解決事例

(実際の事件の一部を修正してご紹介しています)

 

甲子さんが亡くなりました。

既に夫は亡くなっていたので、相続人は子Aさん、Aさんの子(甲子さんの孫)で3年前に甲子さんと養子縁組をしていたBさんでした。

 

甲子さんは生前、遺言公正証書を作成していました。

預金の引出し等の必要から、初七日の法要後にAさんが早速遺言の内容を確認してみました。

 

すると、甲子さんはBさんと養子縁組をしてにもかかわらず、全財産をAさんに相続させるという遺言を作成したことが分かりました。

 

養子縁組までした母甲子さんが、なぜ自分に全ての財産を相続させる遺言を作成したのか理由を教えて欲しいと言ってAさんは相談に来られました。

 

亡くなった甲子さんがどうしてこうした遺言を作成したのか、今となっては分かりませんが、一つ考えられるのは相続税対策としての養子縁組でした。

 

相続税の計算において、相続税課税価格の合計額から、3,000万円と、600万円に法定相続人の数を乗じた額を合算した金額(基礎控除)を控除することができます(相続税法15条1項)。

 

Bさんと養子縁組すれば基礎控除を600万円増やすことができるので相続税対策となります。

なお、同条2項では、被相続人の実子がいる場合、法定相続人の数に算入できる養子の数は1人となっていますが、本件では問題となりません。

 

甲子さんはBさんと養子縁組をして相続税対策を行い、一方で遺言を作成して自分の財産は本来それを全て相続するはずのAさんに残そうとしたのではないか、とAさんに伝えました。

 

しかし、甲子さんの養子縁組による相続税対策は実は大きな問題がありました。

相続税法63条は、養子の数を基礎控除の計算に算入することで「相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合」、税務署長の権限で養子の数を算入しないことができると規定きています。

 

Aさんから事情を聴いた限りでは、甲子さんとBさんが養子縁組する理由はなく、縁組したのも相続開始の3年前と比較的近い時期でした。

 

その後に公正証書を作成しているため、このまま相続税を申告すれば、Bさんが相続税を不当に減少させるための養子であると指摘を受ける可能性があります。

 

そこでBさんに相続財産を取得させるため、①改めてAさんとBさんで遺産分割協議を行う、②BさんからAさんに対して遺留分減殺請求を行う、ことをアドバイスしました。

 

Bさんが相続財産を取得することで直ちに不当減少養子の問題が解決するわけではありませんが、少なくとも財産を全く相続しないよりはベターではないかと考えたのです。

 

AさんとBさんは相談して、形式的にBさんからAさんに遺留分減殺請求を行うことになったそうです。

その後の相続税の申告は、Aさんが付き合いのあった税理士さんに依頼されたので税務調査の有無や内容は不明ですが、Aさん一人が全財産を相続するより状況が好転したのではないかと思っています。

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