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今回は、未履行の不動産売買契約と相続税の問題について紹介したいと思います。

 

不動産の所有者が、不動産を売却する契約を締結し、手付金を受領後に亡くなった場合などに問題となります。

 

この場合、相続税の課税対象となるのは、不動産自体でしょうか。

それとも不動産の買主に対する売買代金請求権でしょうか?

 

不動産が相続税の課税対象となる場合、建物は固定資産税評価額で、土地については路線価で(路線価がついていない場合は倍率方式で)評価されます。

(路線価は通常、公示価格の80%程度です。)

 

さらには、土地について小規模宅地の特例が適用される等、相続税の課税上有利となります。

 

一方で、不動産の売買代金が課税対象となる場合、そうした特例はなく、残債権額そのものに課税されることになります。

 

したがって、課税の対象が不動産自体となるのか、残債権額となるのかについては、相続税の評価額に大きな違いが生じることになります。

 

この点について国税庁は、

 

「売買代金に係る売主に相続が開始した場合には、相続又は遺贈により取得した財産は、当該売買契約に基づく相続開始時における残代金請求権とする。」

 

との資産税課情報(平成3年1月11日第1号)を発遺しています。

 

判例においても、

 

「たとえ本件土地の所有権が売主に残っているとしても、もはやその実質は売買代金債権を確保するための機能を有するにすぎないものであ」り、

 

「相続した土地の所有権は、独立して相続税の課税財産を構成しないというべきであって、本件において相続税の課税財産となるのは、売買残代金債権である」

 

と判示ますしています(最判昭和62年12月5日)。

 

したがって、未履行の不動産売買契約の売主の地位を相続した相続人において、相続税の課税対象となるのは不動産それ自体ではなく、売買残代金債権となります。

 

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