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破産法は、破産手続の開始原因として、債務者の「支払不能」(破産法15条1項)、法人の場合の「支払不能又は債務超過」(同16条1項)を規定しています。
それでは、支払不能や債務超過の状態にあるにもかかわらず長期間にわたり破産申立をせず、破産申し立てをした場合、どのような問題が生じるのでしょうか。
破産財団を構成する財産の減少・財産の隠匿・財産の廉価処分
破産申立が遅延することによって、将来、破産財団を構成することになる債務者の財産が減少することが考えられます。
また、債務者が財産を隠匿したり、あるいは目先の現金を確保するために廉価で処分するといった問題も生じます。
なお、「債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為」や、「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少」させる行為は、いずれも免責不許可事由とされています。
(破産法252条1項1号・4号)
給料債権の不当な減少
債務者が従業員を使って事業を行っていた場合、その従業員の給料債権については、「破産手続開始前3か月間の破産者の使用人の給料の請求権は、財団債権とする」とされています。
(破産法149条1項)
従業員への給料が未払いのまま債務者が事業を継続し、その後破産をすると、従業員の給料債権は「破産手続開始前3か月」分だけ財団債権として保護され、ぞれ以前の給料債権は財団債権として保護されなくなってしまいます。
労働債権の立替払制度が利用できない
労働者健康福祉機構による未払賃金の立替払制度が利用できる労働者は、破産申立の前6か月前の日から2年以内に会社を退職した人です。
(賃金の支払の確保等に関する法律7条・同法施行令3条1項)。
したがって、労働者が会社から解雇された日から、破産申立までに6か月が経過すると、未払賃金の立替払制度が利用できなくなります。
帳簿類・債務者の財産などの散逸
債務超過に陥っている債務者が事業を継続する場合、目先の資金繰り等に手間を取られる結果として、帳簿類などが散逸、紛失する可能性があります。
また従業員が引き継ぎなく退職すると、会社の財産や売掛債権の管理ができなくなったりします。
その結果、破産財団を構成するはずであった債務者の財産が散逸、紛失ことになります。
なお、「業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと」は免責不許可事由とされています。
(破産法252条1項6号)。
以上のとおり、債務超過等にある債務者が破産申立までに時間を要すると様々な問題が生じえます。
もちろん、債務超過の状況にあっても経緯者の努力によって業績が持ち直し、破産を免れることも多々あります。
いずれにせよ、事業継続の是非を判断するため、経営者の方が時に外部の専門家等の意見を聴取することも有用であると思われます。
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