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相続税と時効消滅

 

相続セミナー、相続税対策セミナーの講師を務めると、セミナー終了後に参加者から「時効になったら相続税は払わなくて大丈夫なの?」という質問が飛び出すことがあります。

所得税などの他の税目と異なり、個人に何億円もの税金が課税されるのは相続税くらいです。

(海外逃亡中の自動車会社の元役員は別ですが)

 

払わずに済むなら払いたくない・・・人情としては分かりますが、質問に対する答えは、「法律では時効消滅することはありますが、実際に「逃げ得」となることはまずありません」です。

 

賦課権と除斥期間

 

税務署が税務調査を行い更正、決定、賦課決定を行うことができる権利を「賦課権」といいます。

賦課権が存続する期間は税務署は税務調査を行うことができます。

 

この賦課権は除斥期間の経過により消滅します。

相続税の除斥期間は、相続税申告期限の翌日から5年で、この5年を過ぎるまで税務署は更正、決定、賦課決定を行うことができます。

 

脱税があった場合の更生等、偽りその他不正の行為により税額を免れ、又は税額の還付を受けた場合の除斥期間は7年となっています。

除斥期間は、時効期間と異なり、「更新」や「完成猶予」(民法改正前の中断と停止)がありません。

 

徴収権と時効期間

 

確定した租税債権の履行を促し、収納を図る権利を徴収権といいます。

国税徴収権の時効については、国税通則法に特別の規定があるものを除いて民法の規定が適用されることになります。

 

民法では、①債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、又は②権利を行使することができる時から10年間行使しないとき、には債権は時効消滅します。

(民法166条1項)

 

しかし、国税については、その処分の通知書が送達されたときには時効は更新され、通知書を発した日から1カ月を経過した日(納期限)の翌日から再度時効期間が進行するため、事実上時効が完成することはありません。

 

さらには、納期限を経過すると50日以内に督促状が発せられ、督促状を発した日から10日を経過した日までに納付がない場合、国税による差押えの要件を充足します。

 

したがって、実際には相続税の時効が完成する前に差押えがなされるため、「逃げ得」は許されない仕組みになっています。

 

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