解決事例

(実際の事件の一部を修正してご紹介しています)

 

相続に関するご相談に来られたAさんの相談内容は次のようなものでした。

 

5年前Aさんのお父さんが亡くなりました。

相続人は、Aさんのお母さん、長男のAさん、そして次男のBさんでした。

 

Bさんはそれ以前、生活費の不足を補うために複数の金融機関から借り入れを行い、結局返済に行き詰まって、妻と別れ、借金もそのままにして失踪してしまいました。

 

お父さんが亡くなった時にはBさんは行方不明になっていました。

亡くなったお父さんの相続財産は自宅の土地建物、そしていくらかの預貯金でした。

 

遺産分割の話合いをしようにも家族は誰もBさんの行方が分かりません。

結局、自宅はお父さんの名義のままお母さんが住むことになり、お父さん名義の預貯金は金融機関にお父さんが亡くなったことを知らせずにすべて引き出し、全額お母さんの口座に預け替えました。

 

今回はそのお母さんが亡くなってしまったのです。

お母さんの相続人は相談に来られたAさん、そして依然として行方が分からないBさんです。

 

Aさんは若い時に実家を出て別のところに自宅を構えていたので、お母さんが暮らしていて実家の土地建物は処分したいと思っていました。

しかし、土地建物の登記名義は5年前に亡くなったお父さんのまま。

 

今回実家の土地建物を処分するにあたっては、登記名義を一旦Aさんに移す必要があります。

Bさんが依然行方不明なので、困り果てたAさんが当事務所に相談に来られました。

 

実は相続人が行方不明というケースは決して珍しいものではありません。

相続人が行方不明の場合、大別して①行方不明者の失踪宣告を行う、②不在者財産管理人の選任を申立てる、方法があります。

 

【失踪宣告】

生死不明の者がいる場合、その者を法律上死亡したものとみなす効果が生じるものとして、失踪宣告という制度があります。

 

不在者の生死が7年間明らかでないとき(普通失踪)、戦争・船舶の沈没・震災など死亡の原因となる危難に遭遇し、その危難が去ったあと生死が1年間明らかでないとき(特別失踪)、家庭裁判所に申し立てることで失踪宣告を受けることができます。

 

失踪宣告がなされると、普通失踪の場合は7年経過後、特別失踪の場合は危難が去った時に、法律上死亡したものとみなす効果が生じます。

 

失踪宣告により当該相続人は死亡したとみなされるため、他の相続人らは、当該相続人に代襲相続人がいる場合は代襲相続人と、代襲相続人がいない場合は他の相続人らで遺産分割協議を行います。

 

本件では失踪宣告がなされるとBさんの代襲相続人であるBさんの息子さんと遺産分割協議をすることになります。

ただ、Aさんからよく話を聞いてみると、Bさんが行方不明になってから7年が過ぎたのかどうかよく分からないということでした。

 

【不在者財産管理人の選任】

従来の住所または居所を去り、容易に戻る見込みがない者(不在者)に財産管理人がいない場合、不在者の財産に利害関係を有する者は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任申立をすることができます。

 

Aさんは不在者Bさんの相続分について利害関係を有するため、当事務所はAさんの代理人として不在者財産管理人の選任申立を行うことにしました。

 

不在者財産管理人は、不在者の財産管理を行うほか、家庭裁判所の権限外行為許可を得て、不在者に代わり遺産分割協議を行うことができます。

 

したがって、行方不明になっている相続人が失踪宣告の要件を満たさない場合は、不在者財産管理人の選任申立を家庭裁判所に行い、不在者財産管理人と遺産分割協議を行います。

 

不在者財産管理人には、利害関係のない被相続人の親族がいれば当該親族が選任されることが一般的ですが、Aさんの場合適当な親族がいませんでした。

 

そこで家庭裁判所に選任申立をした結果、司法書士が不在者財産管理人に選任されました。

 

不在者財産管理人は、家庭裁判所の権限外行為許可を得てAさんと遺産分割協議を行い、実家の土地建物をAさんが相続することを内容とする遺産分割協議が成立しました。

 

Aさんはその遺産分割協議書を添付した相続登記の申請を行い、実家の土地建物を自らの名義にした上で仲介事業者に依頼して実家を換価するしました。

 

このように相続人のなかに行方不明者がいる場合、失踪宣告や不在者財産管理人の選任申立といった手続が必要となり通常より時間がかかるため、早めにご相談いただくことをお勧めします。

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