解決事例
(実際の事件の一部を修正してご紹介しています)
Aさんとは、以前相続セミナーを行った金融機関の支店で、支店長のご紹介でお会いしました。
Aさんはその地方の名家の当主で、奥さんと子どもが二人(長男のBさん、次男のCさん)がいます。
Aさんの相談は、2年前のAさんの父甲さんの相続に関するものでした。
甲さんは生前、多数の不動産を資産管理会社を通じて保有していました。
甲さんは自分の相続のときに多額の税金がかかることを心配して資産管理会社の顧問税理士さんに相談をしたところ、遺言を作成してその資産の一部をBさんに遺贈する世代飛ばし遺贈を勧められました。
世代飛ばし遺贈とは、自分が亡くなった時に自分の子ではなく、自分の孫に財産を遺贈するものです。
一般的に世代飛ばし遺贈は相続税対策になると言われています。
なぜなら、祖父→子→孫と財産が承継されると同じ資産に相続税が2度課税されるところ、祖父→孫と承継すれば相続税は1度で済むからです。
なお、祖父に子がいる場合、孫は祖父の法定相続人とならないため、祖父から孫に財産を承継するには孫に財産を遺贈するという遺言を作成する必要があります。
そこで甲さんは税理士さんのアドバイスに従い、自分の長男であるAさんをやがて継ぐであろうBさん(Aさんの長男)にも資産管理会社の株式を遺贈する遺言を作成しました。
こうした準備をして2年前に甲さんは亡くなったのですが、ここにきてBさんが家を継がないと言い出したのです。
Aさんにすれば正に青天の霹靂です。
父甲さんが相当な株式を長男のBさんに遺贈したのは、まさにBさんが本家を継ぐからこそです。
Bさんが家を継がないなら、Bさんの弟である次男のCさんに家を継がせる必要があります。
支店長のご紹介もあったので当事務所でAさんの相談を受けることになりました。
幸いBさんは遺贈を受けた株式を返すことには同意しています。
あとは、①誰に、②どのような手段で、移転するのかが問題となりました。
①誰に、については、Bさんから父のAさんに株式を返してしまうと、Aさんの相続の時に再び相続税がかかります。
それでは甲さんが世代飛ばし遺贈をした意味がなくなってしまうので、Bさんから弟のCさんに株式を移転することにしました。
次に、②どのような方法で、が問題となりました。
Bさんには妻と子がいるので、いまBさんに相続が発生すると祖父から遺贈を受けた株式が妻や子に相続されてしまいます。
そこで、Bさんは、祖父から遺贈を受けた株式は弟のCさんに遺贈するという遺言を作成しました。
この遺言はBさんの妻や子の遺留分を侵害するものですが、Bさんから経緯を説明してもらい、納得してもらいました。
その上で、BさんからCさんへの株式への移転は暦年課税の贈与を使うことにしました。
幸い贈与するのは株式のため、その都度評価をする必要があるものの、贈与税の負担を考えながら毎年贈与する株式数を調整できます。
当初、Cさんが父Aさんから資金を借入れ、Bさんから株式を買い取る方法も検討しまいたが、資金の返済のめどが立たないため断念しました。
こうして、BさんからCさんに暦年課税の贈与を活用して株式を移転することになりました。
その道半ばでBさんに相続が発生すると先に作成した遺言に従い、移転が未了な株式についてはCさんい遺贈されることになります。
何とか株式をBさんからCさんに移転する目途は立ちました。
しかし、Bさんの相続でCさんが株式を遺贈されると、CさんはBさんの兄弟のため相続税の2割加算の対象となります。
相続税対策のために行った世代飛ばし遺贈が予想外の結果となった事例でした。
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