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暦年課税に戻ることができない
相続時選択課税を一旦選択すると、暦年課税に戻ることができなくなります。
その結果、暦年課税であれば暦年で110万円認められた贈与税の基礎控除が適用されなくなります。
暦年課税では、被相続人の相続開始前3年超の贈与については生前贈与加算がされませんが、相続時精算課税では贈与された時期に関係なく相続財産に加算されることになります。
また暦年課税では贈与者・受贈者に特段の条件はありませんが、相続時精算課税では贈与者は60歳以上等の条件が設けられています。
さらに暦年課税では2015年以降、特例贈与として直系卑属である20歳以上の受贈者に年410万円を超えて贈与する場合に軽減税率が適用されることとなりましたが、相続時精算課税ではこうした軽減税率は認められていません。
贈与財産が滅失しても相続税の課税財産となる
民法の規定では、共同相続人中に被相続人から婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、その贈与を受けた財産を特別受益として相続財産に持戻して相続財産をを計算することで、予め贈与を受けていた相続人と、他の相続人との相続分のバランスをとることになっています(民法903条の2)。
この特別受益については、受贈者の行為によって、その目的である財産が滅失し、又はその価格の増減があったときであっても、相続開始の時においてなお原状のままであるものとみなされることになっています(民法904条)。
したがって同条を反対解釈すると、受贈者の故意過失によらないで贈与財産が滅失した場合、滅失した財産は贈与されなかったものとみなされます。
一方、相続税法には民法904条のような規定はないため、贈与財産が滅失毀損した場合、受贈者の故意過失の有無を問わず相続財産に加算されることになります。
贈与財産が値下がりしても贈与時の時価で相続財産に加算される
相続財産については、「相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価」で評価することと規定されています(相続税法22条)。
一方、相続時精算課税を選択した上で贈与した財産については、贈与時の時価で相続財産に加算して相続税を計算することになります。
贈与時から相続時までの贈与財産が値下がりしていた場合、その値下がり分について余分に相続税を支払うことになります。
したがって将来値下がりする可能性のある財産を贈与する場合、相続時精算課税を選択すると不利になります。
受贈者が先に死亡すると相続税が加重となる
受贈者が先に死亡した場合、受贈者の相続人(包括受遺者を含む)は、受贈者が有していた相続時精算課税の適用を受けていたことに伴う権利義務を承継します。
そして、その後に贈与者が死亡すると、受贈者の相続人は、受贈者を受遺者とみなし、贈与財産を贈与者の遺贈財産とみなして計算した相続税額から既に支払った贈与税額を控除した相続税額を納付することになります。
その結果、相続時精算課税を選択した場合に受贈者が先に亡くなると、贈与された財産が持ち戻されるため二重課税となり、通常よりも多額の税金を支払うことになります。
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