解決事例
(実際の事件の一部を修正してご紹介しています)
知り合いの社会福祉法人の理事長から、入居者が遺言を作成したいと言っているので相談に乗ってもらえないかと連絡を受けました。
相談を受けるので、入居者本人から電話をしてもらうように伝えると、その日のうちに社会福祉法人が運営するケアハウスに入居している男性のAさんから電話がありました。
Aさんはこれまで結婚したことがなく、両親も随分前に亡くしていました。
肉親といえるのは、5年ほど前に亡くなった弟の子ども、すなわち甥が2人いるだけで、その甥とも普段は行き来がなく、弟の葬式以来顔を合わせていないということでした。
Aさんの希望は、自分が亡くなったあと、自分の財産をお世話になっている社会福祉法人に寄付したいというものでした。
Aさんの話によれば、Aさんの推定相続人は弟の代襲相続人となる甥2人だけです。
甥2人には遺留分がないため、Aさんは遺言を作成することで財産を誰に残すのか(寄付するのか)自由に決めることができます。
そこでAさんと当事務所は遺言公正証書の作成を目的とする契約を締結しました。
契約締結後、念のためAさんの戸籍を収集し、Aさんの推定相続人を確認したところ、Aさんの話のとおり、推定相続人は甥2人だけでした。
次に遺言の内容ですが、遺言執行者を指定した上で、遺言施行者が財産を換価した上で、社会福祉法人に寄付する必要があります。
そこでAさんと相談の上、当事務所が遺言執行者になることにしました。
ちなみに、Aさんが社会福祉法人に財産を寄付した場合、当該社会福祉法人には相続税は課税されません。
相続税法12条は「次に掲げる財産の価額は、相続税の課税価格に算入しない。」とし、その1項3号で「宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者で政令で定めるものが相続又は遺贈により取得した財産で当該公益を目的とする事業の用に供することが確実なもの」と規定しています。
そして、「宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者」として相続税法施行令2条には「社会福祉法人」が指定されています。
こうして遺言の内容を確定した上で、施設最寄りの公証人役場に連絡し、遺言公正証書の作成を依頼しました。
公証人との書類のやり取りや、遺言文言の調整後、公証人に入居施設に出張してもらい遺言公正証書を作成することにしました。
遺言公正証書作成の当日、証人として当事務所の弁護士と事務員各1名が遺言作成に立ち会い、無事に遺言公正証書を作成することができました。
なお、遺言作成後、Aさんの希望で、社会福祉法人の理事長にAさんが寄付を内容とする遺言を作成したことを伝えました。
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