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遺留分の範囲
従来、相続人が被相続人から受けた特別受益は、全て遺留分算定の基礎財産に含まれることになっていました。
しかし、相続開始前の全ての特別受益が遺留分算定の基礎財産に含まれると、被相続人による生前贈与が無意味となってしまう等、問題が指摘されていました。
2019年7月1日以降に生じた相続については、相続人が受けた特別受益については、相続開始前10年間になされたものに限り遺留分算定の基礎財産に含まれることとなりました。
民法1044条
1項
贈与は、相続開始前の1年間にしたものに限り、前条の規定(注:遺留分を算定するための財産の価額に関する規定)によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、1一年前の日より前にしたものについても、同様とする。
2項
第904条の規定は、前項に規定する贈与の価額について準用する。
3項
相続人に対する贈与についての第1項の規定の適用については、同項中「1年」とあるのは「10年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする。
遺留分減殺請求から遺留分侵害額請求へ
従来、遺留分を侵害された相続人等は、他の相続人又は受遺者に対して遺留分減殺請求を行うことができると規定されていました。
改正前民法1031条(遺贈又は贈与の減殺請求)
遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するために必要な限度で、遺贈及び前条に規定する贈与の減殺を請求することができる。
しかし、遺留分減殺請求が申し立てられると、全ての財産が相続人による共有状態となってしまい、その分割を求めて共有物分割訴訟を提起する必要が生じる等の問題が生じました。
今回の民法改正により、遺留分減殺請求は、遺留分侵害額請求となりました。
遺留分侵害額請求とは、遺留分を侵害された相続人等が、贈与又は遺贈を受けた者に対して遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを要求するものです。
この改正により、相続財産が相続人等の共有になるといった事態は避けられることになりました。
民法1046条(遺留分侵害額の請求)
遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
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