開業医・医療法人の法律問題

病医院の廃業には十分な事前準備が必要です。

また、廃業自体、個人の開業医と医療法人とではその手続が大きく異なります。

そこで、病医院の廃業手続について、オールワン法律会計事務所がその概要を説明します。

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病医院の閉院・医療法人の解散

開業医の高齢化

高度成長期の1961年(昭和36年)には、日本国民全てが「公的医療保険」に加入する国民皆保険が整えられたこともあり、医師不足が深刻化した結果、医学部の定員増の措置がとられました。

さらに1973年(昭和48年)には第2次田中角栄内閣の元で閣議決定された「経済社会基本計画」に一県一医大構想が盛り込まれ、当時医学部のなかった15の県に医科大学(医学部)が設置されることになりました。

この構想に基づき、1973年に旭川医科大学、山形大学医学部、愛媛大学医学部、筑波大学医学専門学群が設置され、1979年(昭和54年)の琉球大学医学部まで続きました。

その後、1982年(昭和57年)の閣議決定により、医学部の入学定員を7,625人まで抑制されることとなりましたが、この間に医学部を卒業した医師の多くが現在高齢になっていると考えられます。

したがって、今後20年程度にわたって高齢となった医師の病医院の廃業や医業承継が増加すると見込まれます。

個人開設の病医院の閉院

管理者である医師の体調不良や相続による病医院の廃院は次のような手続が必要となります。

保健所

診療所廃止届 廃止後10日以内 医療法9条1項
エックス線廃止届 10日以内

地方厚生局

保健医療機関廃止届 遅滞なく

各都道府県

麻薬施用者業務廃止届 15日以内

福祉事務所

生活保護法指定医療機関廃止届 遅滞なく

医師会

退会届 遅滞なく

税務署

個人事業廃止届 遅滞なく

各都道府県税事務所

個人事業廃止届 遅滞なく

医師国民健康保険組合

資格喪失届 遅滞なく

年金事務所

適用事業所全喪届 ・被保険者資格喪失届 5日以内

労働基準監督署

確定保険料申告書 50日以内

なお、病医院の管理者が死亡した場合は、当該病医院は廃止されたものとして扱われるため、緊急の場合を除いて医療行為を行えなくなります。

病医院の廃院ではなく、一時的な休止の場合、10日以内に、都道府県知事に届け出なければならないとされており、休止した病院、診療所又は助産所を再開したときも、同様とされています。

(医療法8条の2第2項)

病医院が休止した後、正当な理由がなく、一年以上業務を再開しないときは、都道府県知事は、病医院の開設の許可を取り消し、又はその開設者に対し、期間を定めて、その閉鎖を命ずることができとされています。

(医療法29条)

医療法人の解散

医療法人の解散事由

医療法における社団たる医療法人の解散事由は次のとおりです。

  1. 定款をもつて定めた解散事由の発生
  2. 目的たる業務の成功の不能
  3. 社員総会の決議
  4. 他の医療法人との合併(合併により当該医療法人が消滅する場合に限る。)
  5. 社員の欠亡
  6. 破産手続開始の決定
  7. 設立認可の取消し

(医療法55条1項)

3社員総会の決議による解散は、定款に別段の定めがある場合を除いて総社員の4分の3以上の賛成が必要となります。

また、2目的たる業務の成功の不能、3社員総会の決議による解散では、医療審議会の審議を経た上で都道府県知事の認可が必要となります。

(医療法55条6項7項)

解散の認可申請

社員総会の決議による医療法人の解散には、医療審議会の審議を経た都道府県知事の認可が必要となります。

実務では、予め都道府県の医務課等の医療法人を所管する部署と事前協議を経た上で申請をすることになります。

大阪府における申請手続きは次のとおりです。

  1. 担当者に事前相談(まずは電話の上、ご来庁ください)
  2. 当課HPから様式をダウンロードの上、申請書類(案)を作成する。
  3. 担当者による申請書類(案)の事前チェック(記載不備等があれば補正をする)

    ↓概ね1から2か月
  4. 事前チェック完了
  5. 押印の上、申請書を提出する。
  6. 大阪府医療審議会に諮問・答申
  7. 大阪府知事の認可(認可書交付)
    認可書の用意ができ次第、担当者から連絡しますので、受取りにお越しください。

    ↓2週間以内
  8. 解散の登記
  9. 清算人の登記(法第56条の6)
  10. 債権者公告(法第56条の8)

    ↓2か月以上
  11. 清算の結了登記(法第56条の11)

大阪府 医療法人の合併・分割・解散と必要な申請・届出

京都府 医療法人の解散認可

 

病医院の廃業は地域医療に大きな影響を与えるため、事前の準備が重要です。また廃業自体も、その多くで担当部署との事前の打ち合わせが必要となる等、煩雑な手続が要求されています。本当に病医院の廃業が必要なのかも含め、お気軽に弁護士法人オールワン法律会計事務所の弁護士までご相談ください。

あなたの強い味方となって
お悩みの問題の解決にあたります。

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