事業承継自社株の承継・M&A

  1. 事業承継で自社株の株価対策がなぜ必要になるのですか?
  2. 自社株式はどのように評価するのですか?
  3. 自社株式の株価を下げる対策にはどのようなものがありますか?

オールワン法律会計事務所の弁護士・税理士が、自社株式の評価方法、自社株式の株価対策などについて分かりやすく解説します。

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株価対策の必要性

中小企業の 事業承継を所有権の移転の側面から見た場合、自社株式の承継と捉えることができます。

自社株式の承継手段として、譲渡・贈与・相続いずれを用いた場合も、それぞれ譲渡所得税・贈与税・相続税といった税コストが生じます。

譲渡所得税の場合、税務上の時価と当該自社株式の取得価額(一般的には自社株式の額面)との差額が生じた場合に(株式譲渡益)、当該譲渡益に対して20.315%(復興特別所得税含む)が課せられます。

相続税・贈与税の場合は自社株式の時価そのものが課税の対象となり、最高税率が55%に及びます。

株式の取得価額(額面)が一定である以上、自社株式の評価額が高くなれば税コストが増加し、逆に時価を低くできると税コストを軽減できます。

また、自社株式の移転コストは、
[自社株式の評価額]×[自社株式の数]
と考えられため、自社株式の[評価]を下げる対策と併せて、自社株式の[量]を減らす対策も検討します。

自社株式の評価方法

企業オーナーの親族等の同族株主が自社株式を取得する場合

原則的評価方式が用いられます。

原則的評価方式では[純資産価額方式]、[類似業種比準価額方式]または2つの折衷方式により評価します。

[純資産価額方式]

会社の資産額から負債額を控除した純資産価額を自社株式の価値とする方法です。

[類似業種比準価額方式]

類似する事業を営む上場会社の株価に、配当・利益・純資産の3要素を比準して自社株式を評価する方法です。

少数株主が自社株式を取得する場合

配当金額を一定の利率(10%)で還元した価額を自社株式の評価とする[配当還元方式]と用いる例外的評価方式で評価します。

原則的評価方式による自社株式の評価

会社の規模※ 評価方式
大会社 類似業種比準価額 又は 純資産価額
中会社の大 類似業種比準価額×0.9+純資産価額×0.1 又は純資産価額
中会社の中 類似業種比準価額×0.75+純資産価額×0.25 又は純資産価額
中会社の小 類似業種比準価額×0.6+純資産価額×0.4 又は純資産価額
小会社 類似業種比準価額×0.5+純資産価額×0.5 又は純資産価額

※会社の規模の判定表は国税庁のホームページで確認できます。

[類似業種比準価額]

類似業種比準価額方式で自社株式を評価するときに用いる要素は[配当]、[利益]、[純資産]の3要素です。

[純資産価額]

純資産価額方式で自社株式を評価するときに用いる要素は、会社の資産から負債を控除した[純資産]です。

したがって、自社株式の評価額を抑えるためには、[配当]、[利益]、[純資産]
に対する対策を検討します。

自社株式の[評価]を下げる対策

企業オーナーに対する退職金の支給

企業オーナーの退職時に退職金を支給します。

適正な金額の退職金の支給は損金として処理できるため、退職金を支給した事業年度の利益が減少します。
また退職金の支給により純資産額も減少します。

一方で、退職金の支給は企業オーナーにとっても有利です。
退職金を一時金で受取る場合の税金は、所得税・住民税とも次の算式を用いて行います。

([退職金]-[退職所得控除]※ )×1/2 =[退職所得]

勤続年数20年以下: 40万円 × 勤続年数
勤続年数20年超: 800万円 +(70万円×(勤続年数―20年))

退職所得の特徴は、

  1. 退職所得控除を受けることができる
  2. 1/2課税である
  3. 他の所得と分離されている

など、税制面で非常に有利です。

[注意点]
退職金の額が過大だったり、企業オーナーが退職金を受領した後も従来と変わらない業務を行っている場合は、退職金が損金にならない可能性があります。

不動産の購入

会社が不動産を購入した場合、取得後3年間は取得価額でその不動産を評価する必要がありますが、3年を経過すると不動産を相続税評価額で評価することができます。

土地の相続税評価額は路線価を用いるため、実勢価格に近い公示価格の80%で評価できます。

建物の相続税評価額は固定資産税評価額を用いるため、新築の場合は請負工事代金の50~60%で評価できます。

したがって、会社の手持資金で不動産を購入すると、会社の純資産を圧縮する高価が期待できます。

オペレーティングリースの活用

オペレーティングリースの仕組みは次のとおりです。

  1. リース会社等が、法人から出資を受け、また金融機関から資金を借入れて特別目的会社(SPC)を設立します。
  2. 特別目的会社はその資金で航空機などリース物件を買入れ、その資産を借り手(レッシ―)にリースします。
  3. 特別目的会社は、リース料を出資者に分配します。

オペレーティングリースが自社株式の株価対策になるのは、会社が受け取るリース料は定額である一方、リース物件の償却は定率法を用い、かつリース契約におけるリース期間が耐用年数を上回るように設計されているため、リース期間の初期は必ず投資損益は赤字となり、投資家に損失が分配されることになるためです。

[注意点]

  • リース期間が長期になるほど様々なリスクが生じるため、リース期間はできるだけ短期のものを選ぶ方が有利です。
  • 外貨建取引の場合、リース物件はおおよそ半年前に購入していることが多いので、その時点での為替相場を確認しておく必要があります。
  • リース先が健全な企業かどうかについても確認しておく必要があります。

含み損のある不動産を処分する

含み損のある不動産がある場合、その不動産を処分して損出しをします。

その不動産が事業継続に必要な場合、関連会社等に売却をしたのち、リースバックを受けて当該不動産を使用します。

[注意点]

  • グループ法人税制の適用を受ける場合、100%グループ内法人間での一定の資産移転により生じる譲渡損益は、その時点では計上されず、①その資産をグループ外に移転したとき、②さらに他のグループ内法人に移転したときに計上されることになります。
  • 同族会社を利用した契約等により、その株主等である被相続人の相続人の相続税を不当に減少させる結果となると認められる場合には、税務署長は、その契約等を否認して課税価格を計算することができます。

相続税法64条1項

「同族会社等の行為又は計算で、これを容認した場合においてはその株主若しくはその社員又はその親族その他これらの者と政令で定める特別の関係がある者の相続税又は贈与税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、税務署長は、相続税又は贈与税についての更正又は決定に際し、その行為又は計算にかかわらず、その認めるところにより、課税価格を計算することができる」

投資育成会社による出資

投資育成会社とは、「中小企業投資育成株式会社法」に基づき、中小企業の自己資本の充実、健全な成長発展を図るために中小企業に対する投資育成を目的として設立された会社です。

投資育成会社の業務には、株式等の引受けを行う「投資業務」と、株式公開支援や経営相談等を行う「育成業務」があります。

増資を行い投資育成会社に株式を引き受けてもらう場合、その引受価額は相続税の原則的評価方式による評価額より低くなります。

その結果、自社株式全体の評価額を低くすることができます。

[注意点]

  • 投資育成会社の投資先は原則として資本金3億円以下の企業に限定されています。
  • 投資育成会社に対して「増資」を行うため、増資後に企業オーナーの持株比率が変わることになります。

自社株式の[量]を減らす対策

従業員持株会の活用

従業員の福利厚生を目的とした従業員持株会を設立します。

企業オーナーから従業員持株会への譲渡の際、自社株式の評価は配当還元方式を用いることができるので、企業オーナーの保有する自社株式数を減らすことができます。

[従業員持株会を活用するメリット]

  1. 企業オーナーの相続財産としての自社株式数を減らすことができます。
  2. 配当をすることで従業員のモチベーションの維持・向上を図ることができます。
  3. 従業員が退社する際に持株会の株式を譲渡する規約を定めておくことで従業員持株会に安定株主としての役割が期待できます。

[注意点]

  • 会社の経営に影響がでないよう、従業員持株会が保有する株式は無議決権・配当優先株式等の種類株式にするか、従業員持株会を民法上の組合にして従業員が直接の株主にならないようにしておきます。
  • 従業員が退社する時の自社株式の買取り価格や算定方法を明確にしておきます。

相続時精算課税を活用した後継者への自社株の生前贈与

相続時精算課税とは、贈与財産の価額の合計額から、特別控除額(2,500万円)を控除した後の金額に、一律20%の税率を乗じて贈与税を計算するというものです。

相続時精算課税を利用した贈与財産の価額は、贈与者の相続時に相続財産に加算して相続税を計算します。

相続時精算課税制度を利用すると、自社株式を後継者に贈与した際の後継者の贈与税の負担を抑えることができます。

[適用対象者]
贈与者:贈与をした年の1月1日において60歳以上の父母又は祖父母
受贈者:贈与を受けた年の1月1日において20歳以上の者のうち、贈与者の直系卑属(子や孫)である推定相続人又は孫

[注意点]

  • 相続時精算課税制度を選択すると、その後、暦年課税(控除額:年110万円)に変更することはできなくなります。
  • 贈与後に自社株式の評価額が下がった場合でも、[相続時]に相続財産に加算される自社株式の評価額は[贈与時]の評価額になります。

事業承継を計画するにあたり、様々な思惑や問題が発生します。弁護士法人オールワン法律会計事務所は、税理士の資格も持つ弁護士が専門知識を駆使し、計画をサポートします

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