解決事例

(実際の事件の一部を修正してご紹介しています

 

最初に当事務所に相談に来られたのは相続人A子さんの夫甲さんでした。

甲さんの話によると、2か月前に妻のA子さんのお父さんが亡くなりました。

 

お母さんは既に亡くなっており、相続人は長女のA子さんと、A子さんの弟のBさんの2人。

お父さんは遺言を作成していなかったので、A子さんとBさんの協議によって遺産の分割を行うことになりました。

 

亡くなったお父さんは資産家で、2億円を超える金融資産と、いくつかの不動産を所有していました。

不動産は自宅を除いて全て賃料を生み出す収益物件で、中には大手スーパーに賃貸して月額100万円以上の賃料が入る土地(本件土地といいます)がありました。

 

四十九日が終わってからA子さんとBさんは遺産分割協議をスタートしましたが、本件土地をどちらが相続するかをめぐって2人は対立してしまったのです。

 

相続財産には他にも賃貸アパートやマンションなどがありましたが、いずれも築年数が古く、相続すると相応にメインテナンスをしないといけない物件でした。

 

一方、本件土地は、スーパーと定期借地権契約を締結しており、労せずして月々100万円を超える賃料が入ってくる魅力的な相続財産でした。

 

A子さんの夫によれば、A子さんとBさんは、お父さんが亡くなる前から関係が悪化しており、病気を患っていたお父さんを入院させる病院をBさんが相談もなく決めたといって、A子さんはBさんを非難していたとのことでした。

 

そうした背景もあり、本件土地をめぐって2人は対立してしまったのです。

このまま2人で話し合っていてもらちが明かないとして、A子さん、Bさんいずれも弁護士を代理人として遺産分割協議をすることになり。、当事務所はA子さんの代理人に就任しました。

 

当初、Bさんの代理人弁護士と代理人間で協議しましたが、A子さん、Bさんいずれも自分の主張を譲ろうとせず、やむを得ず家庭裁判所に調停を申立てることにしました。

調停委員に双方を説得してもらおうと考えての調停の利用でした。

 

調停を申立てたのが相続が開始してから約5か月後、最初の調停期日が指定されたのは相続開始してから約6か月後でした。

 

調停では調停委員を介して協議を続けましたが、調停でもA子さん、Bさん双方が本件土地を相続することを希望して話し合いは平行線でした。

 

一方、相続開始後10か月というタイムリミットがある相続税の申告期限が徐々に迫ってきました。

相続税の申告までに遺産分割が終わらない場合、相続財産である土地の評価額を圧縮できる小規模宅地の特例の適用を受けることができず、銀行預金の払い戻しもできないため納税資金をA子さん、Bさんが自分たちで用意する必要が出てきます。

 

A子さんが納税する必要がある相続税は1億円を超えていました。

そこで、納税資金についてA子さんに確認したところ、銀行からでも借りないと到底払うことはできない、とのことでした。

 

一方、Bさんの代理人にもそれとなく納税資金の準備について尋ねると、Bさんの方も同様に納税資金の準備ができないようでした。

 

ここにきてA子さん、Bさんは相続税の申告・納付の期限までに遺産分割を終わらせるという利害が一致したのです。

 

調停委員を交えて本件土地の相続について協議した結果、A子さん、Bさんとも本件土地を相続したいという希望は変わらないので、本件土地をひとまず半分ずつ共有で相続することにして、相続税の納税等が終了した後に改めて分筆することで合意ができました。

 

その他の不動産についても協議がまとまり、不動産を若干多く相続したA子さんについては、金融資産の相続を少し減らすことでバランスをとることにしました。

 

このような経過をたどり、本件はなんとか相続税の申告期限の1か月前に遺産分割協議を終えることができました。

なお、A子さんの相続税の申告は、そのまま当事務所が担当させていただきました。

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