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遺言で、特定の財産を相続開始時に特定の相続人に取得させる場合、「相続させる」と書く場合と、「遺贈する」と書く場合があります。

「相続させる」も「遺贈する」も、特定の財産を特定の相続人に取得させる遺言作成者の意思表示であることは変わりませんが、効果に大きな違いがあります。

 

対象者

「相続させる」

法定相続人に対して財産を取得させる場合に限ります。

「遺贈する」

法定相続人以外に財産を取得させる場合に使います。

 

登記手続

「相続させる」

当該相続人が単独で不動産の所有権移転登記手続ができます。

「遺贈する」

受遺者が法定相続人であれば単独で登記申請ができますが、法定相続人以外の者に対する遺贈については、登記義務者である他の相続人と共同して登記申請をする必要があります(不動産登記法63条3項)(遺言執行者がいる場合は、遺言執行者との共同申請となります。)。

 

農地法3条の許可

「相続させる」

農地の取得について農地法3条の農業委員会又は知事の許可は不要です。

「遺贈する」

農地の取得について農地法3条の農業委員会又は知事の許可が必要です。

 

賃貸人の承諾

「相続させる」

借地権・借家権の相続につき、賃貸人の承諾は不要です。

「遺贈する」

賃貸人の承諾が必要となります。

 

第三者対抗要件の有無

「相続させる」

特段の事情がない限り被相続人の死亡時に直ちに遺産が当該相続人に承継され、第三者に対し、登記なく対抗できるとされています。
(最判平成14年6月10日)

ただし、相続法改正により(平成30年法律72号)、法定相続分を超える部分については、登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗できないとされました。

「遺贈する」

不動産の遺贈では、物権変動を第三者に対抗するために登記が必要です。

 

放棄

「相続させる」

対象不動産の取得を望まない場合は相続放棄(民法915条)するしかありません。

「遺贈する」

対象不動産の取得を望まない場合は遺贈を放棄(民法986条1項)すれば足ります。

(包括遺贈の場合は、相続放棄をすることになります。)

 

代襲相続

「相続させる」

遺言者が当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り、その効果を生ずることはない」とされています。=否定
(最判平成23年2月22日)

「遺贈する」

代襲相続しません(民法994条1項)。

 

その他の相続に関する解説は

👉遺言・相続・遺産分割

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