解決事例

(実際の事件の一部を修正してご紹介しています)

 

夫との離婚交渉を依頼したいといってA子さんは事務所に来られました。

夫のBさんは会社を経営していて、二人の間には息子のCさんがいます。

 

現在、A子さんとCさんは自宅で暮らし、Bさんは会社で所有するマンションで暮らしており、二人は別居状態でした。

Cさんは大学卒業後、一旦父Bさんの会社に就職しましたが、Bさんに反発して会社を退職し、現在は別の会社に勤めていました。

 

A子さんの話では、Bさんは昔から独善的で、会社でも家庭でも全てのことを自分で決めないと気が済まないタイプ。

家事やCさんが子供のころの育児まで、全てA子さんに口うるさく命令してきたということでした。

 

A子さんは夫の会社の仕事をたまに手伝うほか職業経験がないため、離婚での財産分与を少しでも多く獲得して欲しいと話していました。

 

A子さんからの依頼を受け、婚姻費用分担と夫婦関係調整の調停を申立てました。

調停が始まるとBさんも弁護士と一緒に話合いに臨んできました。

 

婚姻費用の金額や離婚することについては早期に合意ができました。

 

問題は財産分与でした。

Bさんは、預貯金や不動産を財産分与の対象に含めることについて同意しましたが、自ら経営する会社の株式を含めることは反対しました。

会社を大きくしたのは自分の力量と才覚であり、A子さんの貢献はないのだから財産分与の対象に含めるのはおかしいというのがその主張でした。

 

会社は、A子さんと結婚した後にBさんの父が亡くなり、相続でBさんが承継したものでした。

A子さんの話では、Bさんが承継した当時と比べて会社の売上は何倍にもなっているということです。

 

確かに会社を伸ばしたのはBさんの才覚や力量に拠るのかもしれません。

しかし、Bさんが仕事に専念できたのはA子さんが家事を頑張ってきたからであり、A子さんは会社の成長に間接的に貢献しているといえます。

 

そこでまず、Bさんが承継したときから会社がどの程度成長しているのか、現在の会社の価値はどの程度あるのかを調べるため、承継当時の決算書と直近3期分の決算書の提出を求めました。

当初Bさんは決算書の提出を拒みましたが、調停委員などの説得があり、最後は提出してくれました。

 

決算書を基に純資産方式で概算すると、現在の会社の価値は承継当時の10倍近くになっていることが分かりました。

一方、Bさん側も公認会計士に評価を依頼したところ、ほぼ同様の結果が出ました。

会社の価値増加分の半分を財産分与の対象に含めると、A子さんが取得する財産は、その他の財産だけを対象にする場合と比べてほぼ3倍になります。

 

Bさんに対して、算定結果を踏まえた財産分与を請求しましたが、Bさんは到底応じることはできないという返事でした。

会社の成長にA子さんの貢献をどの程度評価するのかという難しい課題に直面しました。

 

訴訟に移行すると、裁判所がどのような判断を下すのか予想がつきません。

A子さんの主張が認められるか否かで分与の額に3倍の差が付くので、裁判所の判断次第でいわば天国と地獄。

これはBさんにとっても同じです。

 

そこで何とか話合いでの解決を目指して調停期日間に何度も代理人同士で協議を続けました。

BさんはここでもA子さんの家事全般がいい加減だったなどと主張していましたが、やはり訴訟に移行するリスクについては十分分かっているようでした。

 

A子さんとBさん、双方の思惑が絡む協議でしたが、期日間の10回近い協議でなんとか着地点を見つけることができました。

A子さんの取得する財産は、当初の3倍には届きませんでしたが、それでも相当有利な合意ができました。

A子さんが最初に相談に来られてから解決まで約1年半かかりました。

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