企業法務会社・企業の法律相談・顧問契約の代替え

  1. 問題のある社員がいる
  2. 残業代を請求された
  3. パワハラを訴えられた

日々の業務において、労務問題など会社経営者が頭を抱える問題は数多くあります。
いくつかの事例をもとに、オールワン法律会計事務所の弁護士が、会社での労務に関する法律問題について解説します。

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従業員の採用

従業員採用時の面接における質問

採用面接における質問では、募集業務に関する応募者の適性を判断するための質問は許されると考えられます。
他方で、女性だけに対して結婚・出産予定に関する質問をすることは原則として許されません。

雇用機会均等法第5条
「事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。」

法第5条により原則禁止されるもの(平成18年厚労省告示第614号)
「採用面接に際して、結婚の予定の有無、子供が生まれた場合の継続就労の希望の有無等一定の事項について女性に対してのみ質問をすること」

うつ病等の罹患歴等については、会社にとって適正を判断するために必要な質問である一方、応募者にとって罹患歴は他人に最も知られたくない事項の一つ。

そこで、現在の業務の適性を判断するために必要最低限の情報を収集するため、直近1~2年に限って罹患歴を質問することは許されると考えられます。

選考時に質問や情報収集を避けるべき事項には次のようなものがあります。

(本人に責任のない事項)
〇 本籍・出生地に関すること
〇 家族に関すること(職業・続柄・健康・地位・学歴・収入・資産等)
〇 住宅状況に関すること(間取り・部屋数・住宅の種類・近郊の施設等)
〇 生活環境に関すること(生い立ちなど)
(本来自由であるべき事項)
〇 宗教に関すること
〇 支持政党に関すること
〇 人生観・生活信条に関すること
〇 尊敬する人物に関すること
〇 思想に関すること
〇 労働組合・学生運動など社会運動に関すること
〇 購買新聞・雑誌・愛読書に関すること

厚生労働省「公正な採用選考の基本」より

内定の取消し

会社が採用予定者に内定を出すことによって会社と内定者間に、就労の始期付解約権が留保された労働契約が成立することになります。
このため、会社による自由な内定取消はできなくなります。

解約権が行使できる(内定を取消すことができる)のは内定取消に合理的な理由がある場合に限られます。
具体的には

  1. 就労開始日に学校等を卒業できずに就労ができない。
  2. 就労開始日までの病気やけがにより正常な勤務ができない。
  3. 履歴書に職務能力や適性に関する虚偽の記載がある。
  4. その他、「採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られる」

(最判昭和54年7月20日 大日本印刷事件)

試用期間後の本採用拒否

試用契約とは、試用期間中の勤務状況等により適性を判断し、適性がないとされる場合に本採用を拒否できるという解約権が留保されている労働契約です。
したがって、試用期間経過後は無条件に本採用拒否をすることは許されず、本採用を拒否するには合理的な理由が必要といわれています。

本採用を拒否するためには「客観的に合理的な理由が存在し社会通念上相当」であると認められる必要があります。
(最大判昭和48年12月12日 三菱樹脂事件)
この基準は、内定の取消より厳格な一方、正社員の解雇よりも緩やかな基準であるとされています。

仕事上のミスが多いことを理由に本採用を拒否する場合、ミスの内容及びミスの頻度、指導・注意後の改善の程度などから解約権行使の是非が判断されることになります。
従業員が本採用拒否を不服として争われる場合に備えて、会社は、指導・注意を行ったことを書面等の記録に残しておくことが必要となります。

従業員採用時における労働条件の明示

従業員採用時には労働条件を明示する必要があります。

このうち、絶対的明示事項には次のようなものがあります。

  1. 労働契約の期間・就業場所、従事すべき業務
  2. 始業・就業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、労働者を2組以上に分けて就業させる場合の就業時転換に関する事項
  3. 賃金の決定、計算及び支払方法、賃金の締切及び支払時期、昇給
  4. 退職(解雇事由を含む)、退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払方法、退職手当の支払時期

上記1~4については、従業員に対して書面の交付が必要となります。
(労基法施行規則第5条)

次に、従業員との間で契約の内容とした場合に明示する必要がある相対的明示事項には次のようなものがあります。

労働契約法4条2項には「労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする。」とされています。

パート従業員採用時の労働条件の明示

パート従業員を採用する際には、従業員採用時に明示する労働条件に加え、次の労働条件を明示する必要があります。

  1. 賃金の昇給の有無
  2. 退職手当の有無
  3. 賞与等の有無
  4. 相談窓口

(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律第6条)

同法における「短時間労働者」とは、「一週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の一週間の所定労働時間に比し短い労働者」のことを指します。
(同法第2条)

労働時間・賃金・労働条件

労働時間該当性の判断

従業員が、会社の指揮命令下に置かれている時間が労働時間となり賃金の支払が必要となります。

始業前の朝礼

  1. 業務上の命令により朝礼への参加が強制されている
  2. 参加が強制されていないが、申送り等があり朝礼への参加が業務上必要

と判断される場合は、労働時間に該当することになります。

外部研修への参加

参加が義務付けられている場合は、労働時間に該当します。

外部研修参加のための移動時間

移動時間をどのように過ごすのかは従業員の自由のため、原則として労働時間に該当しません。
「出張中の休日はその日に旅行する等の場合であっても、旅行中における物品の監視等別段の指示がある場合の外は休日労働として取り扱わなくても差し支えない」
(昭和23.3.17基発461号)

従業員への残業命令

従業員に対して残業を命じるためには労働基準法36条に規定する協定(36協定)を締結する必要があります。
具体的には、当該事業所における①過半数労組か、②(過半数労組がない場合は)労働者の過半数を代表する者(労働者の代表者)との間で、書面で締結し、当該書面を労基署に届け出る手続きが必要です。

  1. 時間外労働・休日労働が必要とされる具体的理由
  2. 業務の種類
  3. 労働者の数
  4. 延長する時間・休日

を規定し、有効期間を定める必要があります。
(労働基準法施行規則第16条)

従業員による労働時間の自己申告

会社には従業員の労働時間を適切に管理する義務があります。
会社における労働時間管理における原則的な方法には、

  1. 使用者が、自ら現認することにより確認し、記録する方法
  2. タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し、記録する方法

があります。
(平成13.4.6基発339号)

自己申告制を採用する場合の留意点

従業員による労働時間の自己申告制を導入する場合は、次のような事項に留意しておく必要があります。

  1. 自己申告制を導入する前に、その対象となる労働者に対して、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと
  2. 自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施すること
  3. 労働者の労働時間の適正な申告を阻害する目的で時間外労働時間数の上限を設定するなどの措置を講じないこと
  4. また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること

中間管理職に対する残業代支払の要否

残業代支払の要否については、従業員の役職名にかかわらず、管理監督者に該当しない限り残業代の支払は必要となります。
管理監督者に該当するか否かは次の要件によって判断されることになります。
労働基準法第41条第2号の要件(昭和63.3.14基発150号)

経営者と一体的な立場で仕事をしていること

事業主の経営に関する決定に参画し、労務管理に関する指揮監督権限を認められていることが必要となります。

具体的な判断基準としては

などがあります。

出社時間や勤務時間などについて、厳格な制限を受けていないこと

労働時間について裁量権を有していることが必要となります。

具体的な判断基準としては

などがあります。

その地位にふさわしい待遇がなされていること

一般の従業員に比しその地位と権限にふさわしい賃金上の処遇を与えられていることが必要となります。

具体的な判断基準としては
管理職手当等が支給され、待遇において、時間外手当が支給されていないことを十分に補われているか
などがあります。

割増賃金における法定割増率

法定割増率は次のとおりとなります。

時間外(時間外手当・残業手当)

法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた場合
→割増率25%以上

時間外労働が限度時間(1か月45時間、1年360時間等)を超えた場合
→割増率25%以上 ※1

時間外労働が1か月60時間を超えた場合
→割増率50%以上 ※2

休日労働(休日手当)

法定休日(週1日)に勤務させたとき
→割増率35%以上

深夜業(深夜手当)

22時から5時までの間に労働させた場合
→割増率25%以上 ※3

※1 25%を超える率とするよう努めることが必要
※2 従来中小企業は適用が猶予されていたが2023年4月1日より猶予が廃止される
※3 時間外労働が深夜に及ぶ場合には割増率を重複して適用(25%+25%=50%)

一律のみなし残業手当(固定残業代、定額残業代)支給による残業代不支給の可否

一定時間分の割増賃金を毎月固定で支払う場合は、次の要件を満たし、かつ、その内容を就業規則等に規定しておく必要があります。

  1. 基本給、他の手当てと明確に区別されていること
  2. 固定割増賃金の計算根拠(算定の基礎となる時給単価、範囲に含まれる残業時間数)が明確であること
  3. 支払われている金額が2で計算した以上の金額であること
  4. 計算の基礎を超えて残業をした場合、超えた部分について別途割増賃金が支払われていること
  5. みなし残業手当の支払いに関して、就業規則にその内容が規定されていること

基本給等と明確に区別できない場合は、当該手当と基本給を含めた全体に対する割増賃金を支払う必要が出てくる可能性があります。

以上のとおりとなりますので、一律のみなし残業手当の支給による人件費の軽減の効果はあまり期待できません。

就業規則の変更による退職金の減額

就業規則によって従業員の労働条件を一方的に不利益に変更することは原則として許されません。
もっとも、変更が合理的と言える場合は例外的に不利益変更が許される場合があります。
就業規則変更によって労働条件を不利益に変更するための要件は次のとおりです。

1 就業規則の変更が周知されていること

この「周知」については、実質的にみて事業場の労働者が知りうる状態においていれば足り、従業員が就業規則の変更を実際に認識していることまでは不要であるとされています。

2 就業規則の変更が合理的であるといえること

就業規則の変更が合理的か否かは、次の要素によって判断されます。

① 労働者の受ける不利益の程度
退職金等、賃金の減額は不利益が大きく厳格に判断されることになります。
② 労働条件変更の必要性
経営不振等、不利益変更の必要性がどの程度あるのかが重要となります。
③ 変更後の就業規則の内容の相当性
経過措置・代償措置の有無等が考慮されます。
④ 従業員(労働組合)との交渉の経緯
従業員の過半数代表等と誠実に交渉してきたのか等が考慮されます。
⑤ その他就業規則の変更にかかる事情

労働契約法10条本文
「使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。」

繁忙期になされた有給申請への対応

会社の業務が忙しい時期や、他の社員が出張などに出て人手不足の時に有給申請がなされると会社の業務に支障が出ます。
そこで、その有給取得によって会社の事業の正常な運営が妨げられる場合は、会社には社員からの有給の申請を拒否する権利(時季(じき)変更権といいます)が認められます。

この時季変更権が認められるかどうかは、事業の内容、規模、社員の担当業務、事業活動の繁閑、予定された年休日数、他の社員の休暇との調整等さまざまな要因を考慮して判断されます。
但し、当該従業員が一人で業務を担当するなどしている場合など、どの時季に変更しても業務に支障が出る場合は会社の時季変更権は認められません。

問題従業員への対応

従業員のダラダラ残業

ダラダラ残業であることを理由に残業代不払いとすることは事実上困難です。
そこで、具体的な対応としては、

1 適正な労務管理を行う

業務時間内の私的メール、私用による離席、居眠り等がみられる場合は、その都度、指導や注意を行うようにします。

2 残業の事前申告制・許可制の採用

原則、残業禁止としたうえで、残業が必要な場合は従業員から事前に理由を付記した事前申請書を提出させるようにします。
同様に、残業を許可制として、従業員から残業許可申請書を提出させるようにします。

協調性のない従業員への対応

事実確認

問題となっている従業員や、その他の従業員から事情を聴取して状況を把握します。

改善策の検討

問題となっている従業員を交えて改善策を検討します。

注意・指導

改善策を実行しても問題となっている従業員に改善が見れれない場合は、注意・指導を行います。

懲戒処分、普通解雇の検討

問題スタッフの行動で企業秩序が阻害されている場合は、その都度、懲戒処分を行います。
就業規則の解雇事由「職務遂行能力が著しく劣る」に該当する場合と判断される場合は普通解雇を行います。

後日、問題となっている従業員から解雇の効力を争われた場合に備えて、注意指導や懲戒処分の過程を記録化しておくことが重要です。

メールの私的利用が疑われる従業員への対応

次のような内容を盛り込んだ規定を整備の上でモニタリングを行うようにします。

(平成23年4月経済産業省 情報セキュリティ関連法令の要求事項集92頁以下)
上記規定整備の他、スタッフには予めモニタリングをすることを周知し、事前に書面による確認書(承諾書)を聴取するなども検討する

会社に損害を与えた従業員の身元保証人への請求

従業員への身元保証人には全額請求できますが、事情により一部賠償金が減額されることもあります。
身元保証法による身元保証人の責任の制限

1身元保証期間

期間の定めがあれば5年まで、なければ3年となります。
(身元保証法第1条、第2条)
保証期間後の自動更新条項は無効であり、保証を継続する場合は期間満了の都度、改めて身元保証契約を締結する必要あります。

2身元保証人への通知義務(同第3条)

使用者が従業員を不適任・不誠実と考えた場合や、従業員の仕事が当初のものから大きく変更した場合は、通知を受けた身元保証人は将来に向かって身元保証契約を解除できます。

3身元保証人への損害賠償請求の制限

①使用者側の過失、②保証に至った経緯、③その他一切の事情を考慮し、裁判所は身元保証人の責任範囲を制限することができるとされています。
(同法5条)
具体例)
従業員が破損した機器等に保険を付することができたのに会社が保険を付していない。
従業員が当該機器の使用につき会社から十分な指導を受けていない等

従業員の退職

解雇の禁止

次のような事情がある場合は従業員の解雇が禁止されます。

1 労働基準法第19条

①業務上の負傷疾病による休業期間及びその後30日間の解雇禁止
②産前産後の休業期間及びその後30日間の解雇禁止
(但し、業務上負傷疾病において打切補償を支払った場合、天災事変その他やむを得ない事由により事業継続が不可能となった場合を除く)

2 労働基準法第3条

スタッフの国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇禁止

3 労働基準法第104条第2項等

監督官庁等に対する申告・申出を理由とする解雇禁止

4 雇用均等法第6条第4号

性別を理由とする解雇禁止

5 雇用均等法第9条第2項、同第3項等

女性の婚姻、妊娠、出産等を理由とする解雇禁止

6 育児介護法第10条、同16条

育児(介護)休業の申出、育児(介護)休業をしたことによる解雇禁止

7 公益通報者保護法第3条

公益通報をしたことを理由とする解雇禁止

8 パートタイム労働法8条

通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者(短時間労働者)について、パートタイム労働者であることを理由とする解雇禁止

有期雇用の従業員の雇止時の注意点

有期雇用の従業員を雇止めする際の注意点には次のようなものがあります。
(平成15年厚労省告示357号)

  1. 次のような有期労働契約において、契約を更新しない場合は、少なくとも30日以上前に予告をする必要ありがあります。
     ① 3回以上更新している場合
     ② 1年を超えて継続勤務している労働者の契約の場合
  2. 雇い止め予告後、労働者が雇い止めの理由について証明書を請求した場合は、遅滞なく証明書を交付する必要あります。
  3. 期間の定めのある契約を1回以上更新し、かつ、1年を超えて継続して雇用している労働者との契約を更新する場合、契約の実態及びその労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするように努めなければならないとされています。

有期雇用の従業員について雇止めができなくなる場合

雇止めができなくなる有期契約の類型


有期労働契約が反復して更新され、その雇止めが期間の定めのない契約の解雇と社会通念上同視できる場合


労働者が有期労働契約の期間満了時に当該労働契約が更新されるものと期待することに合理的理由がある場合

要件


上記ア、イいずれかの有期労働契約の従業員が、契約期間中に更新の申し込みをする、又は、契約期間満了後遅滞なく有期労働契約の申し込みをする


使用者が雇止めをすることが客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合

効果

従来と同一の条件で有期労働契約が更新されます。
(無期雇用に転換されるわけではありません。)
(労働契約法第19条)

有期雇用の従業員の期間途中の雇止め

期間の定めのない労働者(正社員)の解雇

「客観的合理的理由」があり、「社会通念上相当」であることが必要とされています。
(労働契約法第16条)

有期雇用の従業員の解雇

「やむを得ない事由」が必要とされています。
(同第17条)

したがって、有期雇用の従業員を期間途中で解雇するには、正社員の解雇以上の理由が必要となるため、非常に困難であると言えます。

従業員からの退職申出の撤回の可否

従業員の退職の意思表示については、①従業員による一方的な労働契約の解約の申入れ(辞職)、又は②合意解約の申入れのいずれかであると考えられます。
しかし、両者の区別は事実上困難です。

もっとも、退職を承認する権限者が当該従業員の退職を承諾した場合は、①の意思表示では当然、②にあたる場合も合意解約が成立します。
したがって、それ以後、従業員から退職申出の撤回があっても、会社は撤回を受け入れないことができます。
もちろん、会社が任意に従業員からの退職の撤回を認めることは自由です。

退職勧奨の注意点

授業院に対する退職勧奨については、対象者の選定、退職勧奨した回数・時間・言動等において社会通念上相当性を欠くことがないように注意する必要があります。

対象者の選定

対象者の選定については一定の合理的基準(給料が高い等)に基づいて行う必要があります。

差別的な意図があると違法となる場合があります。

退職勧奨した回数・時間

多人数で長時間にわたり何度も退職勧奨を行った結果、労働者が退職の意思表示をした場合などでは、後に争いとなった場合、労働者の真意に基づかない退職の意思表示と判断される可能性があります。

言動等

労働者の人格を貶める言動、威圧的な言動はNGです。

従業員の懲戒解雇の要件

従業員を懲戒解雇する際の要件は次のとおりです。

  1. 就業規則に懲戒事由及び種別・程度が明記されており、これがスタッフに周知されていること
    (最判平成15年10月10日 フジ興産事件)
  2. 従業員の行為が懲戒解雇事由に該当すること
  3. 客観的合理的な理由、社会通念上の相当性

(労働契約法第15条、同16条)

具体的には次の要件を満たす必要があります。

  1. 問題行為の種類・程度、その他の事情に応じて、処分が相当であること (比例原則)
  2. 先例と比較して処分が平等であること (平等原則)
  3. 当該スタッフに弁明の機会をえること (適正手続)

懲戒解雇事由

懲戒解雇事由には次のようなものがあります。

1 経歴詐称
学歴、職歴、犯罪歴、年齢、病歴等の詐称 ※
2 職務怠慢
勤務成績不良、遅刻・欠勤過多、無断欠勤等
3 業務命令違反
個々の業務命令に従わない
4 職場規律違反
上司・同僚への暴言、セクハラ、パワハラ等
5 私生活における非行
違法薬物使用、窃盗(万引き)、痴漢行為、飲酒運転等

※経歴詐称
労働力の評価に直結する「重要な」経歴の詐称と評価できる場合は、使用者との信頼関係を破壊する行為といえ懲戒解雇(懲戒事由の規定がある場合)、普通解雇(規定がない場合)事由に該当すると考えられます。

普通解雇事由

従業員を普通解雇するには、就業規則に規定する①客観的合理的理由があり、②相当性があることが必要とされています。

就業規則規定の客観的合理的理由の例

1 精神・身体の故障
精神または身体の故障により業務の遂行に堪えないと認められたとき
2 勤務成績不良
勤務成績または業務能率が著しく不良で、改善の見込みがなく就業に適さないと認められたとき
業務に怠慢で構造の見込みがないと認められたとき
3 打切補償
打切補償を行ったとき
業務上の災害により療養開始後3年を経過した日において傷病補償年金の給付を受けているとき、又は同日後において受け取ることとなったとき
4 業務上の必要性
事業の縮小、廃止その他、会社の経営上やむを得ない事由のあるとき
5 試用期間中の不適格
試用期間中の者で、従業員として不適格と認められるとき
6 包括的解雇条項
その他、前各号に準ずるやむを得ない事由が生じたとき

普通解雇を行う際の留意点

普通解雇を行う場合、その理由として一番多いのが従業員のパフォーマンスの不足です。
しかし、普通解雇の効力が訴訟等で争いになった場合、多くの会社では当該従業員のパフォーマンスの不足を立証する証拠を残していません。

その結果、証拠として提出できるのは上司や同僚の陳述書だけ、その陳述書の作成も後難を恐れて上司や同僚が作成に協力してくれないといった事態に陥ることが少なくありません。
そこで従業員を普通解雇する場合は次のような点に留意しておく必要があります。

  1. 一定期間当該従業員に注意(指導)を行う
  2. 上記注意(指導)を行った証拠を残す
  3. 実現可能な改善目標を具体的に設定する
    (可能であれば目標を数値化する)
  4. 改善目標を設定する際に当該従業員の意見を聴取する
  5. (可能であれば)業務・配置の転換を検討する
  6. 退職勧奨を行う

即戦力で採用をした従業員を普通解雇する場合の留意点

即戦力で採用したにもかかわらず期待されたパフォーマンスを発揮しない従業員を解雇する際には、①従業員の改善可能性、②従業員の地位・業務特定の有無、③会社の行った改善・配転措置、が考慮されることになります。

① 労働者の改善可能性
必要な指導・教育により改善の余地があるといえるのかが問題となります。
② 労働者の地位・業務特定の有無
中途採用等で一定の能力を有することを前提に採用された場合解雇の客観的合理性・社会通念上の相当性が認められやすいといえます。
③ 使用者が行った改善・配転措置
高度の専門職である従業員の場合は、使用者の改善措置・配転措置は重視されない傾向にあります。

顧問弁護士がいることで、会社の本来の業務に専念することができます。顧問弁護士について関心のある方は、お気軽に弁護士法人オールワン法律会計事務所にご相談ください。日々の業務での「これはどうなの?」といったふとした疑問にも迅速にお答えいたします。

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