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遺産分割事件における調停と審判

 

遺産分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人はその分割を家庭裁判所に請求することができるとされています(民法907条2項)。

遺産分割事件については、審判の申立(家事事件手続法39条)だけではなく、家事調停の申立(同244条)もできます。

 

遺産分割事件は、家庭に関する訴訟事件と異なり調停前置主義(同257条)が適用されないため、審判、調停いずれの申立もできます。

ただし、審判事件として申立てられた遺産分割事件は、職権で調停に付することができるとされています(同274条1項)。

 

調停として申立てられた遺産分割事件において調停が成立した場合は、審判事件に移行することなく事件は終了し、その調停調書は確定判決と同一の効力を有することになります(同268条1項)。

 

申立の方式

 

遺産分割の調停又は審判は、各共同相続人が申し立てることができます(民法907条2項)。

相続人と同一の権利義務を有する包括受遺者(同990条)、相続分の譲受人、包括遺贈の場合の遺言執行者(同1012条1項)も申し立てることができます。

調停・審判とも申立は書面で行います(家事事件手続法255条1項、49条1項)。

 

親権を行う父又は母とその子が共同相続人である場合、遺産分割協議で利益が相反するため、親権を行う者はその子のために特別代理人の選任を家庭裁判所に請求する必要があります(民法826条1項)。

成年被後見人と後見人が共同相続人で、後見監督人が選任されていない場合も、特別代理人の選任を家庭裁判所に請求する必要があります。

被保佐人と保佐人、被補助人と補助人がそれぞれ共同相続人である場合も、保佐監督人や補助監督人が選任されていない場合は、臨時保佐人、臨時補助者の選任を家庭裁判所に請求する必要があります。

 

裁判所の管轄

 

審判事件として申立てる場合の裁判所の管轄(土地管轄、以下同じ)は、相続開始地である被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です(家事事件手続法191条1項、民法883条)。

調停事件として申立てる場合の裁判所の管轄は、相手方の住所地(相手方が複数いる場合でその全ての住所地が異なる場合はその全てが土地管轄となる。)又は当事者が合意で定めた家庭裁判所になります(家事事件手続法245条1項)。

 

調停の成立・不成立

 

調停において当事者間に合意が成立し、これを調停調書に記載した場合は調停が成立します(家事事件手続法268条1項)。

調停が成立すると確定した審判と同一の効力を有します。

金銭の支払、物の引渡等の具体的給付義務を定めた調停調書の記載は、執行力のある債務名義と同一の効力を有するため、執行分等の付与を要することなく直ちに強制執行ができます。

 

当事者間に合意の成立する見込みがない又は成立した合意が相当でない場合、調停委員会は調停が成立しないものとして事件を終了させることができます(同272条1項)。

調停が不成立で終了した場合は、調停の申立時に遺産分割の審判の申立があったものとみなされて、審判手続きに移行し、審判手続が開始することになります(同272条4項)。

 

調停に代わる審判

 

家庭裁判所は、調停が成立しない場合において相当と認めるときは、一切の事情を考慮して、職権で事件解決のための審判をすることができます(家事事件手続法284条1項)。

この調停に代わる審判が確定すると、通常の審判と同様の効力を有するとされています(同287条)。

 

審判手続

 

認容の審判とは、申立が適法で、かつ、遺産分割の処分をすべきものと認められる場合になされるもので、その内容は遺産分割条項となります。

他方、却下の審判とは、申立が不適法、又は分割の理由ないし必要がない場合になされます。

 

遺産分割の審判は、これを受ける者が告知を受け、即時抗告期間(即時抗告権者が告知を受けた日の翌日から起算して2週間)が経過すると確定し、効力が生じます(家事事件手続法86条、民法140条)。

遺産分割の審判に対する不服申し立ては即時抗告の方法で行い(家事事件手続法198条)、原審家庭裁判所に書面で行います。

抗告裁判所が即時抗告に理由があると認めた場合には、原則として家事審判事件について自ら審判に代わる裁判をすることになります。

 

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