解決事例

(実際の事件の一部を修正してご紹介しています)

 

A子さんは約10年前にBさんと結婚し、小学校と幼稚園に通う2人の子がいました。

Bさんは飲食店を経営していましたが、客足が伸びず、経済的には厳しい状況ということでした。

 

そうしたお金問題もあり、最近、2人の間には口論が絶えず、時にはBさんが食器を床にたたきつけて壊してしまったこともあったそうです。

 

子どもたちは何時もBさんの顔色をうかがっており、そのストレスが原因で下の子は夜中に突然ひきつけを起こしたように大泣きすることもあったそうです。

 

こうした生活に耐えられなかったA子さんは、Bさんと別居することを決意しました。

A子さんはその準備として、別居する3カ月前から少しずつBさん名義の銀行口座からお金を引出し、自分の銀行口座に移していました。

自分の口座に移したのは総額で200万円ほど、元の預金残高250万円の5分の4にあたる金額でした。

A子さんは預金を引出した後、Bさんが仕事に行っている間に、予め契約していた同じ市内のハイツに荷物を運び出し、Bさんとの別居を開始しました。

 

別居開始後、Bさんはラインで一度会って話し合いたいと言ってきましたが、A子さんはBさんとの面会を断り続けました。

 

しばらくすると、Bさんが離婚調停(夫婦関係調整調停 円満)を申立てたとの連絡が家庭裁判所からA子さんに届きました。

 

相談を受けた当事務所では、A子さんが生活費をBさんから受け取っていないとの事情を聴取したため、Bさんに対して、婚姻費用の負担の調停を申立てることをアドバイスしました。

A子さんはアドバイスに従って婚姻費用の分担の調停を申立て、この調停はBさんが最初に申し立てた夫婦関係調整調停と併合されることになりました。

 

調停の最初の期日、婚姻費用の負担についてBさんは、A子さんが200万円を勝手に持ち出しているので、それらの金員を婚姻費用に充てるべきであり、したがって支払う婚姻費用はない、との主張でした。

自分名義の口座から預金が引出され、子どもを連れて出て行ったA子さんに婚姻費用を支払いたくないというBさんの気持ちは分からないではありません。

 

しかし、婚姻費用は日々の生活に必要なお金にかかわる問題です。

特に小さな子供が2人いてすぐに働くことができないA子さんにとっては、Bさんに婚姻費用を一定程度分担してもらう必要があります。

 

そこで調停委員に対して、持ち出した預金については、将来離婚するときの財産分与で考慮することにして、別途婚姻費用をBさんに負担してもらうよう主張しました。

これに対してBさんは、自分の生活も苦しいし、A子さんもその気になれば働けるのだから婚姻費用を負担する必要はないと主張されたようでした。

 

しかし、最終的には調停委員の説得もあり、別居時の預金の持ち出しは財産分与で解決することにして、それとは別に婚姻費用を負担することについてBさんは納得してくれました。

もっとも、A子さんが200万円の預金を持ち出したことを考慮して、婚姻費用の額については当面、裁判所の算定表の該当金額より少し低めの金額とすることになりました。

 

その後、夫婦関係調整調停は不成立となりましたが、A子さんは婚姻費用の支払いを受けながら、現在もBさんと別居を続けています。

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