解決事例

(実際の事件の一部を修正してご紹介しています)

 

A子さんは長女のB子さんに付き添われて遺言作成の相談に来られました。

夫に先立たれたA子さんは、現在、独身のB子さんの介護を受けながら二人で暮らしています。

A子さんの子どもは、B子さんのほか、関東で暮らしているB子さんの兄になるCさんがいました。

 

Cさんは亡くなったA子さんのご主人甲さんと若いころから折り合いが悪く、学校卒業後に関東の会社に就職してからは自宅に戻ることはほとんどありませんでした。

 

甲さんが亡くなった時も、Cさんは葬儀の当日に現れて、葬儀が終わると早々に帰っていきました。

四十九日が終わった後、遺産をどうするのか相談するためにA子さんがCさんに連絡すると、Cさんは遺産の4分の1を現金でほしいと言い出しました。

 

遺産は古くなった自宅といくらかの預貯金だけだったので、遺産の4分の1をCさんが相続するとあとは自宅が残るだけになります。

それでもCさんが執拗に現金を相続することを主張したため、Cさんが現金の大半を相続し、自宅はA子さんが相続することになりました。

その結果、父甲さんの相続でB子さんはなにも相続することができませんでした。

 

こうしたことがあったため、自分が亡くなった後、自宅を自分を介護しているB子さんに残して、B子さんが安心して暮らせるようにしたいというのがA子さんの希望でした。

 

民法では亡くなった人を生前介護していた相続人がいる場合、何もしていない他の相続人よりも遺産を多く相続することができる寄与分という制度があります。

もっとも、介護をしていた人が寄与分を主張しても、他の相続人が認めないと、最終的には家庭裁判所が介護をしていた人に寄与分を認められるのか判断します。

 

しかし、家庭裁判所に寄与分を認めてもらうことはそう簡単なことではなく、実際にも亡くなった人の病院の送り迎えや、簡単な身の回りの世話程度では認めてもらうことは困難です。

本件は、A子さんが亡くなった後、B子さんが寄与分を主張してもCさんがそれを認める可能性はあまりなさそうです。

CさんがB子さんの寄与分を認めないと、あとは家庭裁判所がB子さんの寄与分を判断しますが、どのような判断がなされるのか分かりません。

 

一方、A子さんが遺言を作成してB子さんに自宅を相続させると書いておけば、Cさんは自分の遺留分が侵害されていない限りA子さんの決断を覆すことはできません。

今回のケースでは、Cさんの遺留分は相続財産全体の4分の1となるため、最大4分の3の遺産を遺言でB子さんに残すことができます。

 

A子さんは自宅不動産を含むすべての財産をB子さんに残すという遺言の作成に拘りました。

Cさんが遺留分を取り戻すのは仕方がないが、少しでも多くの財産をB子さんに残したい、Cさんには遺留分しか残したくない、というのがそのお気持ちでした。

 

A子さんにはそうした遺言を作成した場合、B子さんは遺留分減殺請求をCさんから遺留分減殺請求を受ける可能性があると説明しましたが、A子さんのお気持ちは変わりませんでした。

そこで、「別紙目録の不動産を含む全ての財産をB子さんに相続させる」との文言、日付及び名前をA子さんが自書、押印した書面と、不動産の全部事項証明書を一緒に綴じみ、全部事項証明書にもA子さんが名前を自書・押印した自筆証書遺言を作成しました。

 

全部事項証明書を使用したのは、相続登記におけるB子さんの負担を軽減するためです。

B子さんには、相続開始後、Cさんから遺留分減殺請求を受けた場合、すぐに相談に来るよう伝えて本件の遺言作成は無事に終了しました。

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