解決事例
(実際の事件の一部を修正してご紹介しています)
A子さんは離婚に際しての財産分与の相談に来られました。
A子さんは、結婚して10年になる夫のBさんと離婚することになりました。
二人の間には子どもはなく、離婚では財産分与だけを話し合うことになりました。
婚姻期間中に二人は京都市内の中心部にマンションを購入し、二人の共有名義でマンションは登記しました。
今回不動産業者に査定を依頼すると購入時の価格より300万円ほど高い査定額が出されました。
共有しているマンションがある場合、どのように財産分与をすればよいのかというのがA子さんのご相談内容でした。
買った時より値上がりした不動産を売却して売却益が出る場合(本件では300万円)、譲渡所得税を申告納税する必要があります。
譲渡所得税の税率は不動産の保有期間によって変わり、売却した年の1月1日時点で保有期間が5年以下の場合は39.63%(短期譲渡所得)、5年超の場合は20.315%(長期譲渡所得)となります。
本件ではマンションの保有期間が5年を超えているので、譲渡益300万円に長期譲渡所得の税率20.315%を乗じた60万円余りが譲渡所得税となります。
ただし、居住用不動産を売却した場合、譲渡所得から最高で3,000万円まで控除できる特例があるため、この特例を利用すれば実際に譲渡所得税を納税する必要はなくなります(申告は必要です)。
(共有不動産の場合、要件を満たせば共有者ごとに3,000万円の控除の適用を受けることができるため、本件ではA子さんとBさん併せて6,000万円の控除を受けることができます。)
したがってA子さんとBさんの場合、申告をすれば譲渡所得税を負担することなく、マンションの売却代金全額を分与の対象とすることができます。
注意が必要なのは離婚後、新たにマンション等の不動産を購入する場合です。
不動産を住宅ローンで購入した場合、毎年年末のローン残高の1%を所得税から控除することができる住宅ローン控除という制度があります。
住宅ローン控除は消費税が10%となってから不動産をローンで購入した場合、最長で13年間所得税の控除を受けることができる大変お得な制度です。
しかし、不動産を購入して居住を始めた年、その前年、その前々年に居住用不動産の3,000万円控除の特例を受けていると住宅ローン控除が受けられないのです。
したがって、離婚後新たに不動産を購入する予定がある場合は注意が必要となります。
A子さんにこうした話をしたところ、当面不動産を購入する予定はないので今回は譲渡所得税の特例を使って申告をした上で財産分与をすることになりました。
しばらくしてからA子さんからお礼の連絡があり、無事に財産分与が終わり、Bさんと離婚したということでした。
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