解決事例

(実際の事件の一部を修正してご紹介しています)

 

A先生は医療法人の理事長で、郊外で内科クリニックを開業しています。

勤務医を経て、開業医の父の跡を継ぐために実家に戻ってきました。

A先生が実家に戻るタイミングで父は院長と理事長をA先生に譲り、これまで二人で診療を続けてきました。

A先生には弟のBさんがいて、大阪の会社に勤めていました。

 

こうした状況の中、診療を続けていた父親が亡くなりました。

母親は既に亡くなっていたので相続人はA先生とBさんの二人。

父親は遺言を残さなかったので二人は話し合いで遺産を分割することになりました。

 

相続財産は医療法人の出資持分と一部クリニックとして使用している自宅土地・建物、そして預貯金や有価証券といった金融資産でした。

このうち医療法人の出資持分を評価してみると相続財産の半分以上を占めることが分かりました。

医療法人の持分はクリニックを引継ぐA先生が相続しないと意味がありません。

また自宅についても、クリニックとして使用してるためA先生が相続する必要があります。

残る金融資産は相続財産全体の2割ほどのため、出資持分や自宅を全てA先生が相続してしまうと、Bさんが相続できるのはA先生の相続分の4分の1になってしまいます。

 

A先生はBさんと遺産分割の話合いを始めたところ、Bさんは、A先生が出資持分と自宅を相続することは認めてくれましたが、代償金の支払を要求してきました。

A先生が相続財産の3割に相当する代償金を支払えば、Bさんは預貯金と合わせて相続財産の半分を相続できることになります。

 

しかし、A先生はこのBさんの要求に応じることはできませんでした。

そもそも出資持分は換金することができません。

自宅は換金できますが、換金するとクリニックを続けていくことができません。

さらにA先生は相続税の納税資金も別途準備する必要があります。

困ったA先生は、Bさんとの交渉を当事務所に依頼してきました。

 

早速当事務所の弁護士がBさんに連絡を取ると、Bさんも弁護士に依頼をして弁護士同士で協議することになりました。

確かにBさんの要求は一見もっともなように見えますが、Aさんがクリニックを続けるためには出資持分や自宅を相続する必要があります。

特に出資持分は誰が相続しても換金できないため、Bさんが相続しても意味がありません。

Bさんが出資持分を相続して払戻し請求権を行使することもできなくはありませんが、そんなことをしても医療法人にお金がないと意味がありません。

 

さらには父親が残した財産をA先生とBさんが半分づつ分けることが真の平等とは限りません。

責任の大きさに応じて相続する財産額を変えることも遺産分割の考え方としてはありです。

こうした主張をBさんの弁護士に粘り強く説明しました。

他方、A先生とは代償金としていくら準備ができるのかを相談しました。

相続税の納税資金が必要となることなどを踏まえ、Bさんの要求額の半分程度であれば準備できることになりました。

 

そこで改めてBさんの弁護士に連絡取り、A先生が準備できる金額の半分から代償金の額についての交渉をスタートしました。

交渉は長引きましたが、出資持分がお金に変わらないことを粘り強く説明し、最後はA先生の準備できる金額の約8割を代償金として支払うことでBさんと遺産分割を合意することができました。

遺産分割が合意できたため、相続税の申告で自宅の土地に小規模宅地の特例の適用を受けるこができ、相続税の申告・納税も何とか終えることができました。

事件が解決したはA先生が相談に来られてから10か月後でした。

 

 

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