解決事例

(実際の事件の一部を修正してご紹介しています)

 

A子さんは20年ほど前にご主人を亡くした後、夫の両親と暮らしてきました。

当時、A子さんの実家は兄が継いでおり、兄嫁との折り合いが悪かったA子さんは、義父、義母の勧めもあったため実家に戻らずにそのまま暮らすことにしたということでした。

 

両親を早くに亡くしたA子さんは、義父、義母を実の両親と思って暮らし始めました。

その後、義母が亡くなり、義父も5年前からほぼ寝たきりとなってしまいましたが、A子さんはデイサービス等を利用しながら義父の面倒を見てきました。

 

その義父が今回亡くなってしまいました。

義父の相続財産はA子さんが現在暮らしている自宅の土地建物といくばくかの預貯金でした。

 

義父には兄弟がなく、子どもも20年前に亡くなったA子さんのご主人だけだったので、義父には相続人がいませんでした。

 

相続人いない人の財産は最終的には国のものになってしまうと聞いたA子さんは、なんとか今の自宅に住み続けることができないかと相談に来られたのです。

 

A子さんケースでは、A子さんが義父と養子縁組していたら自宅等を相続することができましたが、A子さんに確認すると養子縁組はしていなかったということです。

 

また、義父が自宅等をA子さんに遺贈すると書いた遺言を作成していれば、A子さんは財産を相続できますが、やはり義父は遺言を作成していないということでした。

 

そこで特別縁故者の申立によってA子さんが自宅等を相続できないか、検討することになりました。

 

特別縁故者とは、被相続人に相続人がいない場合において、

① 被相続人と生計を同じくしていた者

② 被相続人の療養看護に努めた者

③ その他被相続人と特別の縁故があった者

がいる場合、これらの者が財産の相続を家庭裁判所に請求し、家庭裁判所が等々と認めるときは財産の全部または一部を相続できるという制度です。

(民法958条の3)

 

A子さんは義父と①生計を同じくしており、②被相続人の療養看護に努めていたため、こうした事情を説明すれば家庭裁判所がA子さんを特別縁故者として、義父の財産の相続を認めてくれそうでした。

 

そこでA子さんと相談の上、管轄の家庭裁判所に相続財産管理人の選任申立を行いました。

相続財産管理人とは、被相続人に相続人がいない場合において、相続人や相続債権者等を捜索し、必要に応じて相続債権者に弁済を行い、最終的に相続財産を国庫に帰属させる業務を行う者です。

 

相続財産管理人には通常弁護士が選任されます。

この相続財産管理人による相続人捜索の公告が終了してから3か月以内に、被相続人との具体的な関係を示した申立書を家庭裁判所に提出し、相続財産分与の請求を行います。

 

A子さんの場合も、相続人捜索の公告期間が終了するのを待って、申立書をに提出しました。

申立書には、A子さんが20年にわたり被相続人と生計を一にし、実の親子と変わらない生活を送ってきたこと、被相続人が亡くなる前5年間は献身的に介護をしてきたことを申立書に詳細に記入しました。

 

その結果、家庭裁判所は相続財産管理人の意見を聞いたうえで、A子さんが自宅の土地・建物を相続することを認めてくれたのです。

 

このように、今回A子さんは特別縁故者として義父の不動産を相続することができましたが、特別縁故者が常に財産を相続できる保障はありません。

やはりこうした問題に対処するには、養子縁組や遺言作成をしっかりやっておくべきです。

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