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遺産分割はふつうの家庭が一番もめる
最高裁判所が公表している統計に「調停・審判事件の件数(遺産の価額別)」というものがあります。
家庭裁判所における調停や審判手続きを利用している人たちについて、その手続の対象となった遺産の価額別を調査したものです。
最新の「平成30年 家事事件編・第52表」によると、遺産の価額は次のとおりとなります。
遺産の価額1000万円以下 2476件
同1000万円超5000万円以下 3249件
5000万円超1億円以下 832件
1億円超5億円以下 533件
5億円超 53件
算定不能・不詳 364件
以上のとおり、遺産が1,000万円以下のグループだけで全体の3分の1、そこに遺産が5,000万円以下のグループを加えると全体の4分の3となります。
すなわち、家庭裁判所の調停・審判手続を利用している人の4組中3組までが価額が5000万円までの遺産を巡って争いになっているのです。
なぜ遺産の価額が5,000万円以下のグループが最多となるのか。
理由として考えられるのは次のようなものです。
母数自体が大きい
よく現在の社会では中流層がなくなり、富裕層と貧困層の二極化が進んでいるといったことがいわれています。
仮にそうした二極化が進んでいるとしても、今のところ中流層の数が富裕層の数を上回っていることは想像に難くありません。
したがって、母数自体が大きいため結果として家庭裁判所の調停・審判手続を利用する人の数も多くなると考えられます。
遺産が家だけ
仮に遺産が現金や預貯金だけであれば、相続人が複数いても分割することは容易です。
(この場合も特別受益や寄与分・寄与料を巡っての争いは生じますが)
しかし、遺産が5,000万円以下のグループの場合、遺産の大半が親が残した自宅で、その他にわずかな金融資産しか残されていないっといったケースが多く見られます。
自宅は金融資産と異なり相続人が上手に、平等に分割することは困難です。
その結果として家庭裁判所の調停・審判手続を利用することになるというわけです。
相続への準備がない
2014年まで相続税の基礎控除は5,000万円でした。
(正確には、5,000万円+1,000万円×法定相続人の人数)
したがって遺産が5,000万円以下のグループはこれまで相続税が課税されていませんでした。
相続税が課税されるグループと比べて、相続税が課税されないグループはそもそも相続に関する問題への関心が低く、結果として遺言を作成するといった相続への「準備」ができていません。
その結果として家庭裁判所の調停・審判手続を利用することになるというわけです。
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