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インフォームドコンセント
医療法1条の4第1項には、「医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手は、第1条の2に規定する理念に基づき、医療を受ける者に対し、良質かつ適切な医療を行うよう努めなければならない。」と規定されています。
そして同条2項には、「医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手は、医療を提供するに当たり、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならない。」と規定されています。
インフォームドコンセントとは、診療に先立ち医師が患者に十分な情報を提供し、患者がその内容を理解した上で診療に同意することを指します。言い換えればインフォームドコンセントは、患者の自己決定権を尊重するためのものです。
医師が診療を行うに際して、その過程で身体への侵襲が伴っても傷害罪等が成立しないのは、インフォームドコンセントにより侵襲を伴う診療に対する患者の同意があるからだと考えられています。
インフォームドコンセントの対象
厚労省の「診療情報の提供等に関する指針」「6診療中の診療情報の提供」によれば、インフォームドコンセントの対象は次のとおりです。
- 医療従事者は、原則として、診療中の患者に対して、次に掲げる事項等について丁寧に説明しなければならない。
- 現在の症状及び診断病名
- 予後
- 処置及び治療の方針
- 処方する薬剤について、薬剤名、服用方法、効能及び特に注意を要する副作用
- 代替的治療法がある場合には、その内容及び利害得失(患者が負担すべき費用が大きく異なる場合には、それぞれの場合の費用を含む。)
- 手術や侵襲的な検査を行う場合には、その概要(執刀者及び助手の氏名を含む。)、危険性、実施しない場合の危険性及び合併症の有無
- 治療目的以外に、臨床試験や研究などの他の目的も有する場合には、その旨及び目的の内容
- 医療従事者は、患者が「知らないでいたい希望」を表明した場合には、これを尊重しなければならない。
- 患者が未成年者等で判断能力がない場合には、診療中の診療情報の提供は親権者等に対してなされなければならない。
最高裁は、乳がんの手術に際して医師が患者に対して、乳房温存療法の適応可能性のあること、乳房温存療法を実施している医療機関の名前や名称を説明していなかった事件で、
「医師は,患者の疾患の治療のために手術を実施するに当たっては,診療契約に基づき,特別の事情のない限り,患者に対し,当該疾患の診断(病名と病状),実施予定の手術の内容,手術に付随する危険性,他に選択可能な治療方法があれば,その内容と利害得失,予後などについて説明すべき義務があると解される。」
「本件で問題となっている乳がん手術についてみれば,疾患が乳がんであること,その進行程度,乳がんの性質,実施予定の手術内容のほか,もし他に選択可能な治療方法があれば,その内容と利害得失,予後などが説明義務の対象となる。」
とした上で、
「乳房温存療法の適応可能性のあること及び乳房温存療法を実施している医療機関の名称や所在を説明しなかった点で,診療契約上の説明義務を尽くしたとはいい難い。」
として医師の説明義務違反を認定しました。
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