事業承継自社株の承継・M&A

  1. 自社株式を売買で移転する場合のメリット・デメリットは何ですか?
  2. 自社株式を贈与で移転する場合のメリット・デメリットは何ですか?
  3. 自社株式を相続で移転する場合のメリット・デメリットは何ですか?

自社株式を移転する方法には売買、贈与、相続があります。それぞれのメリット・デメリットについてオールワン法律会計事務所の弁護士・税理士が解説します。

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売買

自社株式を後継者又は後継者が株主となっている法人が買い取る方法です。

お金を出して株式を買うわけですから、買手はオーナーの親族に限られず、第三者も含まれます。

課税関係は、売手に譲渡所得税が課税されます。

非上場株式の譲渡所得税率は、譲渡益(取得費、譲渡費用を控除できます)に対して、所得税(復興特別所得税を含む)15.315%、地方税5%、合計20.315%となり、申告分離課税です。

[メリット]

  • 相続税・贈与税の最高税率が55%であることと比較すると譲渡所得課税の税負担の方が一般的に軽くなります。
  • 相続税・贈与税を負担するのは後継者である一方、譲渡所得税は企業オーナーが負担することになります。
  • 複数の相続人がいる場合、後継者に自社株式を生前贈与すると、他の相続人から特別受益の主張がなされる可能性がありますが、売買ではそうした心配がいりません。

[デメリット]

  • 自社株式の評価額が高い場合は、後継者が多額の買取り資金を準備する必要があります。
  • 親族間での売買の場合、売買価格が著しく低い場合は贈与とみなされて贈与税が課税されます。

生前贈与

贈与には、暦年課税と、相続時精算課税があります。

暦年課税

毎年1月1日から12月31日(暦年)を1つの期間として、その間に受贈者が贈与を受けた財産の価額に応じて贈与税が課税されるものです。

暦年贈与では、受贈者1人が1年に受ける贈与額が110万円(基礎控除)を超えると課税され、基礎控除後の課税価額が4500万円を超えると贈与税の税率が55%となります(20歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた場合)。

したがって、毎年の税負担を勘案しながら、計画的に長期間にわたる贈与に適した贈与制度です。

相続時精算課税

60歳以上の親又は祖父母から20歳以上の子又は20歳以上の孫に対して贈与する場合、予め所轄の税務署に相続時精算課税制度の選択届出書を提出することで利用できる制度です。

贈与時に贈与財産に対する贈与税を納め、その贈与者が亡くなった時にその贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めたその贈与税相当額を控除することにより贈与税・相続税を通じた納税を行うものです。

特別控除額(2,500万円)を超える金額の税率は一律20%で、後継者に自社株を贈与しておけば、その後株価が上昇した場合であっても、贈与時の価額で課税されるに過ぎません。
いったん相続時精算課税を選択すると、上で述べた暦年課税の適用を受けることができなくなります。

[メリット]

  • 企業オーナーが保有する自社株式数が減少します。
  • 相続時精算課税制度を利用すると、贈与後の自社株式の評価が上昇しても、相続時に加算されるのは贈与時の株価にできます。

[デメリット]

  • 後継者以外の相続人がいる場合、企業オーナーの相続時に後継者に対して特別受益の主張がなされる可能性があります。
  • 暦年贈与では、基礎控除後の課税価額が4,500万円を超えると贈与税の税率が55%となります(20歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた場合)。

相続

自社株式は企業オーナーの個人資産の一部です。
したがって、後継者が企業オーナーの子弟の場合、相続時に自社株式を相続することができます。

もっとも、企業オーナーに複数の相続人がいる場合、遺言がないと自社株式を含む相続財産は相続人間の協議で分割されるため、後継者が自社株式を取得できる保証はありません。

そこで、相続時に自社株式を後継者に残したいと考えている場合や、これから贈与や売買で自社株式を移転したいと考えている企業オーナーは、まずは遺言作成しておく必要があります。

オーナーが遺言を作成していれば、法定相続人以外の後継者に対しても遺贈というかたちで自社株式を移転させることができます。

[メリット]

  • 相続人が複数いる場合も、企業オーナーが遺言を作成しておけば自社株式を後継者に集約することができます。
  • 企業オーナーが遺言を作成すれば、相続人以外の第三者に自社株式を遺贈することもできます。

[デメリット]

  • 企業オーナーの遺言がない場合、自社株式が相続人間で分散する可能性があります。
    相続に合わせて自社株式の株価対策を行うのは困難です。
  • 相続税の最高税率は55%になります。

後継者が自社株式を直接保有する場合と間接保有する場合の比較

自社株を後継者に移転する場合、後継者が直接自社株式を保有する場合と、持株会社等を通じて間接的に自社株式を保有する場合の違いについて検討します。

直接保有 間接保有
安定度 相続財産として分散する可能性 相続財産から分離される
株価上昇時 株価上昇分が100%相続財産増加に反映される 株価上昇分の37%を控除して株価を評価できる
受取配当 原則総合課税 (保有割合)
100%:100%益金不算入
1/3超~100%未満:100%益金不算入
5%超~1/3以下:50%益金不算入
5%以下:20%益金不算入
自社株式買取資金の調達 後継者が直接調達する必要あり 持株会社が調達する
買取資金を借入れた場合の利息 収入金額から利息を控除して配当所得を計算 原則、損金

事業承継を計画するにあたり、様々な思惑や問題が発生します。弁護士法人オールワン法律会計事務所は、税理士の資格も持つ弁護士が専門知識を駆使し、計画をサポートします

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