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応招義務

 

医師法19条1項は、「診療に従事する医師は、診療治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」として、医師の応招義務を規定しています。

応招義務は公法上の義務とされていますが、医師法には応招義務に反した場合の罰則規定はありません。

しかし、医師法7条1項は、「医師としての品位を損するような行為のあつたとき」に、厚生労働大臣は「戒告」、「3年以内の医業の停止」、「免許の取消し」といった処分ができると規定しています。

したがって、応招義務に度々違反した場合などは、この「医師としての品位を損するような行為のあったとき」に該当するとして、上記行政処分の対象となりえるといわれています。

 

「正当な事由」の具体例

 

医師の病気

 

厚生省医務局医務課長回答(昭和30年8月12日医収第755号)によれば、医師の病気は「正当な事由」となります。

しかし上記回答では、「単に軽度の疲労の程度」では「正当な事由」に該当しないとされているため、診療ができない程度の病気であることが必要と思われます。

 

専門外の診療科目

 

厚生省医局長通知(昭和24年9月10日医発752号)によれば、医師が自己の標榜する診療科目以外の診療科に属する疾病について診療を求められた場合、説明をしてもなお患者が診療を求めると、応急の措置その他できるだけの範囲のことをしなければならないとされています。

脳外科医である病院の当直医が、心筋障害による急性冠不全症状のある患者の診療を拒否したことが問題となった裁判で、①当日の病院の当直医は脳外科医だけで、診療を求められたときには別の重症者の治療に追われていたこと、②当該患者は搬送依頼された際に別の内科医の診療を受けており、脳外科医は内科医以上の適切な措置をとることは困難で、他の専門医の診療を受けたほうが適切であると判断したこと等を理由として、当該治療拒否は応招義務に反しないと判断されました。

(名古屋地裁昭和58年8月19日判タ519-230)

 

その他の「正当な事由」については次回のブログで紹介します。

 

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