解決事例
(実際の事件の一部を修正してご紹介しています)
A子さんは25年間連れ添ったBさんと離婚することになりました。
2人の子どものうち1人は既に独立しており、もう1人も大学生で就職先から内定をもらっていました。
夫のBさんは看護師で、結婚したころから同じ病院で働いているとのことです。
A子さんも以前は看護師として働いていましたが、子供の出産を機に仕事を辞め、これまで専業主婦として暮らしてきました。
A子さんが相談に来たのは財産分与についてでした。
夫名義になっている自宅、自家用車、預貯金、そして夫が将来受け取る予定の退職金が財産分与の対象となるのか心配されていました。
自宅や自家用車については、名義がBさんになっていても、夫婦の共有財産と評価できるのであれば財産分与の対象となります。
預貯金についても同様で、Bさん名義となっていても、結婚してから別居するまでに2人で築いた預貯金は財産分与の対象です。
問題は退職金です。
相手が公務員の場合、民間企業と異なりほぼ間違いなく退職金が支給されます。
公務員が将来受け取る退職金のうち、別居までの婚姻期間に対応する部分については財産分与の対象に含まれることになります。
しかし、民間企業の場合、退職金が必ず支給されるとは限らないため、ケースバイケースで判断することになります。
本件でBさんの退職金を財産分与の対象に含めるには、将来勤務先から退職金を受取ることができる必要があります。
次に、Bさんが退職金を受け取ることができるためには、勤務先の就業規則に退職金支給規定があることが前提です。
さらに、退職金支給規定には、①退職手当の定めが適用される労働者の範囲、②退職手当の決定、計算及び支払いの方法、③退職手当の支払いの時期に関する事項、を記載する必要があるため、Bさんが「退職手当の定めが適用される労働者」に含まれることも必要となります。
Bさんがこれらの条件を満たしていれば、勤務先の経理部等から退職金見込額証明書等を取得し、財産分与の対象に含める退職金を確定することになります。
Bさんの勤務先における退職金支給規定の有無及びその内容の確認、そして経理部等からの退職見込額証明書の取得にはBさんの協力がないと少し厄介です。
Bさんが協力してくれないと、財産分与の算定に必要であることを明らかにした上で弁護士法による照会を行うか、調停等を申立てた上で裁判所の調査嘱託の申立を行うことになります。
そこで、まず任意の協力を得るためにBさんと面談し、退職金支給規定の確認等を依頼しました。
面談当初、Bさんはずい分迷惑そうな様子でしたが、それでも協力を約束してくれました。
ただ、退職金見込額証明書の取得については、病院からの自己破産を勘繰られるのではないかとBさんが心配していたので「与信調査に必要」と説明するようアドバイスしました。
Bさんが約束どおり調査に協力してくれた結果、Bさんには将来退職金が支給されることが判明したため、退職金見込額証明書を取得することにしました。
退職金は勤務年数に従い金額が逓増するのが一般的であるため、財産分与の対象となる部分を算定するのは骨が折れましたが、どうにか算定することができました。
そして最後には、Bさんの退職金中、財産分与の対象となる金額相当について、預貯金をA子さんが余分に取得することで財産分与は無事に終了しました。
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