離婚・親権問題

  1. 離婚するにはどのような手続が必要ですか?
  2. 相手が離婚に合意しない場合どうすればいいですか?
  3. 裁判で離婚するにはどのような理由が必要ですか?

協議で離婚をするときの注意点、相手が離婚に応じない場合の対応などについてオールワン法律会計事務所の弁護士が分かりやすく解説します。

離婚についての
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離婚手続 
④裁判離婚

離婚訴訟とは

離婚調停はあくまで当事者間の話し合いのため、離婚について合意できない場合があります。
離婚調停が不成立になった場合、それでも離婚したいのであれば、家庭裁判所に離婚訴訟を提起することになります。

なお、調停前置主義といって、調停を経ないでいきなり離婚訴訟を提起することは原則としてできません。

離婚訴訟の管轄

管轄とはその事件をどの裁判所が担当するかという問題です。

離婚訴訟については、
「人事に関する訴えは、当該訴えに係る身分関係の当事者が普通裁判籍を有する地」です。
(人事訴訟法4条1項)

人の普通裁判籍は「住所」により決まるため(民事訴訟法4条2項)、原告又は被告の住所地にある家庭裁判所が管轄となります。
一方、調停を行った家庭裁判所は、離婚訴訟の管轄がない場合でも、特に必要があると認めるときは、申立て又は職権で、調停から引き続いて自ら審理及び裁判をすることができます(自庁処理)。
(人事訴訟法6条)

法律上の離婚原因

法律上の離婚原因には次の5つがあります。

民法770条1項
1号 配偶者に不貞な行為があったとき
2号 配偶者から悪意で遺棄されたとき
3号 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
4号 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
令和6年5月17日、民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)により削除。
5号 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

① 配偶者に不貞な行為があったとき

同条の不貞行為とは、配偶者のある者が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を持つことをいいます。
したがって、夫が強姦をした場合、妻が売春をした場合についても不貞行為にあたるといわれています。
他方、同性愛については、本条項ではなく、⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由があるときに該当するのかにおいて判断されています。

もっとも、1度でも配偶者以外の者と性交渉を持つと裁判上の離婚が認められるのか、についてはケースバイケースで判断されています。

過去の裁判例では、夫が妻以外の女性と2か月にわたり性的交渉を持ったケースで、期間が短く一時的な気の迷いであるとして本条項での離婚は認めなかったものがあります。
(名古屋地判昭和26年6月27日)

上記事案では、最終的に夫の妻に対する態度等が「その他婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるとして、離婚自体は認められました。
さらには、上記裁判例は昭和26年のものであり、現在同様の事案で、裁判所が同じ判断をするのかは疑問です。

なお実際の訴訟では、不貞行為の立証が困難なこともあり、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」についても同時に主張されることが一般的です。

② 悪意の遺棄

相手方配偶者から悪意で遺棄された場合、そうした事情は法定の離婚原因に該当します。
悪意の遺棄は、夫婦間の同居、協力及び扶助義務に反する行為にあたるため、裁判上の離婚原因とされています。

民法752条(同居、協力及び扶養の義務)
「夫婦は同居し、互いに協力し、扶助しなければならない」
したがって、「遺棄」とは夫婦共同生活を行わないことを指すことになります。

「悪意」とは、夫婦共同生活を行わないことを積極的に意図し、またはこれを容認する意思を意味します。
なお、法律用語で「悪意」とは、悪感情を持っていることではなく、知っていることを意味します。

具体的には、

こうした事情が「悪意の遺棄」と判断されます。

他方で、

こうした事情は、やむを得ないもの、一時的なものとしては[悪意の遺棄]には該当しないと判断されています。
もっとも、一時的に冷却期間をおくための別居については、相当長期間に及ぶなどの事情がある場合は[悪意の遺棄]にあたり得ます。

実務では、単に期間の長短だけではなく、夫婦関係が既に破綻しているのか、改めて同居をして円満な婚姻関係が復活できるのか等の要素で判断することが一般的です。

③ 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき

3年以上の生死不明とは、最後に生存を確認してから3年以上生死不明の状態が継続していることを指します。
したがって、所在不明である場合も、電話や手紙で連絡がある場合は生死不明にあたりません。

④ 強度の精神病

令和6年5月17日、民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)により削除。

参考までに同号に関する過去の解釈を記載しています。

「精神病」とは、統合失調症、双極性障害(躁うつ病)、偏執病(パラノイア)等を指します。
アルコール依存症、不安障害(パニック障害、恐怖症、強迫性障害、外傷後ストレス障害(PTSD)等)は含まれません。
認知症については、精神障害を伴うものであっても、精神病とは別に分類されています。

次に「強度の」については、夫婦の協力義務を果たせない程度に精神障害がある場合を指します。

過去の判例では、

  1. 妻が強度の精神病にかかり回復の見込みがない
  2. 妻の実家が夫の支出をあてにしなければ療養費に事欠くような資産状態ではない
  3. 他方、夫は、妻のため十分な療養費を支出できる程に生活に余裕がないにもかかわらず、過去の療養費については、妻の後見人である父との間で分割支払の示談をしてこれに従って全部支払を完了し、将来の療養費についても可能な範囲の支払をなす意思のあることを裁判所の試みた和解において表明し、夫婦間の子をその出生当時から引き続き養育している

以上の事情が認められる事案において770条1項4号による離婚を認めています。
(最判昭和45年11月24日民集24巻12号1943頁)

上記事例は精神病が軽快して退院できても、通常の社会人、主婦として日常生活ができる程度まで回復できる見込みがない場合に770条1項4号による離婚を認めたものです。

他方で、精神病で度々入院していても、その都度日常生活に支障がない程度に回復している場合に同号による離婚を否定した裁判例もあります。
(東京高判昭和47年1月28日判タ276号318頁)

最高裁が同号による離婚を認めた事例では、精神病からの回復状況のみならず、離婚を求める配偶者が相手方配偶者のその後の生活についてもできうる限り配慮しています。

この点について、別の判例では、
「民法は単に夫婦の一方が不治の精神病にかかった一事をもつて直ちに離婚の訴訟を理由ありとするものと解すべきでなく、たとえかかる場合においても、諸般の事情を考慮し、病者の今後の療養、生活等についてできるかぎりの具体的方途を講じ、ある程度において、前途に、その方途の見込のついた上でなければ、ただちに婚姻関係を廃絶することは不相当と認めて、離婚の請求は許さない法意であると解すべきである。」
と判示して、離婚後に相手方配偶者の療養や監護に十分な保障がないと離婚を認めないとしています。
(最判昭和33年7月25日民集12巻12号1823頁)

したがって同号による離婚請求が認められるか否かは、

が基準になると考えられます。

⑤ その他婚姻を継続しがたい重大な事由

[婚姻を継続し難い重大な事由]とは、婚姻関係が破綻し、共同生活の回復の見込みがない場合を指します。

具体的には、婚姻中の両当事者の行為や態度、婚姻継続意思の有無、子どもの有無、双方の年齢、職業、収入、資産等、一切の事情が総合的に考慮されます。

これまで判例で「婚姻を継続し難い重大な事由」としてあげられたものには、

などがあります。

もっとも、こうした請求については、通常人であれば社会通念に照らして客観的に離婚請求が正当化されるといった事情が必要であるといわれています。

調停前置主義と付調停

家庭裁判所における夫婦関係調整調停は当事者間(申立人と相手方)における任意的な紛争解決手段です。

したがって、相手方が調停に出頭しない場合はもちろん、出頭しても申立人と相手方の意見が一致しなければ、やがて調停を取下げたり、あるいは不成立となって手続が終了します。
他方離婚訴訟は、原告の訴えによって始まり、最終的には判決によって結論が出されます。

このように調停と離婚訴訟は異なる手続とされていますが、両者は調停前置主義と付調停(職権調停)によって関連付けられています。

家事事件手続法257条1項は
「第244の規定(人事に関する訴訟事件その他家庭に関する事件)により調停を行うことができる事件について訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に家事調停の申立てをしなければならない。」
と規定し、同条2項は、
「前項の事件について家事調停の申立てをすることなく訴えを提起した場合には、裁判所は、職権で、事件を家事調停に付さなければならない。ただし、裁判所が事件を調停に付することが相当でないと認めるときは、この限りでない。」
と規定しています。

したがって「人事に関する訴訟事件その他家庭に関する事件」については、申立人はまず家庭裁判所に家事調停を申立てる必要があります。

付調停(職権調停)

家事事件手続法274条1項は、
「第244条の規定により調停を行うことができる事件(人事に関する訴訟事件その他家庭に関する事件)についての訴訟又は家事審判事件が係属している場合には、裁判所は、当事者(本案について被告又は相手方の陳述がされる前にあっては、原告又は申立人に限る。)の意見を聴いて、いつでも、職権で、事件を家事調停に付することができる。」
と規定しています。

家事事件手続法257条2項の規定は、調停前置に反していきなり訴訟が提起された場合に、裁判所が職権で事件を家事調停に付する規定です。

一方、同法274条1項は、既に調停を経ていても改めて調停に付すことが適当な事件については、裁判所は当事者の意見を聞いた上でいつでも職権で家事調停に付することができるというものです。

このように調停と離婚訴訟は別個の手続ですが、調停前置と付調停という制度によって関連付けられています。

配偶者が行方不明の場合の離婚訴訟

配偶者の居所が住民票上の住所地にある場合

配偶者が行方不明の場合、まず配偶者の住民票を調べます。
市区町村役場で世帯全員の住民票を取得します。

配偶者の住民票が自宅から異動している場合、配偶者の本籍地がある市区町村役場に戸籍の附票※を取得して配偶者の住民票上の住所地を確認します。


本籍地の市町村において戸籍の原本と一緒に保管している書類で、その戸籍が作られてから(又は入籍してから)現在に至るまで(又はその戸籍から除籍されるまで)の住所が記録されています。)を取得します。

住民票上の住所地から配偶者の居所が判明すれば、当該居所を管轄する家庭裁判所に離婚調停を申立てることができます。

配偶者の居所が住民票上の住所にない場合(公示送達)

住民票上の住所に配偶者が居住していない場合(家出等の際に住民票を動かしていない場合)、配偶者の親族や勤め先等の関係者に連絡を取って配偶者の所在を調査します。
上記調査の内容については、後に訴訟を提起する際に必要となるため報告書にまとめておきます。

夫婦いずれかの住所地を管轄する家庭裁判所に離婚訴訟を提起し、他の必要書類と一緒に上記配偶者の所在を調査した報告書を提出します。
本来訴訟を行うには(審理を開始するには)訴状等を被告に送達する必要があります。

しかし被告の所在が不明等の場合には「公示送達」が行われます。
公示送達とは、被告の所在が不明等の場合に、裁判所が訴状等の送達すべき書類を保管して何時でも送達を受ける者に交付する旨を裁判所の掲示板に掲示するものです。

公示送達が行われる要件は「当事者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れない場合」等となります(民事訴訟法110条1項等)。
掲示を開始してから2週間が経過すると送達の効力が生じることになります(民事訴訟法112条)。

離婚訴訟における欠席裁判

俗に欠席裁判とは、当事者の一方が裁判に欠席した場合に、裁判所が出席した他方の主張を内容とする判決を下すことをいいます。
しかし、人事訴訟である離婚訴訟では、職権探知主義が採用されており、裁判所は原告が提出した証拠を取り調べ、原告に対する本人尋問が行われることが少なくありません。

その結果、裁判官が原告の主張に理由があると判断した場合に離婚を認容する判決が出されます。
もっとも配偶者が長期間行方不明の場合は、行方不明であることそれ自体が裁判上の離婚原因である「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)に該当すると判断され、離婚を認容する判決が下されることが多いと思われます。

離婚手続には以上のようなものがありますが、どちらに離婚原因があるのか、また、どの離婚原因に当たるのかを、判断するのが難しい場合もあるでしょう。
離婚で悩まれている方に対して、現状で離婚が可能かどうかや、離婚に向けてこれから必要な準備について弁護士が相談をお受けします。
もちろん、離婚したい気持ちや、離婚の理由があるからといって、実際に離婚すべきかどうかは、離婚後の生活のことや、お子さまのこと等……さまざまなことを考えて決断する必要がありますので、具体的な事情をお聞きし、場合によっては離婚しないほうがよいというアドバイスをすることもあります。

自分の場合はどうなるのかな?
とお悩みの方は、
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