解決事例
(実際の事件の一部を修正してご紹介しています)
AさんはB子さんと5年ほど前に離婚しました。
AさんとB子さんには当時中学生だったC子さんがいましたが、B子さんが親権者としてC子さんと暮らすことになりました。
離婚の際には公正証書を作成し、Aさんが支払う養育費についても取決めがなされていました。
公正証書を確認すると、AさんはC子さんが22歳になるまで、相場よりかなり高額の養育費を支払うことと、「高校・大学への進学の際の入学金等」については別途協議すること、と記載されていました。
Aさんは、今回、Bさんから養育費の一時金として約200万円請求されたが、その対応について相談したいとして当事務所に来られました。
さっそくB子さんからの手紙を確認すると、C子さんが高校を休学して1年間海外に留学をすることになったので、その諸費用の半分を養育費として支払ってほしいと書いてありました。
Aさんは会社を経営しており、200万円は決して払えない金額ではありませんでした。
しかし、自分に相談もなくC子さんの海外留学を決めて、その費用だけ半分払えというB子さんの要求に釈然としないものを感じているようでした。
それでは、いくらまでなら支払っていいのかとAさんに尋ねると、それが分からないので相談に来たということでした。
改めて公正証書の文言を確認すると、「高校・大学への進学の際の入学金等について別途協議する」と書かれています。
入学金等の「等」に海外留学の費用が含まれるのか、が問題となりえますが、やはり高校や大学の入学金と、海外留学の費用は性質が異なるといえそうです。
さらにAさんに課された義務は「協議すること」であり、入学金等を必ず支払うことは義務になっていないと考えられます。
こうしたことを踏まえて、AさんにはB子さんからの要求に応じる必要はないと説明しました。
するとAさんは、支払を断るとB子さんがしつこく連絡をしてくるので、B子さんとの交渉一切を当事務所に依頼したいということになりました。
Aさんからの依頼を受け、さっそくB子さんに請求された海外留学の費用の一部についてAさんは支払う意思も義務もないことを受任通知とともに内容証明郵便で連絡しました。
ほどなくB子さんから、Aさんが一切費用を支払わないのは納得できない、協議に応じないことは不誠実であると連絡がありました。
そこで改めてB子さんに、協議にはAさんの代理人として弁護士が応じるが、費用を負担しないというAさんの気持ちは変わらないでしょうと連絡しました。
こうしてB子さんと何度かやり取りをしたのですが、気になったのが公正証書の合意管轄に関する取り決めでした。
合意管轄とは、当事者間で争いが生じた場合、どの裁判所で決着をつけるのかについての取決めです。
2人の離婚公正証書によると、合意管轄はB子さんの住所地の裁判所となっていました。
B子さんは現在東京に住んでいるため、争いが生じると霞が関の東京家庭裁判所に管轄が生じる恐れがありました。
TV会議システム等の利用もできますが、管轄がB子さん側に認められて調停となると、やはり時間やお金がかかります。
そこでAさんと相談の上、今回は50万円に限り養育費の一部として支払うこと、今後、事前協議のない養育費については一切支払わない合意を改めて締結することにしました。
改めてB子さんに連絡を取り、Aさんの提案を伝えたところ、当初は50万円という金額に難色を示していましたが、最終的には受け入れることになりました。
そこで、上記取決めを内容とする合意書を作成することとして、合意書作成後、AさんがB子さんの口座に50万円を振り込み、本件は解決しました。
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