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日々の業務において、労務問題など会社経営者が頭を抱える問題は数多くあります。
いくつかの事例をもとに、オールワン法律会計事務所の弁護士が、会社での労務に関する法律問題について解説します。

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契約の成立時期

契約の成立一般

改正前

改正前の民法では、契約の成立一般について、明文規定が設けられていませんでした。

改正後

改正民法522条1項
契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下、「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。

契約は、契約の申込みと承諾の意思の合致、すなわち合意によって成立することが明文化されました。

契約の成立には「契約の内容を示」すことが求められています。
したがって、具体的な内容を示さずに申込みがなされた場合、それは契約の申込みではなく、申込みの誘引と判断される可能性があります。

隔地者間の契約の成立

改正前

旧民法97条1項(隔地者に対する意思表示)
隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に到達したときからその効力を生ずる。

旧民法526条1項(隔地者間の契約の成立時期)
隔地者間の契約は、承諾の通知を発した時に成立する。

隔地者間の契約の成立については、契約の申込みは、相手方に到達したときに効力が生じ、契約は相手方が承諾の通知を発した時に成立することになっていました(発信主義)。

しかし、相手方の承諾の意思表示が、契約の申込みをした者に到達しない場合については規定がありませんでした。

改正後

申込者が、契約の申込み後に死亡等した場合において、
①申込者が死亡等した場合は申込みは効力を有さない旨の意思表示をしていたか、
②相手方が承諾の通知を発するまでにその事実を知った時は、
申込みは効力を有しないことになりました。

民法526条(申込者の死亡等)
申込者が申込みの通知を発した後に死亡し、意思能力を有しない常況にある者となり、又は行為能力の制限を受けた場合において、申込者がその事実が生じたとすればその申込みは効力を有しない旨の意思を表示していたとき、又はその相手方が承諾の通知を発するまでにその事実が生じたことを知ったときは、その申込みは、その効力を有しない。

改正後は承諾の発信主義の条項が削除されたため、一般原則の改正民法97条により、隔地者間でも到達主義がそのまま適用されます。

したがって、申込者に対する承諾の通知が到達しない場合は、契約は成立しないことになります。

改正民法97条1項(意思表示の効力発生時期等)
意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。

代理

代理行為の瑕疵

改正前

改正前民法101条1項(代理行為の瑕疵)
意思表示の瑕疵が意思の不存在、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は代理人について決するものとする。

主観的な事情について、代理人を基準とすると規定されていましたが、誰の意思表示について規定dされているのかが明確ではありませんでした。

すなわち、代理人から相手方に対する意思表示だけを指すのか、相手方から代理人に対する意思表示が含まれるのか、が不明確でした。

判例では、代理人が相手方に詐欺・強迫をした場合についても、同条項が適用されると判事するものがありました。
(大判明治39年3月31日)

改正後

改正民法101条1項(代理行為の瑕疵)
代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思表示の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。
2項
相手方が代理人に対してした意思表示の効力が意思表示を受けた者がある事情を知っていたこと又は知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。

改正民法101条1項によれば、代理人が相手方に対して行った意思表示の効力に関して、代理人について、詐欺、強迫といった事情の有無を判断するとしています。

同条2項によれば、相手方が代理人に対して行った意思表示の効力については、代理人について判断するとしています。

他方、代理人が相手方に詐欺・脅迫した場合の「相手方の」意思表示の効力については、改正民法101条1項は適用されず、改正民法96条の問題となります。
したがって、上記判例による取扱いが変更されます。

代理人の行為能力

改正前

改正前民法102条
代理人は、行為能力者であることを要しない。

制限行為能力者が代理人としてした行為については、行為能力の制限を理由として取消すことができるのか、規定がありませんでした。
(取消はできないと解されていました。)

他方で、取消ができないとすると、制限行為能力者の法定代理人に、他の制限行為能力者が就任した場合、制限行為能力者である本人の保護が図れない批判されていました。

改正後

改正民法102条
制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。
ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りではない。

制限行為能力者が代理人としてした行為については、行為能力の制限を理由として取消すことができないと明記されました。

他方で、制限行為能力者の法定代理人に、他の制限行為能力者が就任した場合については、例外的に取消ができることになりました。

復代理人を選任した場合における任意代理人の責任

改正前

民法104条(任意代理人による復代理人の選任)
委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。

改正前民法105条1項(復代理人を選任したときの代理人の責任)
代理人は、前条の規定により復代理人を選任したときは、その選任及び監督について、本に対してその責任を負う。

任意代理人が復代理人を選任できるのは、①本人の許諾を得たとき、②やむを得ない事由があるとき
に限定した上で、上記要件を満たした復代理人の行為については、任意代理人は「選任」「監督」についてだけ責任を負う、とされていました。

改正後

改正前民法105条1項が削除されました。

したがって、復代理人を選任した任意代理人の責任については、一般の債務不履行責任によって処理されることになりました。

代理権の濫用

改正前

代理権の濫用とは、代理人が、自己または第三者の利益を図る目的で、代理権の権限内の行為を行うことです。
なお、代理人が、代理権の権限外の行為を行うことは、無権代理の問題となります。

従来、代理権の濫用を直接規律する条文がなかったため、判例は、代理行為の相手方が代理人の意図を知りえた場合には93条但書を類推適用して代理行為を無効とし、本人を保護していました。

民法93条1項(心裡留保)
意思表示は、表意者がその真意でないことを知っていたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。
ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意でないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。

改正後

代理人が権限を乱用した場合、相手方が代理権濫用を知り、又は知ることができたときは、その行為は無権代理行為とみなして、本人が責任を負わないことになりました。

改正民法107条(代理権の濫用)
代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。

また、この場合、本人が無権代理行為を追認でき、また相手方から代理人への責任追及も可能です。

民法113条1項(無権代理)
代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。

改正民法117条1項(無権代理人の責任)
他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。

表見代理

代理権授与の表示による表見代理

改正前

改正前民法では、本人が実際に代理権を与えていないのに代理権を与えたかのような表示をした結果、表示された代理権の範囲の行為が行われた場合の表見代理の規定(改正前民法109条)と、代理人が代理権の範囲外の行為を行った場合の表見代理の規定(改正前民法110条)がありました。

しかし、本人が、実際に代理権を与えていないのに代理権を与えたかのような表示をした結果、第三者が表示された代理権の範囲外の行為を行った場合につき、直接規律した条文はありませんでした。

判例は、こうした場合に改正前民法109条と改正前民法110条を重畳適用して表見代理の成立を認めていました。

改正後

改正民法109条2項
第三者に対して他人に代理権を与えた旨表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。

代理権消滅後の表見代理

「善意」の対象について

改正前

改正前民法112条(代理権消滅後の表見代理)
代理権の消滅は、善意の第三者に対抗することができない。
ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。

代理権消滅を対抗できない第三者の「善意」の対象について明確な規定がありませんでした。

改正後

改正民法112条1項(代理権消滅後の表見代理)
他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後にその代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、代理権の消滅の事実を知らなかった第三者に対してその責任を負う。
ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。

改正民法112条1項では、善意の対象について、過去に代理権が存在したことを知っており、その代理権の消滅を知らなかったことと明記しました。

消滅した代理権の範囲外の行為に対する本人の責任

改正前

改正前民法ではこうした場合に適用される条文がありませんでした。
判例では、改正前民法112条と改正前民法110条を重畳適用して表見代理成立を認めていました。

改正後

改正民法112条2項
他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後に、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。

行為の相手方が、代理人であった者にその行為について代理権があると信ずべき正当な理由がある場合は、本人が責任を負うと規定されました。

無権代理

主張立証責任

改正前

改正前民法117条1項(無権代理人の責任)
他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明することができず、かつ、本人の追認を得ることができなかったときは、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。

本人の追認の有無について主張責任・立証責任を負うのが、代理人として契約した者か、相手方なのか不明確でした。

改正後

改正民法117条1項(無権代理人の責任)
他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。

代理人として契約した者が主張責任・立証責任を負うことが明確になりました。

無権代理人の責任除外

改正前

改正前民法117条2項
前項の規定は、他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき、若しくは過失によって知らなかったとき、又は他人の代理人として契約をし者が行為能力を有しなかったときは、適用しない。

無権代理人自身が無権代理であることを知っていた場合において、相手方が過失により無権代理であることを知らなかった場合に、無権代理人が免責されるのは適当でないとされていました。

改正後

改正民法117条2項
前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。

  1. 他人の代理人として契約をした者が代理権を有していないことを相手方が知っていたとき。
  2. 他人の代理人として契約をした者が代理権を有していないことを相手方が過失によって知らなかったとき。
    ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りではない。

(以下省略)

無権代理人自身が、無権代理であることを知っていた場合は免責されないことが明記されました。

第三者のためにする契約

改正前

改正前民法537条
1項
契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対し直接にその給付を請求する権利を有する。
2項
前項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。

改正前民法538条
前項の規定により第三者の権利が発生した後は、当事者は、これを変更し、又は消滅させることはできない。

  1. 改正前民法では、第三者のためにする契約の成立時点で第三者(受益者)が現存していることや特定していることが必要かどうか、条文上明らかではありませんでした。
  2. 改正前民法では、諾約者(契約当事者中、第三者に対して債務を負担する者)が債務を履行しない場合、要約者(諾約者の他方当事者)が契約を第三者の承諾なく解除できるか明らかではありませんでした。

改正後

改正民法537条
1項
契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求することができる。
2項
前項の契約は、その成立の時に第三者が現に存しない場合又は第三者が特定していない場合であっても、そのためにその効力を妨げられない。

改正民法538条
1項
前条の規定により第三者の権利が発生した後は、当事者は、これを変更し、又は消滅させることができない。
2項
前条の規定により第三者の権利が発生した後に、債務者がその第三者に対する債務を履行しない場合には、同条第1項の契約の相手方は、その第三者の承諾を得なければ、契約を解除することができない。


改正民法では、従来の判例法理を明文化し、第三者のためにする契約の成立のときに、受益者が現存することも特定されていることも必要ないことが明記されました。
(改正民法537条2項)


改正民法では、諾約者が債務を履行しない場合でも、要約者は、第三者の承諾を得なければ契約を解除することができないことが明記されました。
(改正民法538条2項)

連帯債務

改正前

連帯債務成立の要件

複数の債務者がどのような場合に連帯債務を負うのか、要件が規定されていませんでした。

履行の請求

連帯債務者の1人に対する履行の請求は絶対的効力が生じました。

改正前民法434条
連帯債務者の1人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対しても、その効力を生ずる。

免除

連帯債務者の1人に対する免除は、免除した連帯債務者の負担部分において絶対的効力が生じました。

改正前民法437条
連帯債務者の1人に対してした免除は、その連帯債務者の負担部分についてのみ、他の連帯債務者の利益のためにも、その効力を生ずる。

時効の完成

時効が完成した連帯債務者の負担部分について絶対的効力が生じました。

改正前民法439条
連帯債務者の1人のために時効が完成したときは、その連帯債務者の負担部分については、他の連帯債務者も、その義務を免れる。

他の連帯債務者が債権者に対して有する債権による相殺

他の連帯債務者の負担部分について援用ができました。

改正前民法436条
1項
連帯債務者の1人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が総裁を援用した時は、債権は、すべての連帯債務者の利益のために消滅する。
2項
前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分についてのみ他の連帯債務者が相殺を援用することができる。

改正後

連帯債務成立の要件

法令の規定又は当事者の合意により連帯債務が成立することが明記されました。

改正民法436条(連帯債務者に対する履行の請求)
債務の目的がその性質上過分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の1人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行の請求をすることができる。

履行の請求・免除・時効の完成

いずれも相対的効力に変更されました。

改正民法で絶対的効力が生じるのは、更改、相殺、混同に限られることになりました。

改正民法441条(相対的効力の原則)
第438条(更改)、第439条第1項(相殺)及び前条(混同)に規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。

ただし、債権者及び他の連帯債務者の1人が別段の意思表示をしたときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う。

他の連帯債務者が債権者に対して有する債権による相殺

援用はできず、他の連帯債務者の負担部分の限度において履行が拒めるだけになりました。

改正民法439条(連帯債務者の1人による相殺等)
1項
連帯債務者の1人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権はその全ての連帯債務者の利益のために消滅する。
2項
前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。

保証

個人が事業資金等の借入を保証する場合の公正証書の作成

改正民法465条の6第1項(公正証書の作成と保証の効力)
事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前1か月以内に作成された公正証書で保証人委なろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。

公正証書の作成が義務付けられるのは次の2つです。

公正証書作成の適用除外

改正民法465条の9(公正証書の作成と保証の効力に関する規定の適用除外)
前三条の規定(公正証書の作成と保証の効力等)は、保証人になろうとする者が次に掲げる者である保証契約については、適用しない。
1 主たる債務者が法人である場合のその理事、取締役、執行役又はこれらに準ずる者
(→いわゆる「経営者」のこと)
2 主たる債務さやが法人である場合の次に掲げる者
イ 主たる債務者の総株主の議決権の過半数を有する者
ロ 主たる債務者の総株主の議決権の過半数を他の株式会社が有する場合における当該他の株式会社の総株主の議決権の過半を有する者
ハ 主たる債務者の総株主の議決権の過半数を他の株式会社及び当該他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する場合における当該他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する者
ニ 株式会社以外の法人が主たる債務者である場合におけるイ、ロ又はハに掲げる者に準ずる者
(→いわゆる「株主」のこと)
3 主たる債務者と共同して事業を行う者又は主たる債務者が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者
(→「共同経営者」や「配偶者」)
 

保証人に対する情報提供義務

契約締結時

 
改正民法465条の10(契約締結時の情報の提供義務)
主たる債務者は、事業のために負担する債務を主たる債務とする保証又は主たる債務の範囲に事業のために負担する債務が含まれる根保証の委託をするときは、委託を受ける者に対し、次に掲げる事項に関する情報を提供しなければならない。

  1. 財産及び収支の状況
  2. 主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況
  3. 主たる債務の担保として他に提供し又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容

保証人から請求があった時

 
改正民法458条の2(主たる債務の履行状況に関する情報の提供義務)
保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、保証人の請求があったときは、債権者は、保証人に対し、遅滞なく、主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものについての不履行の有無並びにこれらの残額及びそのうち弁済期の到来しているものの額に関する情報を提供しなけれればならない。

主債務者が期限の利益を喪失した時

 
改正民法458条の3(主たる債務者が期限の利益を喪失した場合における情報提供義務)
1項
主たる債務者が期限の利益を有する場合において、その利益を喪失したときは、債権者は、保証人に対し、その利益の喪失を知った時から2カ月以内に、その旨を通知しなければならない。
2項
前項の期限内に同項の通知をしなかったときは、債権者は、保証人に対し、主たる債務者が期限の利益を喪失した時から同項の通知を現にするまでに生じた遅延損害金に係る保証債務の履行を請求することができない。
3項
前2項の規定は、保証人が法人であるときには、適用しない。

根保証契約における極度額の定め

改正前民法においても、貸金等債務の根保証契約では、根保証人が個人の場合、極度額の定めがないと無効でした(改正前民法465条の2)。
改正民法では、貸金等債務に限らず、個人が根保証人となるすべての根保証契約について極度額の定めが必要となります。

改正民法465条の2(個人根保証契約の保証人の責任等)
1項
一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約であって保証人が法人でないものの保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。
2項
個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。

根保証契約における元本確定事由

改正前民法では、貸金等債務の根保証契約に限り、一定の場合に元本が確定することが規定されていました(改正前民法465条の4)。
改正民法では、元本確定事由が個人根保証契約のすべてに適用されることになりました。

改正民法465条の4第1項(個人根保証契約の元本の確定事由)
次に掲げる場合には、個人根保証契約における主たる債務の元本は、確定する。
ただし、第1号に掲げる場合にあっては、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。

  1. 債権者が、保証人の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申立てたとき。
  2. 保証人が破産手続開始の決定をうけたとき。
  3. 主たる債務者又は保証人が死亡したとき。

定型契約

定型約款取引に関する条文の創設

定型約款とは

  1. ある特定の者が、不特定多数を相手方とし、
  2. 取引内容の全部又は一部が画一的であることが双方にとって合理的な取引において、
  3. 取引契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体

(①かつ②の取引を「定型取引」といいます)
(改正民法548条の2第1項)

定型約款の具体例

銀行取引における銀行取引約款、保険契約における保険約款、旅行業における旅行業約款、運送業における標準貨物自動車運送約款などが定型約款の代表です。

一方で、労働契約や不動産賃貸借契約は、同じ契約書のひな型を用いている場合も、個々の労働者や賃借人の個性に着目して締結されるため定型取引にはあたりません。

売買契約などで市販の契約書のひな型を用いた場合についても定型取引にはあたりません。

定型約款の合意

定型取引を行う者が、

  1. 定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき
  2. 定型約款を準備した者が予めその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき

以上の場合には、定型約款の個別の条項を知らない場合であっても、個別の条項についても合意したものとみなされます。
(改正民法548条の2第1項)

定型約款の内容の表示

定型約款の準備者は、定型取引合意の前又は定型取引合意の後相当の期間内に相手方から請求があった場合、遅滞なく相当な方法で定型約款の内容を示す必要があります。

定型約款の準備者が子の請求を拒んだときは定型約款におけるみなし合意の規定(改正民法548条の2第1項)は適用されません。
(改正民法548条の3)

定型約款の変更

定型約款の変更が、

  1. 相手方の一般の利益に適合するとき
  2. 定型約款の変更が契約の目的に反せず合理的な場合

には、相手方の同意なく一方的に約款の内容を変更することができます。
(改正民法548条の4第1項)

定型約款に不当条項が含まれている場合

定型約款のなかに

  1. 相手方の権利を制限し、または相手方の義務を加重する条項であって、
  2. その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして、
  3. 民法1条2項(信義則)の規定に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるもの

がある場合についても、みなし合意の規定は適用されません。
(改正民法548条の2第2項)

定型約款取引

定型約款とは

  1. ある特定の者が、不特定多数を相手方とし、
  2. 取引内容の全部又は一部が画一的であることが双方にとって合理的な取引において、
  3. 取引契約の内容とすることを目的とsちえその特定の者により準備された条項の総体

(①かつ②の取引を「定型取引」といいます)
(改正民法548条の2第1項)

定型約款の具体例

銀行取引における銀行取引約款、保険契約における保険約款、旅行業における旅行業約款、運送業における標準貨物自動車運送約款などが定型約款の代表です。

一方で、労働契約や不動産賃貸借契約は、同じ契約書のひな型を用いている場合も、個々の労働者や賃借人の個性に着目して締結されるため定型取引にはあたりません。

売買契約などで市販の契約書のひな型を用いた場合についても定型取引にはあたりません。

定型約款の合意

定型取引を行う者が、

  1. 定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき
  2. 定型約款を準備した者が予めその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき

以上の場合には、定型約款の個別の条項を知らない場合であっても、個別の条項についても合意したものとみなされます。
(改正民法548条の2第1項)

定型約款の内容の表示

定型約款の準備者は、定型取引合意の前又は定型取引合意の後相当の期間内に相手方から請求があった場合、遅滞なく相当な方法で定型約款の内容を示す必要があります。

定型約款の準備者が子の請求を拒んだときは定型約款におけるみなし合意の規定(改正民法548条の2第1項)は適用されません。
(改正民法548条の3)

定型約款の変更

定型約款の変更が、

  1. 相手方の一般の利益に適合するとき
  2. 定型約款の変更が契約の目的に反せず合理的な場合

には、相手方の同意なく一方的に約款の内容を変更することができます。
(改正民法548条の4第1項)

定型約款に不当条項が含まれている場合

定型約款のなかに

  1. 相手方の権利を制限し、または相手方の義務を加重する条項であって
  2. その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして
  3. 民法1条2項(信義則)の規定に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるもの

がある場合についても、みなし合意の規定は適用されません。
(改正民法548条の2第2項)

債務不履行

債務不履行の判断基準

民法412条の2(履行不能)第1項
債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者は、その債務の履行を請求することができない。

改正により、

  1. 履行不能であるときは、債権者は債務者に対して履行の請求ができないこと
  2. 履行不能か否かは契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして判断されること

が明文化されました。

特定物の引渡しといった債務の内容が比較的明らかな場合にはあまり問題となりませんが、委任契約や請負契約等、個々の契約で債務の内容が異なる場合は、契約においてその債務の内容をできるだけ特定しておく必要があります。

損害賠償請求

債務不履行を理由とする損害賠償請求

改正前民法415条(債務不履行による損害賠償)
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。
債務者の責に帰さない事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。

改正民法415条(債務不履行による損害賠償)1項

債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。
ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

改正前は、債務者の帰責事由について、債権者がその立証責任を負うかのような規定になっていました(判例では、債務者の帰責事由についての立証責任は、債務者が負うとされていました)。

改正により、

  1. 債務者の帰責事由の立証責任は債務者が負うこと
  2. 債務不履行以外の場合も債務者に帰責事由がなければ免責されること
  3. 債務者の帰責事由は契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして判断されること

が明確になりました。

なお、債務不履行とは債務者が債務の本旨に従った履行をしないことをいい、具体的には、①履行遅滞、②履行不能、③不完全履行の態様があります。

損害賠償の範囲

改正前民法416条(損害賠償の範囲)2項
特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

改正民法416条(損害賠償の範囲)2項
特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

改正により、
特別損害の請求では、当事者が現実に予見していたか、ではなく、予見すべきであったか、が問題となること、
が明確となりました。

なお、判例によれば、当事者とは「債務者」を指し、予見の時期は「債務不履行時」となります。

解除

債務不履行が軽微である場合の解除権の制限

改正前民法541条(履行遅滞等による解除権)
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。

改正民法541条(催告による解除)
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。
ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。

改正により、債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは催告解除ができないことが明確となりました。

無催告解除

改正前民法542条(定期行為の履行遅滞による解除権)
契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは、相手方は、前条の催告をすることなく、直ちに解除することができる。

改正民法542条(催告によらない解除)
次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。

  1. 債務の全部の履行が不能であるとき。
  2. 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
  3. 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
  4. 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
  5. 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。

2項
次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の一部の解除をすることができる。

  1. 債務の一部の履行が不能であるとき。
  2. 債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

改正により、従来から判例や解釈によって認められてきた無催告解除ができる場合が、条文上で整理されました。

解除における債務者の帰責事由

改正前民法543条(履行不能による解除権)
履行の全部又は一部が不能となっときは、債権者は、契約の解除をすることができる。
ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りではない。

改正民法543条(債権者の責めに帰すべき事由による場合)
債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、前2条の規定による契約の解除をすることができない。

改正により、債務者に帰責事由がない場合でも、債権者は解除をすることができることになりました。

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