解決事例

(実際の事件の一部を修正してご紹介しています)

 

相続の相談に来られたA子さんは開口一番、自分の名前が遺言に無かったと言いだしました。

亡くなったのはA子さんの父親で、相続人は長女A子さん、長男Bさん、次女C子さんの3人です。

母親はずい分前に亡くなっていました。

 

父親は会社を経営しており、Bさんは父親の跡を継いで現在は会社の社長です。

C子さんは専業主婦で、家族と一緒に九州で暮らしていました。

一方、A子さんは数年前に離婚して、現在は子どもと3人で暮らしています。

 

A子さんは10年ほど前、父親の反対を振り切って結婚したこともあり、それ以後、家族とは没交渉になっていました。

父親のことも、亡くなった後に妹のC子さんから知らされ、かろうじて葬儀に出席できました。

 

それからしばらくして、信託銀行から父親の遺言を家族に開示したいという手紙が届いた、とC子さんから連絡がありました。

なぜ自分の所に信託銀行から連絡がこないのか、訝しがりながらもA子さんは10年ぶりに今は弟のBさんが家族で暮らす実家を訪れました。

 

兄弟3人が揃うと、信託銀行の担当者が公正証書遺言の写しを3人に配り、内容を読み上げました。

しかし、遺言では、経営していた会社の株式や自宅をBさんに、預貯金をC子さんに相続させると書かれており、A子さんの名前は一度も出てきませんでした。

 

担当者はこれから財産目録の調製にかかりますと言って帰っていきました。

BさんとC子さんはさすがに気まずそうでしたが、特にA子さんに声をかけることもありませんでした。

 

A子さんから相談を受け、当事務所では早速、BさんとC子さんに対して遺留分減殺請求(本件は相続法改正の前のもの)を行うため配達記録付内容証明郵便を送付しました。

 

その上で二人に連絡を取って解決方法を話し合うことにしました。

Bさんとは、会社の税理士さんを交えて、当事務所の弁護士と3人で面談を行いました。

Bさんは、A子さんの遺留分を侵害していることは理解しているが、相続したのが会社の株式や自宅のために支払うお金が用意できないという話でした。

一方、預貯金を相続したC子さんからは、遺留分をしっかり計算してくれるのならば支払いに応じるとの返事をもらえました。

 

二人との話し合いの結果をA子さんに伝えると、お金がないと言っている弟のBさんには気の毒だが、自分も子どもを2人育てているので遺留分はしっかり受取りたいということでした。

 

そこで改めてBさんと協議を行い、遺留分相当の現金を分割で支払ってもらうことになり、念のために執行認諾文言を付けた公正証書を作成しました。

A子さんには、Bさんの自宅に抵当権を設定してもらうことも要求できると話しましたが、そこまでしたくないというのがA子さんの答えでした。

 

こうして、A子さんの遺留分減殺は、調停を利用することもなく、当事者間の話合いで無事に終了しました。

それにしても亡くなった父親は、こうした遺言を作成したことで、生前のA子さんとの確執を自分が亡くなった後にもA子さんに引きずらせることになりました。

父親の真意は分かりませんが、A子さんは最後の最後に受けた父親の仕打ちを決して忘れないだろうと思うと、少しばかり残念でした。

オールワンへの
お問い合わせ・ご相談予約