離婚・親権問題

  1. 母親は必ず親権者になれますか?
  2. 面会交流は必ず行う必要がありますか?
  3. 面会交流を実施しないことを理由に養育費を支払わずに済みますか?

子の親権者を取り決める際の判断基準は?面会交流の実施条件は?面会交流に応じないことができるのか?などについて弁護士が分かりやすく解説します。

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親権とは

親権とは、未成年の子を養育監護し、その財産を管理し、子を代理して法律行為をする権利・義務のことです。
父母は婚姻期間中、親権は共同で行使します。
(民法818条3項)

しかし、未成年者の子がいる夫婦が離婚をする場合は、父母いずれか一方を親権者とする必要があります
協議離婚においても、親権者を決めなければ離婚届は受理されません。
(戸籍法77条)

離婚で父母いずれが親権者となるのか争いとなった場合

離婚に際して父母いずれが親権者となるのか、争いになることがあります。
父母が真に親権者になりたいと希望する場合のほか、他の離婚条件を自分に有利に進めるため、あるいは養育費の支払いを避けようとして親権が争われるケースもあります。

離婚に際して父母が親権を争うとどうなるのでしょうか。

親権者の指定は、第一に父母の協議において、協議が調わない場合は調停において、調停が不成立となった場合は家庭裁判所に離婚訴訟を提起して裁判で子の親権者を定めることになります。

親権者決定の判断基準

過去の裁判例では、父母いずれが親権者の適格性を有するかについて、次のような判断基準が示されています。

《父母側の事情》
監護に対する意欲と能力、健康状態や経済状態、居住環境や教育環境
《子側の事情》
現状の環境への適応、年齢・性別、兄弟姉妹の関係、心身の発達

具体的な判断基準としては、①監護の実績と継続性、が重視されるといわれています。

すわなち、子に対する虐待などがある等のケースを除いて、現に子を養育・監護している親が優先されることになるというものです。
一方で、同居親に暴力などを用いて子を奪取して監護を始めた場合は、同居親の子への虐待といった事情がない限り有利な事情とはなり得ません。

次に、②母親優先、といわれるものがあります。
特に子が幼少であればあるほど、この母親優先の傾向は強くなります。

したがって、親権者を決める時には、特に①監護の実績と継続性、②母親優先の原則が重要な判断基準になるといわれています。

このほかにも、
親が仕事に行っている時などに祖父母等、親族の子の監護に対する協力が得られるか
一方親を親権者とした場合に他方親と面会交流がスムーズに行えるのか
などが実務では判断基準とされています。

また、子の希望については、子が15歳以上の場合、親権者の指定の裁判をするときはその子の陳述を聴かなければならないと規定されています。
(人事訴訟法32条4項)

実務では小学生高学年くらいから子の希望を聴取することが行われています。

なお、両親の状況や希望、子の状況等については、家庭裁判所の調査官が家庭裁判所や自宅訪問をして関係者と面談の上調査し、書面で裁判所に報告することとなっています。

親権者の決定と家庭裁判所調査官の報告

離婚に際して夫婦間で親権者の指定について争いがある場合、裁判官は家庭裁判所調査官に対して事実の調査(家事事件手続法58条1項)を命じることがあります。

家庭裁判所調査官は事実の調査が命じられると、夫婦や子、さらには夫婦の実家の家族等の関係者と面談をして、いずれが親権者としてふさわしいのか、報告がなされます。

これまでの経験からいうと、教育学や心理学の専門家である家庭裁判所調査官から提出される報告は、親権者の決定において裁判官にかなり重視される傾向があるといえます。

もっとも、家庭裁判所調査官の調査において、相手方当事者が親権者にふさわしいとの結論が出されたとしても諦めることはありません。

主張書面等で調査当時から事情が変わった等の適切な反論を行うことで、改めて家庭裁判所調査官の調査を促し、再度の調査で前回と異なる結論が出されることもあります。

この場合、家庭裁判所調査官が何を重視して結論を導き出したのかを理解した上で反論を組み立てることがポイントとなります。

親権者と監護権者の分離

親権とは、未成年の子を養育するため、子を監護教育し、子の財産を管理すること等を内容とする親の権利義務の総称です。

民法819条は、
「父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない」
と規定しています。

一方で、

父母双方が親権者となることに固執して話し合いがつかない場合
父母の一方が子の身上監護には適しているが、その他財産管理等には適していない場合

こうした場合には親権と、未成年の子を保護監督して教育を受けさせる権利義務の総称である監護権との分離の是非が問題となります。

そもそも親権と監護権の分離ができるのでしょうか?

この点については、民法は819条とは別に、766条で、

「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める」

と規定することから、親権と監護権の分離自体は可能であるといわれています。

監護権と親権を分離した場合、監護権者は、子の身上監護をする権利、教育権、居所指定権、懲戒権等を有することになります。

他方で、監護権を持たない親権者は、子の財産を管理する権利、子の財産について子を代表する権利、15歳未満の子の養子縁組や氏の変更等の身分行為についての代理権を有することになります。

そうすると、監護権を取得した母が、離婚後に婚姻前の姓に復氏し、子の氏を自分の氏と同じにしようと思っても、親権を取得した父が協力をしないと子の氏の変更ができないといった事態が生じることになります。

親権と監護権は民法上分離することができても、安易に分離をすると思わぬ事態が生じます
したがって、親権と監護権の分離は、こうした不利益が生じてもなお両者を分離する強い必要性がある場合に限って検討すべきです。

離婚後の親権者の変更と親権喪失の審判

親権者の変更

離婚後、親権者が子を虐待していることが判明したり、あるいは再婚して子を顧みないようになった場合、親権者の変更を検討することになります。

親権者を変更するには、家庭裁判所に親権者の変更調停を申立てます。
親権者の変更調停の申立ては、父母以外の子の親族も行うことができます。

家庭裁判所では、主として家庭裁判所調査官が、親権者の変更を必要とする事情、これまでの子の生育状況、双方の家庭環境や経済力、親権者の意向等を調査し、子の利益や福祉のために親権者を変更する必要があるのかを検討します。
調査の際には子の意向も聴取します。

調停手続ではこうした調査結果を踏まえて親権者変更が話し合われますが、話合いが付かない場合は、手続は自動的に審判に移行します。
最終的には家庭裁判所が親権者変更の要否を判断し、必要であれば職権で親権者を変更します。

親権喪失の審判

父又は母による虐待又は悪意の遺棄があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権喪失の審判をすることができる、とされています(民法834条)。
また、児童相談所の所長についても、親権者の親権行使が著しく不適当と判断するときには親権喪失の審判を申立てることができます(児童福祉法33条の7)。

家庭裁判所の審判により親権の喪失が確定し、親権者がいなくなった場合、他方の親が生存していても、その親に子の親権が当然に移るわけではありません。
この場合、子の親族や児童相談所長などの申立てに基づき、子については未成年後見が開始され、家庭裁判所は未成年後見人を選任します。

面会交流とは

面会交流とは、離婚後、あるいは別居中に子を養育・監護していない親(非監護親)が子と面会等を行うことです。

面会交流の実施方法等については、まず父母が話合い、話し合いができないと家庭裁判所の調停や審判手続きを利用して面会交流に関する取り決めを行うことになります。

面会交流の決め方

面会交流を実施する際には次のようなことを決めておきます。

など

面会交流調停

監護親と非監護親の間で面会交流に関する合意ができない場合や、話し合いができない場合は、家庭裁判所に調停又は審判の申立てをして,面会交流に関する取り決めを求めることができます。

調停手続を利用する場合には,子の監護に関する処分(面会交流)調停事件として申立てをします。

面会交流実施に関する家庭裁判所調査官の調査

面会交流事件では、面会交流を求める非監護親と、その要求を受ける監護親で面会交流に対する認識が異なることがあります。
こうした場合に家庭裁判所調査官による調査等が行われます。

非監護親に対する意向調査

非監護親に対して次の事項が調査されます。

  1. 子どもと同居していた時期の親子関係
  2. 離別後の親子関係
  3. 養育費の分担状況
  4. 面会交流を求める目的
  5. イメージしている面会交流の方法
  6. 監護親の心情についての洞察
  7. 面会交流が円滑に実施できない場合の心構え
  8. 将来の親子関係の予測

特に4~8については突っ込んだ質問がなされることが多いといわれています。

監護親に対する意向調査

  1. 子どもの現在の生活状況
  2. 監護親との親子関係
  3. 非監護親との従前の親子関係
  4. 監護親が期待する非監護親と子どもの関係
  5. 監護親からみた子どもの意向
  6. 面会交流への協力の意向
  7. 将来の親子関係の予測

このうち4~6については丁寧に聞き取りが行われるといわれています。

面会交流を拒否することができるか

現在の家庭裁判所の一般的な運用は、面会交流原則実施、となっています。

しかし、面会交流原則実施の根拠としてあげられる、民法の規定が面会交流を親の権利として位置付けているとの主張については、最高裁判所の判例で具体的な権利でないことが確定されています。

次に、心理学や精神医学その他の人間科学において面会交流が子の利益になるとの主張についても、明確な学問的根拠が示されていません。

具体的には次のような場合に面会交流を拒否できるといわれています。

  1. 子を連れ去ったりする可能性がある場合
  2. 子を虐待する可能性がある場合
  3. 子が面会交流を拒否している場合
  4. 非監護親の言動により子に悪影響を与える可能性がある場合
  5. 非監護親から監護親に対してDVが行われる可能性がある場合

面会交流の約束が守られない場合の対処方法

離婚調停で面会交流の取り決めがなされた場合も、その後、実際に面会交流が行われないことがあります。
また、養育費の不払いを理由に子の監護親が面会交流を停止してしまうことがあります。

こうした場合、面会交流を行うためにどのような方法があるのでしょうか。

履行勧告

調停で定められた内容が実現しない場合、権利者(非監護親)が家庭裁判所に申し出ることによって、家庭裁判所が義務者(監護親)に履行を勧告することができます

家庭裁判所は、権利者の申出により、調停事項や審判で定められた義務の履行状況を調査し、履行されていない場合は、義務者に履行を勧告します。

履行状況の調査は主として家庭裁判所調査官が行います。
申出は書面や口頭でもでき、費用は不要です

間接強制

家庭裁判所が履行勧告を行っても義務者が面会交流に応じない場合、間接強制によって履行を促すことが考えられます。

間接強制とは、裁判所が、義務者に対して定められた義務を一定時期間までに履行することを命令し、命令に従わない場合は金銭の支払いを命じる制度です。

間接強制を行うためには、義務者の義務内容が特定されている必要があります。
義務内容が特定されていないと、裁判所がその履行を命じることができないためです。

したがって、相手方が面会交流に応じないことが心配される場合は、面会交流の内容を具体的に取り決めておく必要があります。

離婚相手が子を連れ去った場合の対応

子の引渡しの家事審判申立

子の引渡し請求は、子の監護に関する処分として家庭裁判所に家事審判の申立ができます。
(家事事件手続法別表2の3)

審判を申立てるのは子の住所地を管轄する家庭裁判所です。
(家事事件手続法150条4号)
子の引渡し請求は、家事調停によっても行うことができますが、子を連れ去った相手と円満な話し合いをすることは困難であることから、審判を申立てることが一般的です。

子の引渡しに関する審判をする場合、申立てが不適法であるとき又は申立てに理由がないことが明らかなときを除き、当事者の陳述を聴かなければならない、とされています(家事事件手続法68条1項)。
また、子が15歳以上の場合は、子の陳述も聞かなればならないとされています(同法152条2項)。
さらには、子が15歳未満の場合も、家庭裁判所調査官による調査その他の適切な方法により、子の意思を把握するように努め、審判をするに当たり、子の年齢及び発達の程度に応じて、その意思を考慮しなければならない、とされています(同法65条)。

審判前の保全処分の申立

離婚相手が外国人で、そのまま放置すると子を国外に連れ出す可能性がある等、子に差し迫った危険がある場合で、現状を放置したのでは審判による解決が困難となる事情がある場合、併せて、子の引渡しを命ずる審判前の保全処分申立をすることもできます。
(家事事件手続法157条1項3号)

連れ去られた子に関する監護者の指定

子を連れて出て行った一方の親から、実力で子を連れ去った他方の親や、面会交流時に引き渡された子を返さない親については、裁判所は監護者の指定の際に厳しい判断を下すことが少なくありません。
子の連れ去りという実力行使(「自力救済」といいます。)を是認すれば、結局子を連れ去ったもの勝ちとなってしまい、自力救済を裁判所が後押しすることになってしまうからです。

事例1
母が子を連れて別居したところ、父から祖父母に子を会わせたいと強く懇願されたため子を引渡したところ、翌日以降父は子を引渡しを拒み、母と会わせなかった事案がありました。
母が離婚調停のほか、監護者の指定と子の引渡しを求める調停を申立てたところ、裁判所は、母の監護権を侵害した違法状態を継続している父が、現在の安定を主張することは許されないとして、監護者として母が相当であると判断しました。
(札幌家裁苫小牧支審平成17年3月17日)
事例2
母が子を連れて別居したところ、父が円満調停のほか、子の監護権者の指定及び審判前の保全処分を申立てました。
しかし父は通園バスを待っていた子を祖父母と共に強引に車に乗せて連れ去り、以後母と子を会わせなかった事案がありました。
母が子の監護者指定の審判と審判前の保全処分を申立てました。
裁判所は決定の中で「調停委員等からの事前の警告に反して周到な計画の下におこなれた極めて違法性の高い行為と言わざるを得ず、この実力行為により事件本人に強い衝撃を与え、同人の心に傷をもたらしたものであることは推認するにかたくない」、「監護者を父と定めることは、明らかな違法行為をあたかも追認することになる」と監護者を父と定めた原審を取消し、監護者を母とする決定をしました。
(東京高決平成17年6月28日)

子の引渡しの強制執行

家庭裁判所で子の引渡しを命ずる審判や保全処分が出ても相手が従わない場合は、民事執行法による直接強制を検討することになります。

具体的には、執行官と一緒に相手のところに行って強制的に子を連れてくることになります。
子の引渡しに直接強制が認めれるか否かは、子の年齢が重視され、意思能力が備わる小学校低学年程度の子であれば過去の直接強制を認めた複数の事例があります。

過去の裁判例では、7歳9か月の子に対する強制執行は違法ではないと判断されています。

なお子の連れ戻しにかかる直接強制では、子が自由意思で執行に反対したり、相手が子を抱えて離さないなどした場合は、執行不能として処理されることになります。

離婚する当事者同士の問題よりも、子どもの親権問題は、子どもに対する愛情や思いから、妥協点を見いだせず、双方が徹底的に争うケースも少なくありません。
オールワン法律会計事務所では、そのような父親、母親どちらとも譲れない親権の問題の解決に向けて真摯に取り組みます。お子様の将来を左右するかもしれない、親権や養育費の問題だからこそ、オールワン法律会計事務所の弁護士へご相談ください。

あなたと大切なお子様のために力を尽くします

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