定死亡は正確な死亡時期が分からないため、戸籍には「推定」と記載されます。

法的に擬制された死亡=失踪宣告

失踪宣告とは、法律で定められた一定の期間生死不明の者について、所定の時期に死亡したとみなす制度です。

普通失踪

不在者の生死が7年以上明らかでないときに、不在者を死亡したとみなす制度です。
不在者の生存が最後に確認できた時点から7年以上経過した場合に家庭裁判所に申立ができます。

家庭裁判所で失踪申告の審判がなされると、7年間の期間満了時に不在者が死亡したとみなされ、相続が開始します。
(民法31条)

特別失踪

戦地に臨んだ者、沈没した船舶に乗船していた者、その他死亡の原因たるべき危難に遭遇した者について、その生死が、戦争が終了した後、船舶が沈没した後、その他の危難の去った後1年間明らかでない場合、その不在者を死亡したものとみなす制度です。
特別失踪では「危難が去った時」に死亡したものとみなされ、相続が開始します。(民法31条)

 

相続人の範囲

相続人の範囲は民法で決まっています。

配偶者

被相続人(亡くなった人)の配偶者は常に相続人となります。
(民法890条)

被相続人の子は第1順位の相続人となります。
子が先に亡くなっている場合、その者の子(被相続人の孫)が相続人となります(代襲相続人)。
(民法887条1項・2項)

直系尊属

被相続人の直系尊属は、被相続人に子や代襲相続人がいない場合、第2順位の相続人となります。
(民法889条1項1号)

兄弟姉妹

被相続人の兄弟姉妹は、被相続人に子、代襲相続人がなく、直系尊属が既に亡くなっている場合、第3順位の相続人となります。
(民法889条1項2号)

代襲相続

代襲相続とは、被相続人の子や兄弟姉妹が相続人となる場合において、その子ら(「被代襲者」といいます。)が被相続人より先に死亡している時は、被代襲者の子(「代襲者」といいます。)が代わりに相続人となるものです。
(民法887条2項)

代襲者は、被相続人の直系卑属であることが必要です。
したがって、被相続人の子が養子の場合、子(養子)の連れ子は、被相続人(養親)からみると直系卑属にあたらないため、養子の連れ子は代襲相続しません。
他方、養子縁組の後生まれた養子の子は、養子は縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得するため(民法809条)、被相続人の直系卑属にあたり代襲者となります。

数次相続

例えば祖父→父と相続が発生したが、祖父の相続手続にかかる遺産分割協議が終了していないのに父の相続が発生したようなケースを数次相続といいます。
数次相続では、父の相続人全員が、祖父の相続人となるため、一旦祖父の相続財産について遺産分割を行い、祖父の相続財産における父の相続財産を確定します。

その上で、父の相続人は、父が相続した祖父の相続財産と、父が残した他の相続財産について遺産分割協議を行うことになります。
このように数次相続が発生すると実質的に遺産分割を2回行う必要があり、また、相続人の範囲も広がるため時間がかかります。
そこで、相続税の申告がある場合は申告期限を意識して速やかに遺産分割協議を行う必要があります。

法定相続分

法定相続分は次のとおりになります。
(民法900条)

法定相続人 法定相続分 遺留分
配偶者+子 配偶者1/2 子1/2 配偶者1/4 子1/4
配偶者+尊属 配偶者2/3 尊属1/3 配偶者2/6 尊属1/6
配偶者+兄弟姉妹 配偶者3/4 兄弟姉妹1/4 配偶者1/2 兄弟姉妹0
配偶者のみ 1/1 1/2
子のみ 1/1 1/2
尊属のみ 1/1 1/3
兄弟姉妹のみ 1/1 0

遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められている最低限の相続分のことです。
各相続人の遺留分は、直系尊属だけが相続人の場合は3分の1、それ以外の場合は2分の1となります。
(民法1042条1項)

相続欠格

相続欠格とは

相続欠格とは、本来相続人となるべき者に一定の不正事由があった場合に、法律上相続権がはく奪され、相続資格を失くことをいいます。
欠格事由に該当する相続人を相続欠格者といいます。
民法891条は5つの欠格事由を定めています。

相続欠格事由

故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者(1号)

殺人の場合、既遂だけではなく未遂や予備も含まれるとされています。
わざと人を殺そうとする故意犯であることが必要です。
うっかり人を殺してしまった過失致死や、相手に怪我をさせるつもりで暴行したところ結果として殺してしまった傷害致死は含まれません。

被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。

ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない(2号)

被相続人が殺害されたことを知って告発等をしなかった者が該当します。
他方で、その者に是非弁別がない場合や、殺害者が自己の配偶者・直系血族である場合は除外されます。
なお、除外されるのは配偶者と直系血族(親子等)であり、兄弟やいとこといった親族は対象となりません。

詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者(3号)

詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者(4号)

相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者(5号)

5号については、相続人が被相続人の遺言を破棄又は隠匿した行為が、相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは該当しないとされています。

相続欠格の効果

相続欠格の効果は一身専属的であり、直系卑属には及びません。
したがって、欠格者に直系卑属がいる場合はその者が代襲相続します(民法887条)。

また、欠格の効果は相対的であり、特定の被相続人との関係だけで相続人の資格を失います。
したがって、親を殺した者でも、自らの子の相続人となることはできます。

なお、相続欠格は、欠格事由があれば何らの手続を要せず、法律上当然に効力が生じます。

相続人の廃除

相続人の廃除とは

相続人の廃除は、相続欠格と並ぶ相続権のはく奪事由です。
相続欠格は、相続人が欠格事由に該当する行為をしたときに、何らの手続を要せず、法律上当然に相続権を失います。

他方、相続人の廃除は、遺留分を有する相続人が、被相続人を虐待などしたときに、被相続人の請求に基づいて、家庭裁判所の審判によって相続人の相続権をはく奪する制度です。
したがって、遺留分を有さない兄弟姉妹は排除することができません。

相続人の廃除は、被相続人が家庭裁判所に審判の申立をすることで行います(生前廃除)。
また、被相続人は、遺言によっても排除の申立をすることができます。
遺言による廃除の申立は、遺言執行者が遅滞なく家庭裁判所に廃除の請求をすることで行います。

廃除の理由と審判

1 推定相続人が被相続人に対して虐待をしたこと

2 推定相続人が被相続人に重大な侮辱を加えたこと

3 推定相続人にその他の著しい非行があったとき

上記「虐待」又は「侮辱」は、被相続人に対し精神的苦痛を与え又は名誉を棄損する行為であって、それにより被相続人と当該相続人との家族的共同生活関係が破壊され、その修復を著しく困難ならしめるいものを含む、とされています。
(東京高決平成4年12月11日)

もっとも、廃除は相続権のはく奪という重大な効果を生じさせるため、家庭裁判所では廃除該当性の判断は慎重に行われているようです。

具体的には、①相続人の非行が一時の激情にかられたものや、②その非行が被相続人の態度・生活等にも起因する場合は、廃除事由にあたらないとした裁判例があります。

廃除の効果

廃除の審判の確定により、排除された相続人は直ちに相続権を失います。
遺言による廃除の場合は、その効果は相続開始時に遡及します。

廃除請求者は、廃除の審判の確定日から10日以内に戸籍法の定めるところにより、相続人の廃除を届出る必要があります。

廃除の効果は相対的で、他の者に対する相続権は失われません。
また廃除の効果は一身専属的で、被廃除者の子や孫の代襲相続権には影響がありません。

相続人が存在しない場合

相続人がいない(明らかでない)場合の相続手続

相続人の存在が明らかでない場合、その相続財産は法人となります(民法951条)。
この相続人の存在が明らかでない状態を「相続人の不存在」といいます。

具体的には、①戸籍上、相続人となる人が見当たらないとき、②全ての相続人が相続放棄をしたとき、が相続人の不存在にあたります。
相続人の存在が明らかでない相続財産が残された場合、相続人を探し出すとともに、相続財産を保全管理して相続債権者等への弁済を行い、最終的に残った財産を清算して国庫に帰属させる必要があります。

こうした業務を執り行うため、家庭裁判所では相続財産管理人を選任します。

相続人の不存在における手続

1 相続財産法人の成立

相続財産自体が相続財産法人となりますが、相続人があることが明らかになった場合は、相続財産法人は成立しなかったものとみなされます。

2 家庭裁判所による相続財産管理人の選任・公告(2か月)

家庭裁判所は利害関係人の請求によって相続財産管理人を選任し、公告します。
したがって、相続債権者や特別縁故者は自ら家庭裁判所に対して相続財産管理人の選任を申立てる必要があります。

3 相続債権者及び受遺者に対する公告(2か月以上)

上記2の公告期間中に相続人が明らかでなかったときは、相続財産管理人は相続財産の清算手続に入ることになります。
相続財産管理人は、2か月を下回らない期間を定めて一切の相続債権者・受遺者に対して、その期間内に請求の申し出をするように公告します。
一方、知れたる債権者・受遺者に対しては個別に申し出の催告をします。

4 家庭裁判所による相続人捜索の公告(6か月以上)

家庭裁判所は、上記3期間満了後も相続人の存在が明らかでない場合、相続財産管理人又は検察官の請求によって6か月を下回らない期間を定めて相続人捜索の公告をします。

5 上記4公告期間満了後の相続人の不存在の確定・相続人・相続債権者等の権利の除斥

上記4の期間が満了すると、相続人・相続財産管理人に知れなかった相続債権者・受遺者の権利は絶対的に消滅します。

6 特別縁故者への財産分与

相続人不存在が確定し、残余財産がある場合、特別縁故者(被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者)からの請求によって、家庭裁判所は相続財産の一部又は全部をその者に与えることができます。

7 残余財産の国庫帰属

特別縁故者からの財産分与の請求がなく、分与があってもなお残余財産がある場合には、その残余財産は国庫に帰属することになります。

国庫に帰属した後に相続人が現れても、国庫に対して権利を行使することはできません。

相続人が行方不明の場合

相続人が行方不明の場合の相続手続

相続人が行方不明の場合、他の相続人だけで遺産分割を行うことはできません。
他の相続人だけで遺産分割を行っても、被相続人の預金を引出したり、不動産を相続することはできません。

なぜなら、これら相続手続には相続人を確定するために被相続人の戸籍が必要となるところ、戸籍を調べれば行方不明の相続人が遺産分割協議に参加していないことが判明するからです。
他の相続人が勝手に行方不明の相続人の名前を遺産分割協議書に書いたり、押印したりすると私文書偽造罪(刑法159条)になります。

失踪宣告

相続人の生死が7年間明らかでない場合は、利害関係人である他の相続人は、家庭裁判所に対して失踪宣告の申立をすることができます(普通失踪 民法30条1項)。
戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者については、戦争がんだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後1年間明らかでないときについても、他の相続人は、家庭裁判所に対して失踪宣告の申立ができます(特別失踪 民法30条2項)。

家庭裁判所によって失踪宣告がなされると、普通失踪では7年を経過した時点で、特別失踪では危難が去った時に、行方不明の相続人は死亡したものとみなされます(民法31条)。
なお、家庭裁判所が失踪宣告の審判をするには、普通失踪で3か月以上、特別失踪では1か月以上の公告期間を設ける必要があります。

失踪宣告がなされた場合、行方不明の相続人に代襲相続人がいれば他の相続人は代襲相続人と遺産分割協議を行い、代襲相続人がいなければ他の相続人だけで遺産分割協議を行います。

不在者財産管理人の選任

行方不明の相続人が財産管理人を置いていない場合、利害関係人である他の相続人は、家庭裁判所に対して、不在者の財産管理についての管理人の選任申立をすることができます(民法25条1項)。
不在者の財産管理人が選任されると、他の相続人は不在者の財産管理人と遺産分割協議を行うことになります。

不在者の財産管理人ができるのは、保存行為と、物又は権利の性質を変えない範囲内での利用又は改良を目的とする行為に限られます(民法28条、103条)。
遺産分割協議は、保存、利用、改良行為にあたらないため、財産管理人が遺産分割協議を成立させるには家庭裁判所の許可を得る必要があります。

具体的には、財産管理人が遺産分割協議書を審判申立書に添付して、許可の申立をします。
家庭裁判所は、不在者が法定相続分を取得していることを許可の条件としているようです。

相続人が未成年者の場合

共同相続人に未成年者がいる場合

遺産分割は、相続開始後、共同相続人の共同所有に属している相続財産を、各共同相続人に分配、分属させる手続であり、財産に関する法律行為にあたります。
「親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。」とされています(民法824条本文)。

そこで、共同相続人中に未成年者がいる場合は、その法定相続人たる親権者が、未成年者相続人に代わって遺産分割協議を行うことになります。

利益相反行為にあたる場合

利益相反行為とは、当事者の間では利益が相反する内容の行為をいいます。
この場合、それぞれの利益を守るため、一方が他方を代理したり、一人が双方を代理することは禁止されています(民法108条参照)。

共同相続人中に未成年者がいる場合も、
①親権者と未成年者が共に共同相続人であり、親権者が未成年者の代理人として遺産分割協議を行う場合、
②親権者を同じくする複数の未成年相続人がいて、当該親権者がそれぞれの未成年相続人の代理人として遺産分割協議を行う場合
親権者と未成年相続人の利益が相反するため、家庭裁判所に対して特別代理人の選任を請求する必要があります(民法826条)。

①の場合、親権者は、子である未成年相続人のために特別代理人の選任を家庭裁判所に請求する必要があります。
②の場合、親権者は、子である複数の未成年相続人のうち、一人は代理できますが、その他の未成年相続人のために特別代理人の選任を家庭裁判所に請求する必要があります。

なお、親権者たる父母の一方に利益相反がある場合については、
「利益相反の関係にある親権者は特別代理人の選任を求め、特別代理人と利益相反の関係にない親権者と共同して代理行為をなすべき」とされています。
(最判昭和35年2月25日)

特別縁故者

特別縁故者の範囲

特別縁故者とは、

①被相続人と生計を同じくしていた者
②被相続人の療養看護に務めた者
③その他被相続人と特別な縁故があった者

であり、①と②は例示であるとされています(民法958条の3第1項)

①被相続人と生計を同じくしていた者

内縁の妻(夫)、事実上の養親子、同居の親族、認知していない子、亡くなった子の配偶者等

②被相続人の療養看護に務めた者

被相続人の療養看護に努めた者は、①被相続人と生計を同じくしていた者と重複する場合も少なくありませんが、審判では次のような者が該当すると判断されています。

〇老人ホーム入所時に身元保証人や成年後見人となったほか、遠距離にもかかわらず多数回にわたり老人ホームや入院先を訪れて、親身になって被相続人の療養看護や財産管理に尽くすなどした被相続人の妹の孫夫婦
(大阪高決平成20年10月24日)

〇被相続人の唯一の頼りになる相談相手となり、入院に際しては看病に努め、退院後は自宅に引き取り、生活の一切を世話をし、被相続人の死後、その遺体解剖に立ち会い、被相続人の葬儀一切を執り行い、死後法要等を欠かさなかった者(被相続人の知人夫婦)。
(大阪家審昭和52年3月15日)

〇被相続人から報酬を得て稼働していた付添看護婦(師)であっても、雇用契約を超えて被相続人のために尽くした等の事情がある場合
(神戸家審昭和51年4月24日)

③その他被相続人と特別な縁故があった者

①②に準じる程度に被相続人と精神的・物質的に密接な交渉があった者で、相続財産をその者に分与することが被相続人の意思に合致するであろうとみられる程度に特別の関係があった者をいいます。
審判例では次のような者が該当するとされました。

〇被相続人を収容看護していた養老院
(長崎家審昭和41年4月8日)

〇被相続人が代表者をしていた学校法人
(大阪家審昭和57年3月31日)

分与の方法

特別縁故者が、相続人捜索の公告期間満了後3か月以内に、家庭裁判所に対して、残余財産の全部又は一部を分与することを申立てることによって行います。

家庭裁判所は、審理の上で、特別縁故者の関係の程度、療養看護の内容・程度・期間、残余財産の内容等を考慮して相当と認めた場合に残余財産の全部又は一部を分与します。

相続税

特別縁故者の財産の取得は、相続税法上遺贈とみなされます。
相続財産の評価は分与の審判があった時の時価です。

相続税の申告・納付期限は、分与の審判のあったことを知った日の翌日から10か月以内です。
なお、法定相続人が0のため、相続税の計算における基礎控除は3,000万円となります。

 

遺産分割では、特別受益(民法903条)や寄与分(民法904条の2)といった法定相続分の修正要素を考慮しなければならない場合があります。
遺産分割の進め方が分からない、遺産分割でどのような主張ができるのか知りたいという方はオールワン法律会計事務所の弁護士までご相談ください。
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