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特別受益とは

 

相続開始後の遺産分割協議において、一方の相続人は被相続人からその生前に贈与等の援助を受けているが、他方の相続人はそうした援助を受けていない場合、現にある相続財産を二等分すると、結果として不公平な分割になってしまいます。

そこで、特定の相続人だけが被相続人から生前に援助を受けていた等の事情がある場合、その援助は相続財産の先渡しであると考えて遺産分割を調整するのが特別受益という制度です。

 

民法903条1項は、

「共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。」

として、特別受益があった場合の遺産分割の進め方を規定しています。

 

相続人が被相続人から援助を受ければ何でも特別受益に該当するわけではありません。

特別受益に該当するには、被相続人からの「遺贈」か、「婚姻、養子縁組、生計の資本としての贈与」であることが必要です。

もっとも、被相続人からのどのような援助が「生計の資本としての贈与」にあたるのかは客観的に明らかではなく、個別の事情を考慮して特別受益該当性が判断されることになります。

 

学費の特別受益該当性

 

現在ではほとんどの方が高校に進学するため、高校の学費が特別受益に該当することは原則としてありません。

しかし、私立大学、特に私立医科大学の学費については特別受益該当性が問題となることがあります。

過去には、相続人の一人が家業を手伝わずに4年制大学に進学し、他の相続人らが中学校在学中から家業を手伝っていた事例で、私立大学の学費と下宿での生活費が特別受益として認められた裁判例がありました。

(京都家裁平成2年5月1日)

 

他方、相続人の一人が医学部に進学したが、他の相続人もそれなりの高等教育を受けていた事例で、医学部の学費等は特別受益に該当しないとした裁判例もありました。

(京都地裁平成10年9月11日)

 

何が特別受益に該当するのかは、単に医学部の学費だからといった事情では決まらず、被相続人の収入や資産、家庭の事情等によって総合的に判断されます。

もっとも、一般的な私立大学の学費については、よほど特別な事情がないと特別受益に該当することはないと思われます。

 

特別受益の持戻し免除

 

特別受益に関する903条は、その第3項で次のように規定してます。

「被相続人が前2項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。」

 

したがって、特定の相続人に対する生前贈与が特別受益に該当する場合も、被相続人が遺言でその持戻しを免除する意思を表示すれば、被相続人の意思が優先され、当該生前贈与を特別受益として評価する必要はなくなります。

裁判例では、この持戻し免除の意思表示は必ずしも遺言で行う必要はなく、被相続人の生前の言動等から持戻し免除が認定されることがあります。

しかし、被相続人の言動から持戻し免除の意思が認定されるか否かは不確実であるため、持戻し免除を望む場合は遺言を作成しておくことが無難です。

 

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