企業法務会社・企業の法律相談・顧問契約の代替え

日々の業務において、労務問題など会社経営者が頭を抱える問題は数多くあります。
いくつかの事例をもとに、オールワン法律会計事務所の弁護士が、会社での労務に関する法律問題について解説します。

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ネット炎上トラブル

ネット上に匿名で誹謗中傷が書き込まれ、その結果として企業価値が著しく毀損するといった事態が生じることがあります。

当該書込みが正当な批評であればともかく、事実に基づかない面白半分の誹謗中傷といった内容である場合、企業としては発信者を特定し、発信者の責任を追及することが考えられます。

発信者情報開示請求を行う要件

特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(プロバイダ責任制限法)4条は、法律に基づいて開示請求するためには次の4つの要件を充足する必要があると規定しています。

  1. 当該書込み等が「特定電気通信による情報の流通」であること
  2. 「権利が侵害されたことが明らか」であること
  3. 「開示を受けるべき正当な理由がある」こと
  4. そして、実質的な要件として

  5. 通信記録(ログ)が残っていること

が、必要となります。

当該書込み等が「特定電気通信による情報の流通」であること

特定電気通信とは、「不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信をいう。」とされています。

(プロバイダ責任制限法2条1号)

インターネット上で誰でもアクセスできるものであることが必要です。

一方で、メールや、企業のホームページ上のお問い合わせフォームから書き込まれた誹謗中傷といったものは「不特定の者」が閲覧することができないため、発信者開示請求の対象とはなりません。

「権利が侵害されたことが明らか」であること

権利が侵害されたことが明らか(権利侵害の明白性)とは、当該書込みによって不法行為(民法709条)が成立するのみならず、違法性阻却事由がないことが必要であるとされています。

具体的には、企業の場合、当該書込み等によってその名誉権や営業権の侵害があったことが必要です。

違法性阻却事由については、名誉棄損の違法性阻却事由を規定する刑法230条の2第1項が

「公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。」

と規定しています。

そこで、発信者情報開示請求をするにあたっては、当該書込み等の内容が、①公共の利害に関する事実にかかわること、②もっぱら公益を図る目的であること、③適時された事実が真実であること、といった要件のいずれかが「ない」ことが必要となります。

「開示を受けるべき正当な理由がある」こと

損害賠償請求権を行使するため、といった「正当な理由」が必要となります。

一方、単なる報復目的などの場合は「正当な理由」が認められません。

通信記録(ログ)が残っていること

ログの保存期間については法律上の決まりがあるわけではありませんが、多くの事業者ではおおよそ3か月程度はログが残されているようです。

逆に言えば、ログは3か月程度しか残されていないため、発信者情報開示請求を行うのであれば、直ちに請求手続きに着手しないと間に合わないことになります。

発信者情報開示の請求相手

われわれがスマホなどでインターネット上の記事等を閲覧するには、

  1. NTT DOCOMO、KDDI、Softbankといったインターネット接続を媒介する事業者であるインターネットサービスプロバイダ(ISP)と契約をしてインターネットに接続できるようにする
  2. 上記ISPを介して、コンテンツプロバイダが提供するインターネット上の記事等にアクセスする

といった流れになることが一般的です。

このうち、ISPは、個々の利用者と利用契約を締結し、料金の支払いを受けた上でサービスを提供しているので、契約者の氏名や住所といった情報を把握しています。

一方、コンテンツプロバイダが把握しているのは、IPにおいてパケットを送受信する機器を判別するための番号である「IPアドレス」と、一定の時刻に当該電子データが存在していたことを証明する「タイムスタンプ」といった接続記録に限られます。

したがって発信者を特定するには、

  1. コンテンツプロバイダに対して問題となる記事等に関する接続記録の開示を求める
  2. 接続記録をもとに、ISPに対して契約者の情報の開示を求める

といった手続が必要となります。

発信者情報開示請求のながれ

上記のとおり、発信者情報開示請求は、コンテンツプロバイダに対するIPアドレス等の接続情報を求める請求と、ISPに対する契約者情報を求める請求が必要となります。

具体的な請求には、テレコムサービス協会が作成した「発信者情報開示請求書」を利用します。

発信者情報開示請求書には実印を押印し、実印であることを明らかにするため、郵送のさいには発行されてから3か月以内の印鑑証明書を添付します。

また、問題となる記事等を明らかにするため、当該記事が閲覧できるURLの表示があるスクリーンショットも添付します。

ISPに対する請求には、コンテンツプロバイダ等から開示されたIPアドレス等の情報を添付します。

請求を受けたISPは、書類に不備がなければ発信者に対して、開示請求に応じるか否か、応じない場合はその理由を回答するように、2週間の期限を定めて意見聴取を行います。

発信者が情報開示に応じない場合、ISPは発信者情報を開示しません。

なお、実務では、ISPは裁判所からの開示命令がない場合、情報開示に応じないため、ISPから発信者情報の開示を受けるためには裁判手続が必要となります。

顧問弁護士がいることで、会社の本来の業務に専念することができます。顧問弁護士について関心のある方は、お気軽に弁護士法人オールワン法律会計事務所にご相談ください。日々の業務での「これはどうなの?」といったふとした疑問にも迅速にお答えいたします。

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