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相続人間で、相続財産の範囲について争いが生じることがあります。

「相続人A名義の不動産は、実際には被相続人が所有していた相続財産である。」

「被相続人名義の不動産は、実際には相続人Bとの共有不動産である。」

といった主張が相続人から出される場合です。

 

遺産分割協議や審判の後にこうした主張がなされた場合は、遺産分割協議や審判の効力の問題となります。

他方、遺産分割協議や審判前にこうした主張がなされた場合は、遺産分割に先立ち相続財産の範囲を確定する必要があります。

 

遺産分割調停・審判手続

 

相続財産の範囲を巡る争いは、実体法上の権利関係の存否をめぐる紛争であり、民事訴訟手続によって解決が図られるものです。

したがって、遺産分割審判で相続財産の範囲について判断がなされても、当該判断には既判力※が生じません。

後になって当事者が審判の判断を争い民事訴訟を提起した場合は、審判と異なる判断がなされる可能性があります。

 


前の確定裁判でその目的とした事項に関する判断について、当事者は後の裁判で別途争うことができず、別の裁判所も前の裁判の判断内容に拘束されるという効力のこと。

 

相続人間で相続財産の範囲に争いがある場合、遺産分割調停や審判を申立てても、家庭裁判所から先に相続財産の範囲を確定するようにとの勧告を受けることになります。

 

訴訟手続

 

訴訟において相続財産の範囲を争う場合、

①特定の財産が相続財産ではなく自己固有の財産であると主張する相続人が提起する所有権確認訴訟、

②特定の財産が被相続人の相続財産に帰属することの確認を求める遺産確認訴訟、
という方法で相続財産の帰属を争うことになります。

 

①の訴訟において、原告たる相続人の請求が棄却され敗訴が確定した場合、当該相続人が後の訴訟で当該財産について相続により共有持分を取得したと主張することは、前の判決の既判力に抵触して許されないとされています。

(最判平成9年3月14日)

したがって、①の訴訟を提起する場合は、予備的に相続による共有持分の取得を主張しておく必要があります。

 

なお、相続財産の確認に関する訴訟は、共同相続人間の紛争解決を図るために認められる手段であることから、共同相続人全員が当事者として関与し、その間で合一に確定することが必要となります(固有必要的共同訴訟といいます。)。

 

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