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被相続人の口座から使途不明の出金がある場合

 

相続開始後、相続人の通帳を調べてみると、口座から度々ラウンドナンバー(丸い数字=100万円、200万円といった切りのいい数字のこと)での出金履歴がある。

一方、銀行預金は被相続人が自分で管理していたので、相続人はそのお金が何に使われたのか、どこになるのか分からない・・・

この被相続人の口座から出金された使途不明金について、出金回数が多数、使途不明金が多額にのぼると税務調査でその資金使途について税務職員から厳しい追及を受けることがあります。

また、被相続人と同居していた子、同居していなかった子がいる場合、使途不明金を同居の子が消費・隠匿したのではないかと相続人間で疑心暗鬼が生じ、遺産分割の際にトラブルの原因になったりします。

 

税務調査における使途不明金の取り扱い

 

税務調査では、不明金の使途を相続人が明らかにできない場合、当該金員が相続時に存在していたことを前提とした修正申告の慫慂(しょうよう=促すこと)を税務署員から受けることがあります。

それでは、こうした使途不明金が存在する場合、相続人は修正申告に応じる必要があるのでしょうか?

仮に相続人が修正申告に応じない場合、それでも使途不明金が相続時に存在したと税務署が主張するのであれば、税務署は納税額の修正や決定を行う更正処分を行います。

更正処分が行われた場合、それに不服がある相続人は、国政不服審判所への審査請求、審査請求の結果そこで出された裁決に不服がある場合は裁判所への提訴を行うことができます。

訴訟となった場合、使途不明金が相続時に存在することについて立証責任を負うのは国です。

この点、相続開始3年前に存在した被相続人の現金について、「収支計算を正確に行えば、相続開始時において残るはずのもの」で、相続開始までに「他の資産に変化したと考えるのが自然である」と国が主張した裁判で、裁判所は、国の主張・立証は不十分として国の主張を退けた裁判例があります。
(名古屋高判平成15年12月25日)

したがって、実際に使途不明金について修正申告の慫慂がなされた場合は、どのような理由に基づいて慫慂がなされたのかを個別に判断する必要があります。

なお、修正申告は、納税義務者が自主的に納税額を変更するため、その後に不服申し立てを行うことはできません。

 

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