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破産債権者による相殺
債務者が破産すると、破産債権者が回収できる破産債権は破産管財事件で通常数パーセント、同時廃止事件の場合は破産債権を回収することはほぼ不可能です。
一方で破産債権者に破産者に対する債務がある場合、破産債権者は、破産債権と債務を相殺することによって破産債権を事実上回収することができます。
このように相殺には決済方法の簡易化のほか、債権の担保的機能があると言われています。
相殺が禁止される場合
相殺にはこうした機能が認められる一方、担保的機能を認めることが適当ではない一定の場合には相殺が禁止されています。
悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務や、人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することはできません。
(民法509条)
債権が差押えを禁じたものであるときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができないとされています。
(民法510条)
さら、差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできないとされています。
破産法による相殺の禁止
破産手続開始後の債務負担(破産法71条1項1号)
事業者間の取引では、債務者が破産しそうになったら当該債務者から商品を仕入れ、その後債務者が破産をすれば売掛金と買掛金を相殺すればいいといった話がまことしやかに話されることがあります。
しかし破産法では、破産債権者が破産手続開始後に破産財団に債務を負担しても、これを受働債権として相殺することは禁止されています。
この場合は、他の相殺禁止規定のように破産債権者の悪意や債務負担原因の発生時期などは問われません。
例としては、破産財団に属する財産を破産管財人から買い受けた場合の代金債務や、破産管財人の否認権行使の結果生じた相手方の返還債務があります。
支払不能後の債務負担(破産法71条1項2号)
事業者の破産では、手形の不渡り等の支払停止前に既に経済的に破綻していることが少なくありません。
そこで、平等は債権者間の平等を確保するため、こうした支払不能後における債務負担についても相殺は禁止されています。
支払停止・破産申立後の債務負担(破産法71条1項3号4号)
破産手続開始前であっても、債務者が支払停止となっていたり破産申立をした後、債務者から債務を負担しても、破産債権者の相殺の期待は保護に値しないと考えられます。
したがって支払停止・破産申立後の債務負担についても相殺が禁止されます。
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