解決事例

(実際の事件の一部を修正してご紹介しています)

 

新規に相続の相談に来られたのはAさん。

Aさんによると3か月ほど前に父さんが亡くなりました。

 

相続人は、母とAさんの2人だけ。

相続財産は自宅といくらかの預貯金だったので、全て母が相続することにして、遺産分割協議書を作成しました。

 

預貯金の母への名義書き換えはほぼ終わり、もう少し落ち着いたら自宅不動産の登記名義をお母さんに移そうと考えているとのことでした。

 

そんなある日のこと、母のもとに1件の電話がかかってきました。

電話は、甥のBさんからで、話によると、現在の会社に就職した際、亡くなった父がBさんの身元保証人になっていたとのこと。

 

忌引休暇を申請するため、Bさんが叔父さん(被相続人)が亡くなったことを会社に連絡すると、しばらくして人事部から新たな身元保証人を探すように言われたとのことでした。

そこでBさんは母に連絡をして、新たな身元保証人になってくれないか、と言ってきたのです。

 

しかし、そもそも身元保証についてはその期間等を制限する法律があります。

身元保証ニ関スル法律(身元保証法)によると、身元保証契約の期間は5年を超えることはできず、5年を超えて期間を定めると5年に短縮されることになっています(2条)。

 

身元保証契約の更新はできますが、更新期間はやはり5年を超えることはできません。

また、身元保証契約の自動更新は無効であると解されています。

 

そこで、Aさんに、Bさんから身元保証契約の内容が分かる書類を入手するように指示しました。

後日Aさんが、Bさんから入手した身元保証契約書を見ると、当初の契約日は今から10年前、自動更新条項は付いていますが、その後被相続人との間で契約の更新をした形跡はありませんでした。

 

そこでAさんに対して、Bさんに当初の身元保証契約は消滅していること教えてあげるようにアドバイスしました。

 

その上で、入社時に、身元保証人がいなくなった場合、従業員が新たな身元保証人を探す必要があるといった取決めをしていないのであれば、会社が一方的に新たな身元保証人を探すように命令できない可能性が高いことも説明しました。

 

次に相続人であるAさん、Aさんのお母さんは身元保証契約を相続することはありません。

身元保証契約は、本人と身元保証人の格別の信頼関係を基礎をおくものであり、責任も広範囲に及ぶことから、身元保証債務は身元保証人に一身専属的に帰属していると考えられるからです。

 

なお、身元保証契約期間中に、本人が問題を起こしたため、既に具体的な債務(損害賠償義務等)が生じている場合、当該具体的な債務は相続の対象となります。

 

本件では、そうした事実もなかったため、Aさんやお母さんが被相続人の身元保証債務等を相続することもありませんでした。

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