解決事例

(実際の事件の一部を修正してご紹介しています)

 

以前、公正証書遺言を作成したお客様のご紹介でAさんは来所されました。

Aさんのご相談は、自筆の遺言を作りたいというものでした。

 

Aさんは独身で、定年まで中学校の先生として教鞭をとってきました。

親戚は10歳ほど年の離れたお兄さんが一人いますが、現在は没交渉で、会ったのは20年ほど前のお母さんの葬式の時が最後ということでした。

 

Aさんは平日は大阪市内の自宅で一人暮らしをしていますが、金曜日から日曜日にかけては、京都市郊外にある別荘で過ごしていました。

別荘は分譲されたもので、Aさんと同じように週末別荘で暮らす人が何人もいて、その中でも気の合う人何人かと一緒に周辺を散策したり、夜になってお酒を酌み交わすのがAさんの楽しみでした。

 

そんなAさんが古希を過ぎたころ、別荘仲間の女性がエンディングノートを作っていることを知り、自分も作ることにしました。

 

書店でエンディングノートを買い求め、自分や唯一の親せきである兄のこと、将来認知力が低下してきたときの身の処し方や亡くなった後の葬儀納骨に関する希望を一通り書き記しました。

 

こうしてAさんはエンディングノートを作成したのですが、自分が亡くなった後、誰かがエンディングノートを見て兄に連絡をしてくれたとしても、没交渉となっている兄が自分の葬儀や納骨をしてくれるかどうか分かりません。

 

そもそも兄の方が高齢なので、自分が亡くなった時まで生きている保証もありません。

改めて考えてみると、兄に財産を残すことを自分は望んでいないとAさんは思うようになりました。

 

そこでAさんは遺言を作成して、現在の別荘生活でお世話になっているある方に自分の財産をもらってもらうことにしました。

 

エンディングノートには財産の分け方などの希望を書くこともできますが、法律的にはあくまで「希望」に過ぎません。

遺言がなければ相続人間の遺産分割協議が必要となりますし、法定相続人以外の人に財産を残すこともできません。

 

一方、遺言を作成して、その中で財産を「誰に」「何を」「どのくらい」残すのかを書いておくと遺言を作成した人の希望には法的な効力が生じます。

Aさんには兄が一人いますが、兄は遺留分がないため、財産をどう残すのかについてAさんが自由に決めることができます。

 

そこで、Aさんの希望を叶える遺言を当事務所が一緒になって作成することにしました。

Aさんの希望は別荘仲間のある人に全財産を残したいというものなので、「誰に」「何を」「どのくらい」残すのかについては最初から明確でした。

 

次にAさんと相談したのは、Aさんが所有している大阪市内の自宅と京都の別荘についてです。

これらの不動産をそのまま別荘仲間に残しても困るのではないかという話となり、遺言で当事務所(弁護士法人)を遺言執行者を指定した上で、遺言執行者が不動産を売却して、その売却代金を残すということになりました。

 

不動産の財産目録については、相続法の改正によりAさんが自書する必要がないため、当事務所で目録を作成した上でAさんが署名押印し、Aさんが自書した遺言本体と綴じ合わせて自筆証書遺言を作成しました。

 

そして最後に、Aさんは独り暮らしのため自宅で倒れても誰も気づかないということがあり得えます。

そこで別荘仲間にお願いして、Aさんが別荘に顔を見せないときなどに電話してもらうなど、定期的に連絡を取ってもらうことにしました。

 

こうして最初に相談に来られてから1カ月でAさんの自筆証書遺言は完成しました。

遺言は当初はAさんが保管し、2020年7月になったら遺言書保管所に保管申請することになりました。

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