解決事例

(実際の事件の一部を修正してご紹介しています)

 

最初にA子さんにお会いしたのは弁護士会の法律相談でした。

法律相談には、A子さんのほか、A子さんのお母さんも同席していました。

 

A子さんによると、夫のBさんは現在失業中で、これまでもパチンコ屋の店員など職を転々としてきており、A子さんと結婚した3年ほど前からは1年以上続いた仕事はないということでした。

 

Bさんの夢はギタリストになることで、A子さんと結婚するまではバンド仲間と路上ライブを開くなど、ギタリストを目指して頑張っていたようですが、結婚してからはギターを弾くことも少なくなっていました。

 

一方、A子さんは大学卒業後、現在も務めている会社に就職し、2人の生活費はもっぱらA子さんの収入が頼りという状況でした。

 

Bさんとの結婚はA子さんの両親、特にお父さんが反対したそうで、現在でもお父さんは2人の結婚を許していないということでした。

 

結婚当初はBさんのことをサポートしようと頑張ってきたA子さんでしたが、Bさんの自堕落な生活が3年も続いたことから、ここにきて離婚を決意したということでした。

 

A子さんは早速、Bさんに対して離婚したいと切り出しましたが、Bさんは離婚するつもりはないと言って離婚に反対したそうです。

 

それでも離婚することにしたA子さんは、お母さんに取りなしてもらい、お父さんに頭を下げて実家に戻ることにしました。

 

A子さんの荷物は、Bさんが留守にしている時を見計らって実家に運び出しました。

こうしたA子さんから依頼を受けて、まずは協議離婚を目指して当事務所がA子さんの代理人に就任しました。

 

早速、Bさんに受任通知を送付し、その後、A子さんから聞いていたBさんの携帯電話に連絡を取ってみましたが、Bさんは、A子さんとは離婚しないとの一点張りでした。

 

Bさんは転職を繰り返しながらも一応働いてきたことや、BさんからA子さんへの暴力や暴言といった事実が認められない本件では、仮に訴訟を提起したとしても裁判所は離婚は認められない可能性が高いと考えられました。

 

そこで調停委員からの説得を期待して、Bさん相手方として夫婦関係調整調停を申立てました。

Bさんは家庭裁判所からの呼び出しに応じ、毎回調停に出頭しました。

 

しかし、Bさんは当初から調停委員に対して、自分はA子さんと離婚はしないと明言していました。

A子さんの離婚したいという意思は固く、またこのまま別居期間が長期化すれば「その他婚姻を継続し難い重大な理由」として裁判上の離婚が認められる可能性があるとBさんを説得しました。

 

これに対してBさんは、これからはしっかりと働いてA子さんと頑張っていくとして離婚に応じませんでした。

 

そこでA子さんの離婚に対する思いを伝えるため、陳述書を提出することにしました。

調停委員によれば、陳述書を読んだBさんは、A子さんの離婚意思が強固であることを知って驚いていたということでした。

 

Bさんの態度が幾分変化したため、調停委員を説得して調停を続行してもらいました。

しかし、調停を申立ててから2年、A子さんから最初に離婚の相談を受けてから3年、最後はBさんが離婚にはやはり応じられないといったことから調停は不成立となりました。

 

A子さんとは、このまま別居を続けて、改めて夫婦関係調整調停を申立てるか、離婚訴訟を提起するのか、それぞれのメリット、デメリットを説明した上で、いずれの方針で進めるのか相談を重ねました。

 

その結果、裁判を起こしてでもBさんと離婚したいというA子さんの意思は固く、離婚訴訟を提起することになりました。

 

訴状に離婚原因として記載したのは、結婚後、Bさんが定職に就かずA子さんが2人の生計を支えてきたこと、A子さんが離婚を決意して別居を開始したこと、A子さんの離婚意思が固いこと、といったことでした。

 

正直、こうした理由だけでは裁判所が離婚を認めて可能性は低いだろう思われました。

裁判には、A子さんの主張や決意を裏付ける陳述書を始めとする証拠を提出することにしました。

 

裁判の進行は、2回目の期日から弁論準備手続に付され、裁判官、A子さんの代理人である当職、そして代理人を選任していなかったBさん自身が協議を重ねることになりました。

 

裁判になってもBさんは、A子さんと別れたくないという従来の主張を繰り返しましたが、代理人としてA子さんの離婚意思は固いこと、このまま別居が長期化すると離婚が認められる可能性が高くなることを改めて主張しました。

 

弁論準備期日が続行され、いよいよA子さん、Bさん本人の当事者尋問期日を入ろうかという弁論準備期日のことです。

 

裁判官がBさんに対して、このまま裁判が終わってもA子さんはあなたと一緒に暮らしたくないと主張しているので、いずれはA子さんの離婚請求が認められることになってしまうが、そこまで争うのが本意ですか、と質問をされました。

 

Bさんはその場で明確な回答をせず、さらにもう一期日、弁論準備期日が指定されました。

そして、次回の弁論準備期日を待っていると、当事務所にBさんから電話がありました。

 

Bさんの電話は、これ以上争いたくないのでA子さんの離婚に応じるというものでした。

ただBさんは、裁判所の判決といった形で離婚が成立するのは納得できないので、あくまでA子さんとは自分の自由意思で離婚することにしたいということでした。

 

そこで、訴えを取り下げることを条件にして、A子さんとBさんの離婚届を作成して提出することにしました。

 

Bさんは約束を守って離婚届にを提出してくれたため、裁判所に事情を話して訴えを取り下げることになりました。

 

こうしてA子さんはBさんと離婚しましたが、離婚が成立するまで、A子さんの最初の相談からほぼ5年の月日が流れていました。

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