解決事例
(実際の事件の一部を修正してご紹介しています)
父が亡くなったといってAさんが相続の相談に来られました。
相続人は、妻のB子さん、長男のAさん、長女でAさんの妹のC子さんの3人でした。
被相続人は遺言を作成しており、遺言には、自宅の土地建物をAさんが相続し、金融資産その他相続財産を3分の1ずつB子さん、Aさん、C子さんが相続するようにと書かれていました。
遺言が作成されたのは、被相続人が亡くなる15年ほど前。
当時、自宅には被相続人と妻のB子さん、そして独身だったAさんが暮らしていました。
被相続人は自分が亡くなった後、Aさんがお母さんの面倒を見ながら自宅で生活することを願ってこうした遺言を作成したのではないか、ということでした。
ところが、その後長男は結婚して自宅を出て、今ではマンションを購入して家族と暮らすようになりました。
妻のB子さんはデイサービス等を利用しながら自宅で暮らしていましたが、近々、自宅を処分して介護サービスが充実したマンションに転居したいと思っていました。
ここで問題となったのが不動産を処分する際の税金でした。
Aさんの自宅は都心にあり、古くなった建物の価値はともかくとして、土地が購入した時よりずいぶんと値上がりしていました。
値上がりした不動産を売却すると譲渡所得税を支払うことになります。
不動産の所有期間が、売却した年の1月1日の時点で5年を超える長期譲渡所得の場合、譲渡益に対して20%(復興特別所得税を加えると20.315%)もの税金がかかります。
一方、居住用不動産を売却した場合は特例があり、3,000万円控除の適用を受けることができます。
しかし、この特例は不動産に居住していた本人が売却しないと使うことができません。
過去に居住していても、相続後に居住していなければの特例を受けることができないのです。
本件では自宅に居住していたのはB子さん。
別にマンションで暮らしているAさんが、自宅を相続して売却しても特例が使えません。
そこで、この特例を使うため、B子さん、Aさん、C子さんと相談した上で、改めて遺産分割を行うことにしました。
被相続人の遺言がある場合も、相続人や受遺者全員が同意すれば、遺言の内容とは別の形で遺産分割を行うことができます。
遺言の中に遺言執行者が指定されている場合、遺言執行者の同意を得る必要がありますが、本件では遺言執行者の指定はありませんでした。
そこで改めて遺産分割協議を行い、自宅をB子さんが相続することにして、金融資産は3人で均分に相続することにしました。
その上で、B子さんが相続した自宅を売却し、譲渡所得税の申告では居住用不動産を特例を受けることにしました。
その結果、自宅売却に係る譲渡所得税は発生しませんでした。
こうして遺産分割をやり直すことによって、税金の節約ができました。
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