解決事例
(実際の事件の一部を修正してご紹介しています)
亡くなった父の愛人と称する女性が、相続財産である不動産で喫茶店を営業しているので出ていくように説得してほしい。
そういってA子さん、Bさん、Cさんの3人が連れ立って事務所に来られました。
A子さんは被相続人の配偶者、Bさん、Cさんは被相続人の子です。
A子さんらの話によると、被相続人が亡くなった後、相続財産を調べていると見知らぬ女性が相続財産である建物で喫茶店を営業していることが判明したとのことです。
A子さん、Bさんが喫茶店の営業時間に訪問すると、店主のD子さんは、お客さんの目を気にしてか、閉店後に改めて来てほしいと頼んだそうです。
閉店時間を待って改めて喫茶店を訪問すると、D子さんは、自分は5年前から被相続人と付き合っており、3年ほど前から被相続人の援助を受けて喫茶店を営業してきたということでした。
D子さんは、既に被相続人が亡くなっていることを知っていました。
A子さんらは、土地と建物は相続財産なのでお店を閉めて出て行ってほしいと伝えました。
するとD子さんは、この土地と建物は被相続人から生前贈与を受けたものなので、これからも喫茶店の営業を続けていくといって、A子さんらの要求を拒絶したということでした。
A子さんらの依頼を受けて当事務所がD子さんと交渉することになりました。
さっそくD子さんに連絡をとると、改めてD子さんは被相続人からの土地建物の贈与を主張しました。
そこで、贈与契約書の有無を確認すると、そうした書類は一切ないということでした。
贈与契約は口頭でもできますが、不動産のような高額な財産を贈与するといった場合、贈与契約書を作成するのが一般的です。
さらに、土地建物の登記名義が被相続人からD子さんに移されていないことの事情を確認すると、登記名義を移す必要があるとは知らなかったという説明でした。
A子さんらの話では、喫茶店のある土地は、被相続人が先祖から代々引き継いできたものであるということでした。
ふつうに考えれば、そうした大事な土地を付き合って間もない女性に贈与するということはあまり考えられないことです。
そこで、まず土地建物の登記をA子さんらに移転した上で、D子さんに対して、建物退去土地明渡請求を行うことにしました。
建物退去土地明渡請求は、建物の占有者であるD子さんに対して行います。
しかし、D子さんが喫茶店を又貸し等してしまうと、強制執行ができなくなります。
そこで訴訟提起に先立ち、占有移転禁止の仮処分を申し立てることにしました。
占有移転禁止の仮処分とは、建物占有者を固定する仮処分です。
占有移転禁止の仮処分後、仮にD子さんが他人に占有を移転しても、D子さんに対する判決で強制執行ができることになります。
早速、裁判所に対して仮処分の申し立てを行い、命じられた担保を積んで仮処分命令の発令をうけることができました。
仮処分命令の発令を受けた後は、執行官に対して保全執行の申立を行います。
執行官と相談した結果、喫茶店が開店する前に保全執行を実施することにしました。
執行当日、営業開始の1時間前に執行官と喫茶店前で待ち合わせをしました。
喫茶店前には執行官のほか、鍵を開扉する必要がある場合に備えて鍵屋さんも待機しています。
さっそく入口から執行官が呼びかけると、D子さんはすんなり入口を開けてくれました。
執行官から占有移転禁止の仮処分が出ていることを聞いてD子さんはかなり驚いている様子した。
執行官は喫茶店の中に入り、今後D子さんの占有を排除し、執行官に占有を移したうえでD子さんの使用を許すこと等を説明し、内部の状態を確認した後、公示書を貼付して保全執行は無事に終了しました。
保全執行の後、改めてD子さんに連絡をすると、保全執行に遭遇してA子さんらの「本気度」を理解したのか、改めて賃貸契約を結んで喫茶店の営業を続けたいと言ってきました。
A子さんらにD子さんの希望を伝えた上で相談した結果、やはりD子さんには出て行ってほしいということになりました。
そこで改めて1か月の猶予を区切り、建物から出ていくようにD子さんに伝えました。
そして、1か月が経過。
本当にD子さんが出ていくのか心配していましたが、A子さんらが確認に行ってみると、喫茶店は閉じられており、入口に閉店を知らせる紙が貼ってあったということでした。
建物の鍵は郵送で事務所あてに送られてきました。
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