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職業別短期消滅時効・商事消滅時効の廃止

 

改正前民法における職業別短期消滅時効等

 

3年(改正前民法170条)

医師、助産師、薬剤師の診療、助産、調剤に関する債権

工事の設計、施工、監理を業とする者の工事に関する債権

 

2年(改正前民法172条、173条)

弁護士、弁護士法人、公証人の職務に関する債権

生産者、卸売商人、小売商人が売却した産物又は商品の代価に係る債権

自己の技能を用い注文を受けて物を制作し又は自己の仕事場で他人のために仕事をすることを業とする者の仕事に関する債権

学芸、技能の教育を行う者が生徒の教育、衣食、寄宿の代価について有する債権

 

1年(改正前民法174条)

月又はこれより短い時期によって定めた使用人の給料に係る債権

自己の労力の提供又は演芸を業とする者の報酬又はその供給した物の代価に係る債権

運送賃に係る債権

旅館、料理店、飲食店、貸席、娯楽場の宿泊代、席料、入場料、消費物の代価又は立替金の債権

動産の損料に係る債権

 

改正前商法522条

商行為によって生じた債権は、この法律に別段の定めがある場合を除き、五年間行使しないしないときは、時効によって消滅する。

 

改正民法による債権の消滅時効

 

改正民法166条(債権等の消滅時効)1項
債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
① 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
② 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。

 

改正により、債権については、主観的起算点(権利を行使することができることを知った時)から5年、客観的起算点(権利を行使することができる時)から10年で消滅時効が完成することになります。

 

この主観的起算点と客観的起算点については、確定期限のある債権の場合一致しますが、不確定期限付債権、条件付債権では一致しないことがあります。

 

すなわち、債権者が知らないうちに期限が到来した、条件が成就した場合、客観的起算点は期限到来日、条件成就日となりますが、主観的起算点は債権者が期限到来や条件成就を知った日となります。

 

時効の中断・停止から時効の完成猶予・更新へ

 

改正前

 

改正前民法147条(時効の中断)

時効は、次に掲げる事由により中断する。

① 請求

② 差押え、仮差押え又は仮処分

③ 承認

 

改正前民法159条(夫婦間の権利の時効の停止)

夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から6か月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

 

改正後

 

改正民法147条(裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新)

次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。

① 裁判上の請求

② 支払督促

③ 民事訴訟法第275条第1項の和解又は民事調停法若しくは家事事件手続法による調停

④ 破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加

2項

前項の場合において、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。

 

改正により、消滅時効の完成を妨げる事由が生じている間(及び事由が解消されてからの一定期間)は時効が完成しない「時効の完成猶予」と、新たな時効期間が開始する「時効の更新」に整理されることになりました。

 

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