事業承継自社株の承継・M&A

オールワンの弁護士&税理士が教える! 事業承継の基礎知識

  1. 次男に会社を継がせたい。後々相続でもめないようにするにはどうすればいい?
  2. 親族以外に会社を譲渡したい。どうしたらいいですか?
  3. 会社の問題点を解決してから、事業承継したい!
  4. 後継者が育たない。会社の行く末が心配。
  5. 相続税対策も含めて、息子に事業を任していきたい。

事業承継をスムーズに進めるには、計画的な準備が重要です。会社の現状把握をしっかり行い、具体的な対策を実行しながら、後継者へ承継を目指します。
オールワン法律会計事務所の弁護士が、交通事故の事業承継の基礎知識について解説します。

事業承継についての
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事業承継対策の必要性


後継者がいる場合

後継者が身内にいることは、非常に幸運です。

中小企業オーナーの子弟は、一般的に高学歴で一流企業に勤務していることが多く、既に安定的な生活を送っていることがあります。

こうした場合、中小企業オーナーが事業の承継を打診しても、会社に魅力がないと、子は安定的な生活を捨ててまで会社を継ぐと言ってくれません。

また子本人に事業を承継するつもりがあっても、子の配偶者や家族が反対するケースもあります。

中小企業における事業の承継では、積極的な財産の承継だけではなく、場合によっては負債や個人保証といった消極的な財産の承継も必要となります。

会社と社長はまさに一心同体、会社が倒産すると、社長はすべての財産を失うため、相当な覚悟がないと実の子といえども会社を継いでくれません。

幸いに子が会社を継ぐと言ってくれていても、事業の承継には準備が必要です。

事業のかじ取りに必要な知識や経験、会社内外の関係者からの信頼といったものも一朝一夕に得られるものではありません。

さらには、会社の経営権は最終的には自社株の保有割合で決することになるため、後継者は自社株を承継する必要がありますが、この準備も大変です。

そもそも、自社株が親族間で分散している場合、現オーナーが自社株をまとめる必要があります。

後継者への自社株式の移転についても、事業内容が良好で内部留保金が積み上がっている会社の場合、税務上の自社株の評価が高くなるため、自社株移転時の税金(贈与税・相続税、譲渡所得税等)が高額となります。

したがって、自社株式の評価を下げるための対策が必要となる場合があります。

また、企業オーナーの財産中、自社株という財産が大きな割合を占めるため、企業オーナーに複数の法定相続人がいる場合、特定の後継者に自社株を贈与・相続させてしまうと、他の法定相続人から不満が出る可能性があります。

このように、事業の承継は後継者がいる場合でも事前に十分な準備を行う必要があります。


親族内に後継者がいない場合

後継者がいない場合、企業オーナーが採り得る選択肢は、廃業、または第三者への事業の売却です。

廃業する場合、債務超過となっていると、私的整理、特別清算手続、破産手続が必要となるため、事前の検討が必要です。

第三者に売却する場合は、第三者がその会社を買いたいと思えるような魅力ある会社にしておく必要があります。
財務体質を強化したり、簿外債務の整理などが必要となったりします。

したがって、この場合にも十分な準備と対策が必要となります。

このように事業承継には様々な難関が待ち構えていますので、事前の準備が重要となります。

「事業承継を考えている」という方

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事業承継の失敗事例

事業承継対策を行わなかったため、その後の経営や事業運営が上手くいかなかったケースも多くあります。

失敗事例1
後継者と古参幹部の対立

企業オーナーの子弟である後継者は、大学卒業後、数年間別の企業に就職した後、20歳代半ばで役員として親の会社に入社。

入社当初から、「上から目線」での社内における振る舞いに古参幹部を中心に反発が広がる。
一方で、「ジュニア」「若社長」と持ち上げる幹部もいて、やがて社内は後継者に反発するグループと、後継者に追従するグループに二分化される。

オーナーが亡くなり、後継者が社長に就任すると、反後継者派と後継者派の対立が次第に激化。
後継者が、反後継者派の役員を解任したことで、解任された反後継者派の役員が弁護士を介して地位の保全を会社に求める事態に発展。

最後には後継者と反後継者派グループとは表面的に和解したものの、依然として両者にはわだかまりが残ったままになっている。

失敗事例2
カリスマオーナー交代後の業績不振

オーナー個人の人柄、信用、人気に依存して順調に成長していた企業で、オーナーが引退し、子が後継者として事業を引き継ぐことに。
後継者は、先代オーナーの経営方針を踏襲して事業を盛り立てるべく努力するが、取引先の反応は芳しくなく、承継後5期以上にわたり売上、営業利益いずれも大きく減少。

この間、社内の人材流失も続き、会社にかつての勢いはなくなっている。

失敗事例3
後継者指名を巡る争い

オーナーの弟2人がそれぞれ代表権のない専務取締役と常務取締役、子が平取締役の企業で、オーナーが後継者を指名しないまま急逝。
順序どおり代表取締役と専務取締役への昇格を主張する叔父2人と、親の後を継いで代表取締役への昇格を主張する甥が対立。

話し合いの結果、暫定的に叔父が代表取締役に就任し、その後、甥が代表取締役に就任する合意がなされた。
しかし、代表取締役となった叔父には子がおり、また自社株式も親族間に分散している。

叔父が将来約束を守って代表取締役の地位を譲ってくれるのか心配になった甥は、弁護士に相談して将来の自らの地位を確保する方途を模索している。

失敗事例4
相続による自社株の分散

妻、長男、長女、次女がいる企業オーナーが、遺言を作成せずに急逝。
後継者の長男に対して自社株の承継が終了していなかったため、相続財産の大半を自社株と事業資産が占めることに。

長男が自社株と事業資産の相続を主張したのに対して、長女と次女が法定相続分での遺産分割を主張したため、遺産分割協議が難航。

長男は、長女と次女が相続する自社株の議決権を排除するため、無議決権株式の発行を提案するが、長女と次女は見返りに配当優先株とすることを要求。

顧問税理士の強い勧めもあり、相続税の納期限であるオーナーの死亡後10か月までに遺産分割協議を成立させたが、結局、長男が自社株と事業資産の大半を相続する見返りに、長女と次女に対して代償金を分割で支払うことに。

さらに、長男は、自社株式を金庫株として納税資金を確保したため、会社の財務内容は悪化。

今後長男は、長女と次女に対する長期間の代償金支払いと、会社財務の立て直しを迫られることに。

失敗事例5
特別受益の主張による
遺産分割協議の難航

妻に先立たれ、長女、長男、次女がいる企業オーナーが、遺言を作成せずに死亡。
遺産分割協議がはじまったが、オーナーである父親から自社株の生前贈与を受けていた後継者の長男は、父親が亡くなった時の相続財産を法定相続分で分割することを主張。

これに対して、長女と次女は、長男が父親から生前に贈与を受けた自社株が特別受益にあたるとして、相続財産に自社株を持ち戻したものを遺産分割の対象とすることを要求。

双方が主張を譲らないため、弁護士に委任して家庭裁判所で遺産分割調停を行うことに。

失敗事例6
会社に対する貸付金

会社の資金繰りが厳しい局面を迎えるたびに自己資金を会社に貸し付けていたオーナーが死亡。

オーナーの妻は、相続税の計算にあたり、財務内容が悪い会社に対する貸付金は額面より低い評価になると考えていたが、税理士に相談すると、原則として額面で評価されてしまうと説明を受ける。

相続財産の大半は自社株と貸付金のため、オーナーの妻は、相続権を放棄し、会社も廃業(特別清算)することに。

「計画的に事業承継を実行したい」という方

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事業承継先の検討

親族に対する承継

日本では、オーナーが自らの子弟に会社を継がせる親族内承継が一般的です。

子弟に事業を承継する場合、自社株等の承継手段として、売買に加え、贈与と相続が活用できることが特徴です。
子弟に事業を承継する場合、早い時期に後継者が決まっていると、後継者教育を早期にかつ計画的に行うことができます。
日本では子が親の会社を継ぐ事例が多いため、会社内外の理解を得ることが容易です。

事業承継で問題となる金融機関に対する社長の個人保証についても、子が引き継ぐ方が容易な場合も多いようです。
他方で、子弟に甘えが生じやすくなり、後継者に万一の事態が生じると他の後継者が育っていないため事業に支障が生じるといった弊害もあります。

第三者に対する承継

従業員が会社を買い取るEBO(Employee Buy-Out)、会社の経営陣が会社を買い取るMBO(Management Buy-Out)、第三者が会社を買い取るM&A(Mergers and Acquisitions)が代表的です。

いずれの場合も第三者が買い取るわけですから、そもそも買手となる第三者を探してくるところから話が始まります。
首尾よく買手が見つかっても、売手と買手が納得できる会社の値段を算定する必要がありますので、通常は法務、税務、労務といった多面的側面からデューデリジェンス(Due diligence)といわれる調査を行います。

一方、買手は、これらと並行して資金調達を行う必要があります。
こうした一連の業務は、通常アドバイザー等の関与が必要となります。

また、アドバイザリーフィーも高額にのぼることがありますので、まずは各業務に精通した弁護士、会計士、税理士、取引銀行に相談することが有用です。

「うちの場合の問題点を知りたい」という方

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事業承継先の検討

次のような事例で、中小企業オーナーが遺言を作成している場合、作成していない場合でどのような違いが出るのかを検討してみます。

【社長の家族】 妻、長男(後継者)、長女
【社長の資産】 全資産 40,000千円(うち30,000千円が自社株式)

社長が遺言を作成していない場合

社長が遺言を作成せずに相続が発生すると、原則として法定相続分を基準に遺産分割が行われます。

この場合、各人の相続分は、妻が20,000千円(40,000千円×1/2)、長男・長女が10,000千円ずつ(40,000千円×1/4)となります。

長男が相続する財産を全て自社株式としてた場合も、取得できるのは全体の3分の1です(10,000千円/30,000千円)

母や長女が、長男に対して全ての自社株式の相続を認めてくれる可能性はありますが、あくまで可能性です。

また、長女が、長男に対して代償金の支払いを要求することも考えられます。

社長が遺言を作成していた場合

社長が遺言を作成していた場合、遺留分として妻に10,000千円(40,000千円×1/2×1/2)、長男・長女に各5,000千円(40,000千円×1/2×1/4)を遺せば残りの20,000千円相当の財産は遺言で自由に処分できます。

したがって、社長がこの自由に処分できる財産を長男に相続させることにすると、長男は遺留分としての5,000千円に加え、社長が遺言で遺してくれた20,000千円、合計25,000千円の財産を相続することができます。

長男に自社株を相続させる場合、長男は自社株の約83%を相続することができます。

納税資金は、相続した自社株の一部を金庫株とすることで調達することも可能です。

このように、オーナーが遺言を作成することで、後継者以外の相続人の相続分を遺留分に変えることが可能となるのです。

「どこから手をつければいいのかわからない」という方

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事業承継における
株価対策の必要性

株価対策の必要性

中小企業の 事業承継を所有権の移転の側面から見た場合、自社株式の承継と捉えることができます。

自社株式の承継手段として、譲渡・贈与・相続いずれを用いた場合も、それぞれ譲渡所得税・贈与税・相続税といった税コストが生じます。

この税コストは、例えば譲渡所得税の場合、税務上の時価と当該自社株式の取得価額(一般的には自社株式の額面)との差額が生じた場合に(株式譲渡益)、当該譲渡益に対して20.315%(復興特別所得税含む)が課せられます。

株式の取得価額(額面)が一定である以上、自社株式の税務上の時価が高くなれば譲渡所得税の負担が増加し、逆に時価を低くできると負担を軽減できます。

このように自社株式の株価対策は、自社株式の移転コストに直結するのです。

株価対策の留意点

自社株式の税務上の時価は、当該株式を取得するのが同族株主の場合、対象会社の規模を判定し、類似業種比準価額・純資産価額を算定して求めます。

このうち、類似業種比準価額は、課税時期の1株あたりの「配当金額」「利益金額」「純資産価額(簿価)」で算定されます。

したがって、「利益」「純資産」を小さくすることができると一般的にいって自社株式の税務上の時価を引下げることができます。

しかし、単に株価対策のためだけに「利益」「純資産」を圧縮することは、社業を傾けてしまう恐れがあります。

したがって、自社株式の株価対策は、こうした様々な問題にも配慮をして実行する必要があります。

「事業承継について具体的に相談したい」という方

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事業承継における
自社株式の移転手段

自社株の移転手段は、移転先に応じて、売買、贈与及び相続が単独で、あるいは組み合わせて選択されます。
いずれの移転手段も一長一短がありますので慎重な検討が必要です。

売買

自社株式を後継者又は後継者が株主となっている法人が買い取る方法です。

お金を出して株式を買うわけですから、買手はオーナーの親族に限られず、第三者も含まれます。
課税関係は、売手に譲渡所得税が課税されます。

非上場株式の譲渡所得税率は、譲渡益(取得費、譲渡費用を控除できます)に対して、所得税(復興特別所得税を含む)15.315%、地方税5%、合計20.315%となり、申告分離課税です。

オーナーの後継者が自社株式を買い取るには、買取資金を準備する必要があります。自社株の評価が高額となっている場合には、買取資金が多額となります。

他方で、贈与で自社株式を取得した場合と異なり、他の法定相続人から特別受益の主張がなされるリスクを低減することができます。

また、自社株式を贈与した場合、贈与税は受贈者すなわち後継者に課税されますが、譲渡所得税はオーナーに課税されますので、後継者の資金負担を軽減することが可能です。

贈与

贈与には、暦年課税と、相続時精算課税があります。

暦年課税とは、毎年1月1日から12月31日(暦年)を1つの期間として、その間に受贈者が贈与を受けた財産の価額に応じて贈与税が課税されるものです。

暦年贈与では、受贈者1人が1年に受ける贈与額が110万円(基礎控除)を超えると課税され、基礎控除後の課税価額が4500万円を超えると贈与税の税率が55%となります(20歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた場合)。

したがって、毎年の税負担を勘案しながら、計画的に長期間にわたる贈与に適した贈与制度です。

他方、相続時精算課税とは、60歳以上の親又は祖父母から20歳以上の子又は20歳以上の孫に対して贈与する場合、予め所轄の税務署に相続時精算課税制度の選択届出書を提出することで利用できる制度です。

贈与時に贈与財産に対する贈与税を納め、その贈与者が亡くなった時にその贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めたその贈与税相当額を控除することにより贈与税・相続税を通じた納税を行うものです。

特別控除額(2,500万円)を超える金額の税率は一律20%で、後継者に自社株を贈与しておけば、その後株価が上昇した場合であっても、贈与時の価額で課税されるに過ぎません。

もっとも、いったん相続時精算課税を選択すると、上で述べた暦年課税の適用を受けることができなくなります。

したがって、相続時精算課税を選択するか否かは、税理士等の専門家と相談の上で慎重に決定すべきです。

暦年課税、相続時精算課税いずれもオーナーが対価なく自社株式を移転するわけですから、移転先は通常、後継者である親族(オーナーの子など)に限定されます。

この場合、オーナーに後継者以外の推定相続人がいる場合、オーナーに相続が発生すると、自社株式の生前贈与が原因で相続人間のトラブルが発生することがあります。

すなわち、自社株の生前贈与を受けていない後継者以外の相続人から、後継者に対して、自社株式の生前贈与が特別受益にあたるとの主張がなされる可能性があるため、こうしたトラブルを未然に防ぐ対策も必要となります。

相続

後継者がオーナーの親族の場合、オーナーの相続時に相続財産の一部として自社株式を取得することも可能です。

オーナーが遺言を作成していれば、法定相続人以外の後継者に対しても遺贈というかたちで自社株式を移転させることができます。

自社株式は上で述べたとおり、売買や贈与で後継者に移転することが一般的です。

もっとも、贈与による自社株式移転を考えている場合であっても、オーナーが遺言を作成することは必要です。

なぜなら、暦年課税による自社株の移転は、税負担の問題から通常複数年に分けて行われます。

贈与の途中でオーナーに相続が発生すると、未贈与の自社株式を後継者が取得できる保障はありません。

そこで、オーナーが自社株を後継者に相続させる旨の遺言を作成した後、贈与に着すすることをお勧めします。

「M&Aも視野にいれたい」
という方

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事業承継における種類株式の活用

一般的に「株式」と呼ばれているものは「普通株式」。普通株式とは別に「権利の内容が異なる株式」を発行することができ、これを「種類株式」といいます。
種類株式の特長である権利の内容を有効に活用し、事業承継をスムーズにしたり、条件を付け加えたりすることが可能です。

無議決権株式

種類株式を活用することで事業承継をスムーズに行うことも可能です。

複数の法定相続人がいる場合、後継者以外の相続人の遺留分の問題から議決権付の自社株式を全て後継者に移転することが困難となる場合があります。

また、後継者が自社株を買い取る場合でも、資金調達の問題からすべての自社株を買い取ることが困難な事態も生じます。

こうした場合、従来発行していた議決権付株式に加えて、議決権を排除した無議決権株式を発行することも問題解決の一助となります。

議決権株式は後継者が取得するようにして、無議決権株式は後継者以外の法定相続人が取得するようにしておけば、後継者は発行済み株式の全てを取得しなくても経営権を確保することが可能となります。

もちろん、議決権が排除された株式を取得するだけでは後継者以外の法定相続人から不満が出るおそれがあります。

そうした場合に、当該無議決権株式を配当優先株式にしておけば、いわば「アメとムチ」で当該法定相続人の理解が得られやすくなります。

拒否権付株式

オーナーが事業承継後も会社の経営に一定程度影響力を残そうとする場合に有効な種類株式もあります。

自社株の大半を後継者に贈与しても、オーナーが拒否権付株式(いわゆる「黄金株」)を保有していれば、拒否権の対象となる事項を決議するにあたり必ずオーナーの同意が必要となります。

例えば、会社の予算決定や役員の選解任を拒否権の対象とすることで、当該事項にオーナーの意向を反映させることができます。

種類株式の発行は株主総会決議(特別決議が必要となります)と登記手続きにより行うことができます。

取得条項付株式

取得条項付株式とは、株式発行会社が株主の同意なしに一定の事由が発生したことを条件として、株主から強制的に株式を取得することができる株式のことです(会社法第107条第2項第3号、会社法第108条第1項第6号)。

この種類株式は、会社がイニシアティブを取って当該株式の存続期間を決定することができます。

例えば、オーナーに複数の後継者候補がいる場合、後継者が決定してから自社株を移転しようとすると、思わぬコストが発生します。

そこで、後継者候補に取得条項付株式をとりあえず承継しておき、後継者が決定した段階で、後継者以外の者が有する取得条項付株式を取得し、その対価として金銭や無議決権株式を交付すれば後継者に経営権を集中することができます。

つぎに、オーナーが拒否権付株式を有する場合、オーナーに相続が発生すると拒否権付株式を第三者が取得するリスクがでてきます。

また、オーナーが拒否権付株式を有したままの状態で判断能力が低下して適切な意思決定ができない状況になると、事業が渋滞します。

こうした事態を避けるため、拒否権付株式にオーナーの死亡や判断能力低下(具体的には成年後見の開始や任意後見の開始)を条件とする取得条項を付けることで解決が可能です。

全部取得条項付株式

全部取得条項付株式とは、株主総会の決議(特別決議)を要件として、会社がその全部を取得できる株式をいいます(会社法第108条第1項第7号)。

全部取得条項付株式は、少数株主を整理(スクイーズアウト)する際に有用です。

種類株(A株とします)を発行できるよう株主総会決議を行った上で、再度株主総会の特別決議により既発行の株式を全て全部取得条項付株式にします。

その上で再再度株主総会の特別決議により全部取得条項付株式の取得を行います。その際に少数株主に割り当てるA株が端株となるように調整すれば、金銭の支払いを条件として少数株主から株式を取得することができます。

この場合の留意事項は、端株に金銭を交付する場合、当該金銭に端株が生じたことを理由として交付された場合は、税務上端株に相当する株式を交付したと扱われるため、少数株主には譲渡所得課税のみが課されます。

他方、金銭の交付が実質的な取得の対価であると判断されると、株主全員に対してみなし配当課税及び譲渡所得課税が課されるため注意が必要です。

「事業承継をスムーズに行いたい」
という方

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事業承継における
納税資金確保の必要性

相続税の納期限は、相続開始の翌日から原則として10か月です。

相続税の納税は、原則として現金一括納付となります。

延納(分割払)や物納は、誰でも簡単にできるものではありません。

相続財産に納税資金として活用できる現預金、換金の容易な有価証券等がなければ、納税義務者である相続人や受遺者は、納税資金の問題で頭を悩ませることになります。

また、相続財産に納税資金として活用できる預金や有価証券等が十分にある場合も、遺産分割協議が長期化すると、被相続人名義となっている預金を引き出すことや、有価証券を売却することが困難となります。

事業承継の場面では、自社株の承継が完了していないオーナーに相続が発生すると、相続財産の大半が自社株で占められることもあり、後継者を含む納税義務者は、たちまち納税資金に窮することになります。

金庫株による相続税納税資金の確保

相続時には、自社株を金庫株としても一定の要件を満たすとみなし配当課税を回避できるため、納税資金対策として金庫株の活用が考えられます。

もっとも、これは当該法人に財源(キャッシュ)が確保されていることが条件であり、会社法上も財源規制があります。

したがって金庫株による納税資金の調達は、こうした諸条件をクリアーする必要があります。

相続税の物納

現金に代えて自社株式を物納することも可能です。

ただし、自社株式を物納するには様々な準備や対策が必要となります。

多くの中小企業では、第三者が株主になることを防ぐため、自社株式の譲渡には代表取締役等の承諾が必要といった譲渡制限が付されているのが一般的です。

自社株式を物納する場合、こうした譲渡制限を一時的に解除する必要があります。

譲渡制限を附さない自社株式を発行する場合、当該会社は会社法上の公開会社となるため取締役会や監査役の設置が原則義務付けられます。

また、物納申請財産の第1位は国債・地方債・不動産・船舶、第2位が株式・社債等となっているため、不動産を保有する場合などは原則として不動産を先に物納することになります。

銀行借入

銀行借り入れで相続税納税資金を調達することも可能です。

もっともこの方法による納税資金の調達は、金融機関の与信判断次第です。

2018年度税制改正における
事業承継税制の改正点

  1. 猶予対象株式数
  2. 【改正前】
    贈与税の納税猶予 発行済議決権株式総数の3分の2まで
    相続税の納税猶予 80%
    【改正後】
    贈与税・相続税とも納税猶予割合100%
  3. 対象者
  4. 【改正前】
    1人の先代経営者から1人の後継者への自社株式の贈与・相続のみが対象
    【改正後】
    贈与者は先代経営者に限定されない
    2~3人の後継者への贈与・相続も対象
    (上位2~3名で議決権総数の10%以上を有する者に限る)
  5. 雇用維持要件
  6. 【改正前】
    相続税・贈与税の申告期限から5年間の雇用平均が80%を下回ると猶予打切り
    【改正後】
    雇用要件を満たさない場合も、経営状態の悪化等、雇用要件を満たせない理由を書面で都道府県に提出すれば納税猶予は継続
  7. 経営環境悪化時の減免措置
  8. 【改正前】
    経営環境悪化等により会社を売却、廃業等をした場合、その時点で株価が下落していても事業承継税制承認時の株価を基に計算された納税猶予額を納税する必要あり
    【改正後】
    経過後にやむなく①株式の譲渡、②合併による消滅、③会社の解散をした場合、経営状態の悪化など、経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合は納税猶予額が一部免除される

事業承継を計画するにあたり、様々な思惑や問題が発生します。弁護士法人オールワン法律会計事務所は、税理士の資格も持つ弁護士が専門知識を駆使し、計画をサポートします

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