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役員の医療法人に対する損害賠償責任

 

2016年(平成28年)9月1日から施行された医療法には、

「社団たる医療法人の理事又は幹事は、その任務を怠ったときは、当該医療法人に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」

と規定されています(医療法47条1項)。

 

役員と医療法人は委任の関係があるため、役員は医療法人に対して善管注意義務を負っています。

したがって、役員が任務を怠った結果、医療法人に損害が生じた場合、役員が損害賠償責任を負うのは当然であり、上記医療法の規定は、この当然の法理の明文化に過ぎません。

しかし、医療法に役員の損害賠償責任が明記されたことで、医療法人の役員となろうとする者は、損害賠償責任のリスクを意識せざるを得なくなりました。

 

役員の損害賠償責任の減免

 

1 社員又は評議員全員の同意による免除

役員の医療法人に対する損害賠償責任は、社団医療法人の場合は社員全員が、財産医療法人の場合は評議員全員が同意すれば免除することができます(医療法47条の2第1項等)。

しかし、かかる同意は損害賠償責任が生じた後に必要であり、当然ながら事前に役員の責任を免除することはできません。

 

2 社員総会又は評議員会の決議による一部免除

役員の医療法人に対する損害賠償責任は、役員が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がない場合、一定の金額を限度として、社団医療法人の場合は社員総会の決議、財団医療法人の場合は評議員会の決議によって免除できます(医療法47条の2第1項等)。

しかし、事前に役員の責任を一部免除することはできません。

 

3 定款又は寄付行為の規定による一部免除

役員の損害賠償責任につき、役員が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がない場合において、諸事情を勘案して特に必要であると認めるときは、上記2の金額を限度として理事会の決議により免除できる旨を、社団医療法人であれば定款に、財団医療法人であれば寄付行為に定めておくことができます(医療法47条の2第1項等)。

この方法であれば、免除の範囲に限度がありますが、事前に役員の責任を免除できます。

 

4 責任限定契約

役員(理事長や職員兼務の理事等は除かれます。)の損害賠償責任について、当該役員が職務を行うにつき善意でかつ重過失がない場合において、一定の金額を限度とする旨の契約(責任限定契約)を締結することができる旨を、社団医療法人であれば定款、財団医療法人であれば寄付行為に規定しておくことができます(医療法47条の2第1項等)。

免除の範囲や対象者に限定がありますが、子の定款の規定によっても事前に役員の責任を免除することができます。

 

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