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人生100年時代ということが言われるようになって久しくなります。
この「人生100年時代」という言葉は、2016年に刊行された共にロンドンビジネススクール教授のリンダ・グラットンとアンドリュー・スコットが書いた「ライフシフト 100年時代の人生戦略」を出自とするのではといわれています。
厚労省の統計によれば、2018年の平均余命は男性で81.3歳、女性で87.3歳。
世界有数の長寿国になっています。
ただ、長生きされる方が増えるに伴い、年金、介護等様々な問題も注目されるようになりました。
相続においても、長寿化の進展に伴い様々な問題が指摘されるようになりました。
被相続人が認知症であったケースの増加
被相続人が認知症であったケースの場合、認知症の程度にもよりますが、症状が進行すると単独で有効な法律行為が行えなくなります。
財産管理については法定後見制度、任意後見制度を活用することで、成年後見人等の代理人が本人に代わって行うことができます。
一方、生前贈与を始めとする相続税対策や、遺言を作成するといった行為は、本人の認知症が進行するとできなくなります。
(生前贈与特化型といわれる生命保険を活用すれば、生前贈与はある程度継続できますが。)
本人が亡くなると、相続に対する十分な準備が出来ていないため遺産分割協議が難航したり、相続税の負担が過重になる等の問題が生じることがあります。
相続人が認知症であるケースの増加
相続開始時に相続人が認知症を患い、症状が進行していると、遺産分割協議ができなくなります。
被相続人の遺言がない場合、家庭裁判所に本人に代わって遺産分割協議に参加する特別代理人の選任を申立てる必要があるため、遺産分割協議に時間を要することになります。
また、特別代理人は本人の利益を損なうことはできないので、法定相続分が確保できないと協議に同意できません。
その結果、柔軟な遺産分割協議ができなくなる可能性があります。
被相続人の財産管理を巡るトラブルの増加
同居の親族が被相続人の財産管理をしていたケースなどでは、その財産管理の内容等を巡って相続開始後にトラブルとなるケースがあります。
被相続人の財産を同居の親族が使い込んでいたのではないか、どこかに隠匿しているのではないか。
同居していなかった相続人から、遺産分割協議の場でこうした発言が飛び出すと、あとは争族、ドロ沼のような展開になります。
特に被相続人名義の銀行口座から出金された現金は、後になって使い道等を調べることができないため、出金の額や回数によっては他の相続人からその使途に疑念が持たれることがあります。
被相続人の介護を巡るトラブルの増加
特定の相続人だけが被相続人の介護をしていたケースでは、介護をサポートしていた相続人の寄与分の有無及び範囲を巡ってトラブルとなることがあります。
介護をしていた相続人は、寄与分に見合う追加相続分への期待があります。
しかし民法では、直系血族間の扶養義務を定めているため、寄与分が認められるのはこうした扶養義務を超えた「特別な寄与」が認められる必要があります。
親の面倒を見てきたとの思いがある相続人が寄与分が認められないと、やはり他の相続人とのトラブルに発展することが少なくありません。
子がない夫婦・法定相続人がいない被相続人の増加
少子化・高齢化の影響で、子がいない夫婦、法定相続人がいない被相続人が増加しています。
子がいない夫婦で例えば夫が亡くなった場合、夫の両親がすでに他界していると、法定相続人は妻と夫の兄弟姉妹となります。
夫の兄弟姉妹が法定相続分を主張すると、相続財産の内容によっては、妻は夫名義の自宅で暮らすことができない可能性が出てきます。
夫の兄弟姉妹が認知症の場合、特別代理人選任に手間と時間が必要となります。
兄弟姉妹が既に死亡していると代襲相続人である甥や姪と協議が必要となります。
被相続人に法定相続人がいない場合、相続財産は家庭裁判所が選任する相続財産管理人が管理することになります。
相続財産管理人が特別縁故者の有無を調査したり、相続債務を弁済した後、残った相続財産は国庫に帰属することになります。
したがって、法定相続人がいない人が払う相続税は100%となります。
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