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【事例】
被相続人Aの相続人である甲、乙(Aと前妻との間の子 原告ら)が相続税の申告をしたところ、税務署長はAの配偶者丙名義の有価証券及び普通預金(普通預金等)がAの遺産にあたるとして更正処分等がなされました。
その後、丙は普通預金等を遺産に含めて修正申告しましたが、原告らは普通預金等の遺産該当性を争い訴訟を提起しました。
【税務署長(国)の主張】
ある財産が被相続人以外の名義になっていたとしても、相続開始時に被相続人に帰属する財産であったと認められれば相続税の課税財産となる。
被相続人に帰属する財産か否かは、単に当該財産の名義のみによって判断するのではなく、当該財産の購入原資の出資者、管理・運用の状況、収益の帰属者、名義人と管理及び運用をする者の関係等を総合考慮して判断すべきである。
B名義の普通預金等の原資はいずれもAが出捐したものであり、その管理・運用はAが行っていた。
原告らはAからBへ贈与があったと主張するが、具体的な時期や方法が特定されていない。
【原告らの主張】
財産の帰属はその名義だけではなく、その他の事情も想像考慮して判定すべきであるとしても、一般に財産を取得する者は自己の名義で取得及び管理するのであるから、財産の帰属先を判定する上で財産の名義は極めて重要な要素である。
Bは老後の生活に不安を有しており、Aに働きかけて普通預金等を贈与された。
Bは生前贈与を受けた際に申告していなかったため、税務調査をおそれて修正申告したものである。
【裁判所の判断】
裁判所は、被相続人以外の名義の財産が相続開始維持に被相続人に帰属するか否かは、
①当該財産又はその購入原資の出捐者
②当該財産の管理及び運用の状況
③当該財産から生ずる利益の帰属者
④被相続人と当該財産の名義人並びに当該財産の管理及び運用をする者との関係
⑤当該財産の名義人がその名義を有することになった経緯
⑥その他の事情
を総合考慮して判断するのが相当、としました。
その上で、
財産の帰属の判定では、一般的には当該財産の名義が誰であるかは重要な一要素となり得るが、「我が国においては、夫が自己の財産を、自己の扶養する妻名義に預金等の形態で保有することも珍しいことではない」。
財産の管理・運用を誰がしていたかということは重要な一要素であるが、「夫婦間においては、妻が夫の財産について管理及び運用をすることがさほど不自然であるということはできない」。
本件では、
①B名義の普通預金等はAが出捐したものである
②Bは、B名義の普通預金等を自ら管理・運用していた
③Bは、A名義の普通預金等についても管理・運用していた
④Aは、全財産をBに相続させる遺言を作成していた
⑤Aは、自分がなくなった後のBの生活を心配していた
⑥AからBに生前贈与した土地建物については贈与契約書を作成の上、税務署長に申告していた
⑦B名義の普通預金等から生ずる収益はBが取得していた
⑧Bが普通預金等を解約して他の用途に使用したといった事情はうかがわれない
裁判所は以上の理由によって、B名義の普通預金等はAの遺産であると判断しました。
(東京地判平成20年10月17日税資258号順号11053)
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